ねとらぼ
2025/09/30 07:30(公開)

SNSでも話題に 「アルファードの大暴落」を引き起こしたとされる「残クレ」とは?

 8月下旬にX(旧Twitter)で、アルファードの買取価格が暴落していることが話題になったのをご存知でしょうか。アルファードといえば、高級ミニバンとして有名で、車好きやファミリー層から人気のある車種でした。いったいなぜ、こんなことになったのでしょうか?

 その一因と言われているのが、残価設定ローン(残クレ)を利用したアルファードの購入です。なぜ残クレで買取価格が暴落するのか、その理由をひもといていきましょう。

画像:写真AC
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「アルファード」買取価格の暴落が話題に

 まずはアルファードの暴落が話題になった経緯を整理しましょう。

 話題の発端となったのは、8月下旬にあるユーザーがXに投稿した、アルファードの中古車平均市場価格の推移グラフです。そこには、2024年4月には450万円だった平均市場価格が、2025年7月には200万円以下になっているという、驚きの内容が載っていました。

 アルファードの買取価格の下落は、2025年5月頃にも話題になりましたが、今回はグラフのインパクトもあってか、以前よりも大きな話題になったと思われます。

 そして、そのポストには「残クレで購入したアルファードが飽和したことによる価格破壊」という、残クレに原因があることを示唆する言葉が添えられていました。なぜ残クレを使う人が増えると、買取価格の値崩れが起こるのでしょうか?

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実際にアルファードは暴落している?

 暴落の原因と思われる残クレ、そのメカニズムを見る前に、本当にアルファードの買取価格は暴落しているのか、複数の自動車買取会社のデータをチェックしてみましょう。今回はユーカーパックと車選びドットコム買取、グーネット買取を調べてみました。

 まずユーカーパックのデータです。2024年3月の額を最高値として、2025年9月現在まで下がり続けていることがわかります。

出典:ユーカーパック
出典:ユーカーパック(記事執筆時点)

 車選びドットコム買取のデータを見ても、中古車相場と買取相場の両方が下がっていることが分かります。特に買取相場の下がり方が顕著です。

出典:車選びドットコム買取
出典:車選びドットコム買取(記事執筆時点)

 グーネット買取においても、長期的に価格が下落傾向にあります。アルファードの市場価格が大きく下がっているのは、どうやら本当のようです。

画像:グーネット(記事執筆時点)
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「残クレ」の仕組みと買取価格が下がる背景

 残クレを使う人が増えると買取価格が下がる理由は、多くの人が残クレ期間の終了に伴ってアルファードを返却することで、中古市場への過剰な供給が起こるためだと言われています。

 ここであらためて、残クレの仕組みを整理しましょう。残クレとは、購入時に将来想定される下取り価格である「残価」を設定して、3〜5年程度のリース契約を結ぶことです。リース期間中は本体価格から残価を除いた部分を分割で支払うため、費用負担が少なく、アルファードのような高級車でも購入しやすくなります。

画像:写真AC
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 そしてリース契約満了後、契約者は「返却」「乗り換え」「残価を支払って購入」の中から、車をどうするか選びます。「返却」なら、下取りしてもらって終了。「乗り換え」なら、下取りに出して次の車を購入。「残価を支払って購入」なら、残価相当額を一括か再クレジットで支払うという流れになります。

 つまり、アルファードを残クレで契約して、契約期間終了後に「返却」か「乗り換え」を選ぶ人が多いと、アルファードが中古車市場に多く供給されるわけです。しかも、残クレは期間中の費用負担が少なく済むため、アルファードのような高級車でも、新車で購入する人自体が多く、結果として中古車が増えているのです。

なぜ「残クレ」でアルファードを選ぶ人が多いのか?

 残クレでアルファードを選ぶ人が多いのは、アルファードのリセールバリュー(再販価格)が高いことと、幅広い層から人気があることが主な理由だといわれています。

 特に前者は重要なポイントです。リセールバリューが高ければ残価が高く設定され、そのぶんだけ返却時に高値で下取りしてもらいやすくなります。つまり、残クレ期間中の支払額が少なくなります。

 このリセールバリューは、市場からの需要によって変動するため、人気がある車ほど高くなる傾向にあります。

使い勝手の良さも原因の一つ?

 また、アルファードは使い勝手の良い高級車ということもあり、車好きだけでなくファミリー層からも好まれたことが、広く選ばれた理由の一つと考えられます。そして、残クレを利用すれば、購入の選択肢に入る絶妙な価格帯と相まって、「お得に乗れそう」と多くの人から選ばれたのではないでしょうか。

「残クレ」で車を買う際によくある失敗

 ここまでの話を聞くと、残クレでアルファードを購入することは賢い選択のように思えますが、実は残クレの特徴をしっかり把握しておかないと、かなりリスキーな選択肢になってしまう恐れがあります。

 特に失敗しがちなのが、残クレを「お得に乗れる」というイメージだけで、契約内容をよく読まずに利用して、その結果、残クレ期間終了後に高額な支払いが発生するケースです。残クレは購入時に残価を設定するため、将来の下取り価格が保証されますが、下取り価格の保障には条件があるため、ここで提示される金額が絶対ではありません。

画像:写真AC
画像:写真AC

 下取り価格が保証されるのは、「走行距離が一定距離以下」「修理歴が無い」といった、契約時に提示された条件を満たしている場合です。車の状態が著しく悪いと、下取り価格が予定額から大幅に下がることもあります。

 残クレを利用する人の中には、契約条件を十分に確認しなかったり、遵守する意識が薄かったりする人もいます。すると、価格保証の条件に該当しなくなって下取り価格が下がり、高額な差額を支払う必要が出てくるのです。

「残クレ」を賢く使うポイント

 残クレを利用するにあたっては、あくまで「リース契約」であること、残価保障の条件をしっかり理解すること、頭金を多めに支払って残価を圧縮しておくことの3点に気をつけましょう。

 残クレの支払いが苦しくなるのは、その大半が契約内容の理解不足によるものです。契約内容をしっかり守っていれば、当初の予定どおり、無理なく乗ることができるでしょう。

 SNSでも話題になった「アルファードの価格暴落」は、自動車買取会社のデータを見る限りはどうやら事実のようで、その原因の1つに「残クレ」がある可能性は高そうです。

 残クレは、アルファードの暴落のような副作用が起こることもありますが、正しく理解すれば便利な制度です。今後はアルファードの残価設定自体が下落しそうですが、しっかり相場や制度を調べて、楽しいカーライフを送りましょう。

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