アメリカの街角やSNSで、日本のスポーツカーを見かける機会が増えています。右ハンドルのスカイライン、派手に改造されたシビック、低く構えたシルビア──。
これらは「JDM」と呼ばれ、いまアメリカで一大ブームとなっています。なぜ今、日本の旧車が注目されるのでしょうか。
SNSで注目される日本の“旧車”
ここ数年、アメリカでは旧車人気が急速に高まっています。中でも注目されているのが、日本メーカーが生み出したスポーツカーです。
現在、特に人気が高まっているのは、たとえばトヨタ・スープラやホンダ・シビック タイプRといった車種です。また日産・シルビアなども注目されています。
これらの車は、アメリカのTikTokやInstagramで頻繁に取り上げられ、オーナー自身による走行シーンやカスタム動画が次々と拡散されています。
一見すると、ただの古い日本車。しかし、その裏側には、アメリカならではの事情と強い憧れがありました。たとえば、TikTokにはこのようなコメントが寄せられています。
・カッコいい!!!!
・この音、音がいいんだよな!
・ホンダ・シビック、トヨタ・スープラ、日産・スカイライン、どれも最高の車だよ。
・JDMで日本を旅してみたいな。
・スムーズでスピード感があって、スーパークールだ!
・信じられない高性能!
JDMとは何か? 昔は日本だけの存在だった
JDMとは「Japanese Domestic Market」の略で、もともとは日本国内向けに開発・販売された車を指す言葉でした。
日本の自動車メーカーはこれまで、軽量ボディや高回転エンジン、ターボ技術などを武器に、価格を抑えつつも“走る楽しさ”を本気で追求した車を次々と生み出してきました。一方、アメリカでは安全基準や排ガス規制の壁が立ちはだかり、多くのモデルが正規販売されなかったのです。
この「手に入らなかった存在」こそが、JDMの原点でした。
ブームを決定づけた「25年ルール」
現在のJDMブームを決定づけたのが、「25年ルール」です。
アメリカでは、発売から25年が経過した車は、当時の安全基準や排ガス規制を満たしていなくても、合法的に輸入・登録できるようになります。つまり、かつては禁止されていた日本仕様そのままの高性能車が、改造なしで公道を走れる時代が到来したというわけです。
現在、アメリカで特に注目を集めているJDM車の多くは、その多くが25年ルールの解禁によって、日本仕様のまま輸入できるようになったモデルばかりです。
なぜアメリカ人はJDMに引かれるのか
JDMの車が支持される理由は、単なる速さではありません。欧州スーパーカーほど高価ではなく、日常でも使える実用性を持ちながら、チューニング次第で性能を引き出せる余白があるなど、多くの魅力を秘めています。
さらに、映画『ワイルド・スピード』が描いた「高価な車でなくても、工夫と情熱で速くなれる」という価値観。このメッセージが、JDMを一過性の流行ではなく、カルチャーとして定着させました。
今ではもう作られない設計思想と空気感。それこそが、JDM最大の魅力です。
日本の“当たり前”が、世界の憧れに
かつて日本では、ごく普通に街を走っていたこれらの車。特別な存在というより、「ちょっと速くて楽しい車」だったかもしれません。
しかし今、それらはアメリカで「簡単には手に入らない夢の一台」として再評価されています。25年という時間は、単なる規制の区切りではありません。その間に変わったのは、車づくりの価値観そのものです。
日本のメーカーが当たり前のように挑戦していた性能と遊び心の追求。それが今、カルチャーとして世界で輝き始めています。JDMブームとは、古い車の流行ではなく、時代を超えて受け継がれていく物語なのかもしれません。