歌丸師匠がアニメに?――「落語天女おゆい」製作発表会には声優から落語の重鎮まで登場(2/2 ページ)
本作は落語芸術協会創立75周年を記念して作られる作品だけあって、落語芸術協会の面々も特別な思い入れがあるようだ。それは、師匠方のコメントからも伺い知ることができる。
桂歌丸 落語芸術協会創立75周年を記念してこういうものをこしらえてくださったことに関しまして、私は大歓迎しております。そして、大感謝をしております。(我々落語の世界がアニメになるなどということは初めてのことでございまして)期待もしておれば不安な点もございますが、落語を知らない方がこのアニメを見て落語に興味を持ってくだされば、こんなありがたいことはありません。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
三遊亭小遊三 落語芸術協会の初代の会長は、6代目春風亭柳橋(しゅんぷうていりゅうきょう)師匠。75年前の当時、落語というのは時代の先端を行く娯楽でした。そんな時代の先をいく方でしたから、柳橋師匠が“アニメ”というものを知っていたならば、たぶん落語のアニメをこしらえたんじゃないかと思うわけでございます。
落語は今“静かなブーム”という妙な言葉で表現されたりもします。騒々しいからブームなんじゃないかなんて思ったりもするわけですが、寄席には若者たちが押し寄せるなんて塩梅でございます。そこでこのブームの勢いを借りまして、アニメで大ブレイクと行きたいところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
桂米助 歌丸師匠や小遊三師匠は本人の役で出るようでございますが、私はこんなガラガラ声のためか悪役の声を担当させていただくようでございます。ぜひガラガラ声の悪役にも注目していただけたらと思います。また、ドラマの影響で若者たちが落語に興味を持ってくれているようでありますから、今度はこのアニメで、若者から子供たちの心までつかめたらと思います。
ヒロインたちの声を演じる声優さん方も、落語を題材にした物語、しかも75周年記念のプロジェクト作品を担当するということで、思い入れや緊張など様々な思いがあるようだ。
後藤沙緒里 落語芸術協会75周年記念というこの作品に出演させていただけるということは、とても光栄に思っています。この作品のお話をいただいたときには“これから「笑点」を見て落語を勉強しなくては”と思いました。
小島幸子 私は元々落語や講談が大好きで、寄席などにも何度も行かせていただいています。実は先日も小遊三師匠が出演された寄席を見させていただいたばかりなんです。私は落語の話というのは完成された作品だと思っていまして、アニメになったときにどのように表現されるのかというのを今から楽しみにしています。そして、普段から落語に親しませていただいているうえでの表現ができればと思っています。
また、本作では落語のシーンも用意されているらしく、“声優大喜利”なるイベントの企画も予定されているようだ。歌丸師匠は落語のシーンを演じる声優さん方に対してこんなアドバイスをしてくれた。「落語でもっとも重要なのは“間”です。その“間”というのは噺家1人ひとり違いまして、どういうものかという説明が難しいものでございます。落語の世界では“噺を教えることはできるが、間を教えることはできない”なんてことを申しまして、自ら学ぶしかございません。声優さんたちにはたくさんの落語を聞いていただいて、自分なりに合った“間”を見つけていただければと思います」。
なるほど、確かに師匠方の話には、記者会見の席であるにもかかわらず、独特の風情や個性が感じられる。それは独自の“間”が生み出しているものなのだろう。声優さん方は放映までにどこまで“間”を体得し、演技に結びつけることができるのか。落語を題材とするアニメだけにひとつの鍵となりそうだ。
最後に、本作の監督・高本宣弘に語っていただいた本作の魅力を紹介しよう。
高本 プロ中のプロである噺家の方から指示をいただいたり、協力をいただいたりしながら作っていくという作品というのは、ありそうでなかなかないものです。この作品は、我々にとってもアニメ業界にとっても非常に得るものが多いんじゃないかと思いますね。
高本氏は言い方は悪いがと断りつつ「通常アニメーションで何かを表現する場合には、どこか妥協してしまうことが多い」と語る。昔の街並みは日光江戸村などを参考に描いたり、落語であれば雰囲気を重視して描いたりすることが多いのだとか。「ただ、本作に関しては歌若師匠から指摘をいただいたり、歌丸師匠から落語のビデオをお借りしてきちんとした芸能のベースを教授してもらいながら作ることができました。これまでに放映されているアニメの中でも稀に見る、しっかりとした骨組みを持った作品ができあがったと思います」と、力の入れようは半端ではない。そういった細部のこだわりまで見てもらえれば、この作品の本当の面白さを感じていただけるのではないか、と締めてくれた。
キャスト:月島唯/後藤沙緒里 飛鳥山雅/小島幸子 谷中妙/沢城みゆき 小石川鈴/清水愛 千石涼/小林ゆう 内籐晶/野田順子 ほか
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