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サメ映画は金鉱だ。1975年公開の『ジョーズ』は当時の世界最高の興行成績記録を打ち立て、実話を元にした2003年の『オープン・ウォーター』も低予算ながら全米でスマッシュヒットを記録し、2024年のNetflix映画『セーヌ川の水面の下に』は配信初週から数千万回も再生され続編映画の制作も始動。この2026年4月からNetflixで配信された『猛襲』も話題となっていた。
ライター:ヒナタカ
アニメとインディーゲームが好きで映画ならなんでも観る雑食系ライター。「All About ニュース」「マグミクス」「NiEW」のほか、新たに「ダ・ヴィンチWeb」でも連載を開始。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』
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サメ映画初のカンヌ上映作だった
だが、その金脈はほぼ掘り尽くされてもいる。竜巻と共に飛んできたり、砂浜や家屋にまでやってきたり、幽霊になったり、頭が6つにまで増えたり、そもそもサメが登場しないなど、「もうだいたいやり尽くしたのでは?」と思えるくらいに多種多様なサメ映画が作られてきたからだ。
しかも、その出来は“石”が多めの玉石混交で、サメ映画そのものに期待が持てないという人もいるだろう。しかし、5月8日から公開中の『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』は違う。
何しろ同作は、2025年に開催された第78回カンヌ国際映画祭の監督週間でサメ映画ながらプレミア上映され、拍手喝采と称賛をもって受け入れられており、米批評サービスのRotten Tomatoesでは批評家支持率87%を記録。しかも、カンヌ国際映画祭で初めて上映されたサメ映画だったらしい。その時点で、サメ映画としてはもう満点と言ってもいいだろう。
サービス精神満点、だがPG12指定には注意が必要
本作は「サメ映画」というこすり倒されたジャンルに「サイコパス船長」というおいしい要素を取り込んでいる。しかも飽きさせない展開がモリモリのエンターテインメントに仕上がり、さらに人物描写に優れたサスペンスドラマにも昇華されている。
「これとこれを組み合わせれば面白いんじゃね?」的なアイデアが出オチに止まることもあるサメ映画の中では、志もサービス精神もかなり高い一本なのだ。
なお、本作は「簡潔な殺傷流血および性愛描写がみられる」という理由でPG12指定がされており、その通りに突発的な殺傷シーンがショッキングで、かつ性行為シーンもはっきり映し出されるため、お子さま向けではまったくないことにはご注意を。このゴールデンウィークはファミリー向けの大作が映画館を席巻したからこそ、大人向けの快作を劇場で堪能できる喜びを味わってほしい。
そんなわけで「サメ映画フリークは映画館で必見」「サメ映画に馴染みがなくても(殺傷シーンや性描写が大丈夫であれば)ハラハラドキドキの娯楽作として超おすすめ」で終わりにしてもいいくらいなのだが、さらなる見どころを記していこう。
『悪魔のいけにえ』的でもある秀逸なオープニング
まず、オープニングシーンから実に上手い。観客は事前に船長がサイコパスだとわかって本作を見ているわけだが、まさにサイコパスらしい「魅力的に思えてしまう」「冗談が本気にしか聞こえない」ことがめちゃくちゃ怖いのだ。
たとえば、船長は「檻に入って水中でサメを見る」という、その時点でデンジャラスなサメの見学ツアーを取りしきっており、船を訪れた若い男女に「遺言を残しておかなくちゃな」と軽く口にしたりする。
さらに、船上で恐怖心を拭えない女性に対して「今からするのは古(いにしえ)から伝わる特別なリラックス法だ。俺も何年もかけて習得した」と前置きをしつつ、伝えたそのリラックス法は実にくだらない(でも本当に効きそうな)もので、実際に女性は落ち着けてしまう。
「あれ? この人、普通に気さくで良い人だし、このツアーそのものが良質なのでは?」と本当に思えてくるし、その後に本当にサメが泳ぐ美しい光景も目の当たりにするので、「心から信頼してしまう」のだ。
だが、もちろんそんな穏当な展開でオープニングが終わるわけがない。その先の絶望は、ぜひ実際に本編を見てほしい。
何より、このオープニングは、これから主人公が「そこに行く」ことの恐ろしさを際立たせる効果を生んでいる。1974年の『悪魔のいけにえ』では、恐ろしい出来事が起こった「場所」を前提として見せておくことで、観客は「そこに行かないでくれ!」と願うことしかできない、という効果を生んでいたが、本作でもそうした古典的で堅実なホラーとしての手順を踏んでいるのだ。
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