日本のゲーマーが世界へ羽ばたく日は近い? World Cyber Games2005日本予選リポート:東京ゲームショウ2005――World Cyber Games2005日本予選(1/3 ページ)
「ゲームプレイで大金を稼ぐ」――そんな夢のようなイベントが今、世界各地で開催されている。その中で世界最大規模のものが、予選開催国世界63カ国、総予選参加人数100万人を数える「World Cyber Games」だ。今回は日本であまり知られていない「ゲームトーナメントビジネス」を取り巻く企業の世界を紹介する。
世界のゲームオリンピック「World Cyber Games」。
「World Cyber Games」(WCG)は、「対戦ゲームで世界最強を決定するゲームオリンピックイベント」で、2000年に韓国で開催されて以来、年々参加国、参加人数、採用タイトルともに増加していき、2005年の今年は予選開催国63カ国以上、推定予選参加人数は100万人超と、名実ともに世界最大規模のゲームイベントのひとつとなった。
オリンピックのようにホストシティー制を導入しているWCGは、昨年開催されたサンフランシスコからシンガポールへとバトンが手渡され、11月16日〜20日にグランドファイナルの開催が決定し、来年はイタリアでの開催が予定されている。
言語、文化、人種の壁を超えて世界中のゲームプレーヤーが集うWCGは、その規模もさることながら、入賞者に与えられる賞金額も魅力のひとつ。今年のグランドファイナル賞金総額はなんと約40万ドル(日本円で約4200万円)。今回、日本予選が行われた「Counter Strike:Source」(CS)は優勝賞金25万円とチーム5名分の世界大会開催地シンガポールへの渡航・宿泊費(約120万円)、「Dead or Alive 2 Ulitimate」(DOAU)の優勝賞金は5万円とシンガポール渡航費・宿泊費(約24万円)と、かなりの金額が授与された。
過去のグランドファイナルにおける日本人の戦績はリアルタイムストラテジーゲーム「Age of Empires II: The Conquerors Expansion」で2002年にHalen氏が優勝し、世界最強の称号とともに、賞金2万ドルを手中に収めたが、海外で根強い人気と幅広い選手層を持つジャンル「FPS(一人称視点のシューティングゲーム)」はなかなか戦果を残せないでいるのが現状だ。
いままでは日本予選が開催される予選タイトルが全てPCゲームだったため、コンシューマ機やアーケードがメインの日本では馴染みが薄かったWCGだが、今年から日本でもコンシューマ機でのトーナメントが開催されるようになった。これにより、オンライン予選参加人数も含めたWCG日本予選参加選手の数は200名を超え、過去最大規模の日本予選となった。
「Counter-Strike:Source」、「Dead or Alive2 Ultimate」日本代表決定――シンガポールで開催されるグランドファイナルへ進出
東京ゲームショウの3日間を使用して行われたWCG2005日本予選に採用されたのはFPSの人気タイトル「Counter-Strike:Source」とXboxの人気格闘ゲーム「Dead or Alive 2 Ulitimate」の2つ。
Counter-Strike:SourceはFPSトーナメントではおなじみの「ダブルイリミネーション方式」(1回負けても優勝のチャンスがあるトーナメント)、5vs5のチーム戦で激闘が繰り広げられた。日本公式試合で負けなしの最強チーム「4dN.PSYMIN」が安定した試合運びで優勝、2年連続でグランドファイナルへの切符を手に入れた。そして2日目の試合で4dN.PSYMINをあと一歩まで追い込んだ関西の有名チーム「Aggressive Gene」が2位となった。
そして、WCG日本予選初のコンシューマタイトルDead or Alive2 Ultimateは、シングルトーナメント戦で試合が進行し、優勝はレオン使いで有名な「コニダッシュ」氏、準優勝はDOAで活躍するチームの一員「活忍犬@神々の宴」氏。この両名がグランドファイナルへ進出する。
企業がプレイヤーをバックアップする意義〜4dN.PSYMINマネージャーNao-K氏に聞く
