日本のゲーマーが世界へ羽ばたく日は近い? World Cyber Games2005日本予選リポート東京ゲームショウ2005――World Cyber Games2005日本予選(3/3 ページ)

» 2005年09月21日 14時40分 公開
[松井悠,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

我々のイベントは「ゲームのプロモーション」ではない

―― 日本で開催されるゲームイベント、というとメーカー主催、メディア主催のトーナメントがある中で、ニュートラルな企業――テクノブラッドさんはゲームのリリースも行っていますが、大会採用タイトルではありません。そういった企業がイベントを運営するのは非常に珍しいですよね。日本の場合、メディアが一番大きく扱うのは、メーカー主催のイベントになります。それは広告との関係もあるわけですが……。

 私たちは、ゲームのプロモーションをするためにゲーム大会を開いているわけではないんです。選手やプレイヤーには楽しんでもらいたい、ユーザーにこういった夢を共感してもらいたい、と思って大会を運営しています。

 日本ではゲームというと、一人でコンピュータを相手にプレイしているという印象が非常に強い。ゲームの市場は大きいのにも関わらず、ダークなイメージがつきまとっている。そして何か事件が起こるたびに、「ゲームが原因だ」と言われるわけなんですが、私には「日本にゲームに接したことのない人間はほとんどいないだろう」と思っています。そういう観点から見るとすでにゲームは生活圏内にあるものでしょう? そして、それを競技として大きくしていきたいという気持ちがあります。

 それから、いま「e-sports」という、新しい文化を創っていくという動きがあります。どこかの企業にしばられるわけでもなく、ユーザーがプレイするゲームをチョイスして技を競い合う。それで参加してくれる人たちがみんなで楽しい空間、時間を共有していこう、そういうことをやっている。

 私の部署ではまず、競技の場がオープンである、健全であるということをプレイヤーの皆さんに認識していただいてから、パッケージのゲームを販売するというサービスではなくて、ゲームをどうやって楽しくプレイしてもらうか、それにどういう動機付けをするか、というサービスを提供しようとしています。

 ゲームを人とプレイするということは、コミュニケーションですから、そこに人間同士でしか得られない楽しみがある。そういうものをどんどん創出していきたいし、日本のプレイヤーにもその当事者であってほしい。

WCG2005の会場に掲示されたオフィシャルスポンサーとオフィシャルサプライヤーのロゴ。この中に「ゲームメーカー」のものは1つもない

「e-sports」を日本で普及させるために

―― 今、お話にありました「e-sports」という言葉。安さんにとって、e-sportsとはどういったものとして位置づけていらっしゃるんですか?

 私が「e-sportsってなんなんですか?」と聞かれたときには、こう答えることにしています。スポーツという言葉があるとおり、e-sportsはサッカーや野球であったり、普段身近にあるスポーツと一緒で、一生懸命自分のスキルを伸ばす努力を行うもの。その競技の中で選手が使う道具が、サッカーであればボールやスパイク、野球であればバットとグローブ、e-sportsの場合は、キーボードやマウス、コントローラーでそれを行う、という違いでしかないと思っています。

 僕はスポーツで一番大事なのは「感動」だと思うんです。選手が何かに向けて真摯に努力をするというところで、他のプレイヤーも、見ている観客も、それに協賛している企業も心が動く、そういったスパイラルがどんどん広がっていき、大きなムーブメントを引き起こしていく。それがe-sportsであると考えています。

―― 日本でいうカタカナ三文字の「ゲーム」とアルファベットの「GAME」はニュアンスが違いますね。日本では「ゲーム≒ファミコン」というイメージが強くて、海外の場合は「GAME」が「競技」であったり「試合」という意味も持っています。ゲーム競技を「e-sports」と言う流れがでてきたんですが、「e-sports」という言葉を使う側が「これがe-sportsである」という定義をしっかりとできないうちに、言葉が一人歩きを始めてしまったのかな、と。

 「Counter-Strikeがe-sportsである」とか「Dead or Aliveがe-sportsだ」というのではなくて、e-sportsというのは、もっと広いものであるべきだ、あってほしいと思っています。4歳の子供ができるe-sportsもあるでしょうし、高齢の方ができるものもあるでしょう。そういうところで、「こうでなければe-sportsではない」とか「こうだからe-sports」というものではなく、それぞれのパートで競技できるものがある、それがe-sportsだと思いますね。これについての定義付けを細かくやろうとするというのは、あまり大事なことではない、と思っています。

