最大24本の腕と直径90センチメートルを超える体を持つ、世界最大級のヒトデ「ヒマワリヒトデ」。2013年から発生した史上最大規模の海洋パンデミック、ヒトデ消耗性疾患(SSWD)によって個体数が激減し、野生ではほぼ絶滅状態にあると考えられていました。
しかし2026年6月、アメリカ海洋大気庁(NOAA)などの合同調査チームは、カリフォルニア州沖で健康な野生個体18匹を確認したと発表。研究者は「恐竜に遭遇したような衝撃だった」と当時を振り返っています。
姿をほぼ消した、海の巨大捕食者
ヒマワリヒトデ(Pycnopodia helianthoides)は、16本から24本もの腕を持ち、直径は90センチメートルを超えることもある世界最大級のヒトデです。体色は紫やオレンジ、赤や茶色などさまざまで、その見た目から「海のビッグフット」という愛称で呼ばれることもあります。
見た目だけでなく、その能力も規格外です。1分間に約1メートル移動できるといわれるほど素早く動き、ウニや二枚貝などを捕食します。特にケルプ(コンブの仲間)を食べる紫ウニの天敵として知られ、海の生態系を支える重要な役割を担っています。
ところが2013年以降、ヒトデ消耗性疾患(SSWD)が北米西海岸一帯で大流行。病気にかかったヒトデは体が崩れるように衰弱し、2013年から2017年までに推定60億匹ものヒトデが死んだとされています。
研究では、原因となる細菌「ビブリオ・ペクテニシダ(Vibrio pectenicida)」が特定されましたが、どのように広がるのかは今も調査が続いています。ヒマワリヒトデも壊滅的な被害を受け、野生ではほとんど姿を消してしまいました。
「恐竜を見たようだった」 調査で18個体を確認
転機となったのは、2025年の夏でした。研究チームはカリフォルニア州北部のグレーター・ファラロンズ国立海洋保護区で4個体のヒマワリヒトデを確認。その後、このヒトデを重点的に探す大規模な潜水調査「ピクノパルーザ(Pycnopalooza)」を実施し、最終的に健康な野生個体18匹を確認しました。
この成果は2026年6月、NOAAなどによって発表されました。調査に参加したNOAAのダイバー、タイラー・ミアーズ氏は、「病気が広がる前を知る人にとっては旧友との再会だったかもしれません。しかし私にとっては、まるで恐竜を目の当たりにした古生物学者のような気分でした」と語っています。
ヒトデの復活は、海の未来につながる
ヒマワリヒトデの減少は、一種類の生物が減っただけでは済みませんでした。天敵を失った紫ウニは爆発的に増え、ケルプを食い尽くした結果、グレーター・ファラロンズ国立海洋保護区ではケルプ林の約90%が失われたとされます。
ケルプの森は、ラッコやサメ、魚類をはじめ、多くの生物にとって重要な生息地です。また、大量の二酸化炭素を吸収することで、気候変動の緩和にも貢献しています。
そのため研究者は、ヒマワリヒトデの回復は海の生態系全体の回復にもつながる可能性があると期待を寄せています。
一方で、課題も残されています。海洋熱波や海水温の上昇など気候変動の影響は今も続いており、野生個体が再び増えていくかは未知数です。
現在は、水族館などでの飼育下繁殖や、病気や高水温への耐性を持つ個体の育成、環境DNAを活用した生息調査など、さまざまな保全活動が進められています。長らく「野生では、姿をほぼ消した」と考えられていたヒマワリヒトデ。その再発見は、失われた海のバランスを取り戻す第一歩となるかもしれません。
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