WCG2005日本最終予選を無敗で勝ち上がり、日本公式試合無敗を誇る名実ともに日本最強の「Counter-Strike」チーム「4dN.PSYMIN」。企業が「勝てるチーム」をバックアップする理由はどこにあるのか、同チームのマネージャーであり、自身も「ゲームアナウンサー」としてWCG2005「Counter-Strike:Source」の実況を担当した株式会社PSYMINのNao-K氏に話を伺った。
―― まずは、日本予選通過おめでとうございます。現時点で日本公式試合無敗という輝かしい戦績を誇る4dN.PSYMINですが、まず「ゲームプレイヤーを企業としてサポート」する理由はどのようなものがあるんでしょうか。
Nao-K 2004年の初頭に日本のCounter-Strikeトップチームを目指すために設立されたのが現在の4dNの原型である「four-DimensioN」です。その当時、彼らは他のプレイヤーと同じく、自分たちでチームを組んで、練習を行って、というスタイルをとっていたんですが、去年のサンフランシスコで開催されたWCGのグランドファイナルの初戦でいきなり敗退してしまった。
その後「日本でこのままやっていても、もう腕は上がらないし、世界を相手にすることはできない」という結論を出して解散することにしたんですが、弊社の社長が「このままでは日本のCounter-Strikeをリードしていく存在がいなくなってしまう。ならば、我々が彼らの望む環境を与えて世界一を目指してもらおう」と決断しまして、彼らのバックアップをするために「4dN.PSYMIN」を立ち上げた、これが4dN.PSYMIN設立の流れです。
―― 日本のFPS界を後退させるわけにはいかない、という義務感のようなものがあったんですね。
Nao-K はい。そして、日本ではまだなじみの薄いゲーム競技イベントを浸透させるために、今年の1月に社内でゲーム事業部門を立ち上げました。すでに9月までに韓国に2回、中国に1回長期遠征に行き、中国で開催された「Acon5」(ABIT社が主催する中国最大のPCゲームトーナメント)、アメリカで開催された「Cyberathlete Professional League」(CPL、アメリカで1997年より開催されている歴史のある大会)に参加してきました。
CPLでは、Counter-Strikeで、日本人チーム初のベスト12進出を記録し、日本では昨年の1月のチーム設立時から公式試合で無敗を誇っています。
―― 株式会社PSYMINによるバックアップはどの程度まで行われているんでしょうか。
Nao-K 選手が世界に遠征して練習をするブートキャンプ費用の負担、渡航費、宿泊費、チームウェアの提供と、全般的なマネージング、広報活動、他のスポンサーとの交渉などです。チームは5名いますから、今年の1月から9月現在までで、すでにかなりの金額をバックアップしています。
―― 企業として事業を行うからには当然利益を出さなければならないというところがありますが、そのあたりはどのような考えをお持ちなんでしょうか?
Nao-K 彼らがCounter-Strikeの世界一の座を獲得するまでは先行投資と考えています。しかし、数年単位のスパンではなく、初年度の今年か、遅くとも来年に利益を上げられるようにしよう、という形で動いています。
現在考えているのはWebサイトの立ち上げで、そこでの戦術やプレイデモファイルの有料配布によって利益につなげつつ日本でのCounter-Strikeのレベル向上を図っていこうと考えています。
また、世界一になった際にはnVidia、Intelなど、世界ゲームイベントのヘッドスポンサーによるバックアップを期待しています。実際に、Counter-Strikeの世界トップチームの一つスウェーデンの「SK」というチームは、インテルのヨーロッパ圏TVCMに出演したりして、多くの金額を得ていますし、彼らは自分たちのブートキャンプを有料で一般開放したりしています。こういった形のビジネスが展開できるようにしていければ、選手たちの生活もかなりサポートできるのではないかと考えています。
韓国の場合、同業種の企業が別のチームにそれぞれスポンサードしていて、彼らの試合が行われるときは観客もかなりヒートアップします。日本でもそういったシーンが見られるようになるとおもしろくなってくるのではないでしょうか。
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