―― それでは今後、テクノブラッドさんは日本ではどういう展開をお考えですか?

 e-sportsという言葉も含めてなんですが、まだまだWCGなどの大会の認知度はそんなに高くはないと認識をしています。その中でテクノブラッドとしては、まずはWCGの運営をしっかりとしていきます。日本における規模をどんどん大きくしていって、WCGの中に日本のコンテンツを持って行きたい。大きな会場でトーナメントがあって、そこにメーカーの展示会があって、BYOC(Bring Your Own Computer:自分のPCを持ち込んで遊ぶLANパーティー)というような、いわゆるユーザー参加型のイベントをいれて、メーカーとユーザーのコミュニケーションをとる場所を提供していきたいと考えています。

―― 最後にWCG2005に出場する選手たちに一言お願いします。

 「Counter-Strike:Source」の4dN.PSYMIN、「Dead or Alive2 Ulitimate」のコニダッシュ選手、活忍犬@神々の宴選手とも、ぜひ入賞してもらいたいですね。世界に日本のプレイヤーの名をとどろかせるためにもがんばっていただきたいです。

インタビューはテクノブラッド社内にてWCG2005日本予選終了後に収録させていただいた。右はイベントMCとして有名な中島(Bravo7)氏。WCG2005日本予選ではディレクターとして運営を行っていた

「ゲーム大国日本」が「ゲームプレイヤー大国日本」になるためには

 「ゲームをプレイする環境を企業が整えてくれる」。ゲーマーにとっては夢のような話ではある。だがどんな企業も無償でお金や道具を与えてくれるわけではない。企業にスポンサードしてもらう以上、そこになんらかの利益を還元していかなければならないのは明白だ。株式会社PSYMINは「環境」を提供する見返りとして4dN.PSYMINに「世界一の座を手に入れること」を求める。IntelやnVidia、サムスンといった世界をマーケットとにしている大企業からのスポンサードを期待するならば、世界で人気のあるタイトルでナンバーワンの座に座り続ける必要があるだろう。そして、そのためには日々の弛まぬ努力が求められる。現在、いくつかのゲームチームは、企業のスポンサードを受け始めてはいるものの、生活の全てをそのお金でまかなえている状態ではない。

 世界一の座に着くためには、プレイに専念できる環境が必要であり、その環境を求めるためには、世界一の座に着かなければならない。他国ではそういった流れがすでにできつつある中で、日本では鶏が先か、卵が先か、というジレンマに陥りつつあるような気がしてしまう。「結果が全て」のシビアな世界ではあるが、選手層の増加がそのまま国内レベルの上昇につながることは明白。一人でも多くのプレイヤーが「ゲーム競技」の世界に入ってくることを熱望してやまない。

 スキルの底上げ、ゲーマーに対する偏見の改善、健全なビジネス感覚の保持、そういったものが少しずつ浸透してきたときに、「ゲームプレイヤー大国」日本の姿が浮かび上がってくるのではないだろうか。

今回、筆者はWCG2005日本予選DOAUの実況を務めさせて頂いた。「ゲームを理解しているMC」というニーズが少しずつではあるが生まれ始めているのも興味深い
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  2. /nl/articles/2411/25/news134.jpg 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. /nl/articles/2411/26/news089.jpg 「最高の人間」 大谷翔平が現地で“神対応”見せる 写真家の投稿に反響…… 「息子はまだ信じられないみたい」
  4. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  5. /nl/articles/2411/26/news184.jpg 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  6. /nl/articles/2411/07/news027.jpg 百均で多肉植物を購入→半年以上放置してしまったが…… 驚きの結果に「すごーい!」「品種は何ですか!?」
  7. /nl/articles/2411/26/news188.jpg 「ハリー・ポッター」の“レプリカ剣”を回収 銃刀法違反の可能性か…… 運営謝罪「申し訳ございません」
  8. /nl/articles/2411/26/news052.jpg 日本に1店舗のみの“完璧なマクドナルド”が778万表示の話題 地元民も「そんなすごい店やったんか…」「たまに使ってるけどそんなすげぇとこだったのね」
  9. /nl/articles/2411/25/news193.jpg 辻希美の高2長女、「明日皆さんにご報告があります」 16歳最後の日の意味深投稿に注目集まる
  10. /nl/articles/2411/25/news160.jpg 「これを見て退団するとは……」 楽天・田中将大、最後に見せた“衝撃の姿”にファン複雑 「ほんと辛い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  2. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  4. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  5. 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  6. 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  7. 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  8. 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  10. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた