“エブリパ”でオンラインデビューすることは、この上なく幸せなことである:「エブリパーティ」レビュー(1/4 ページ)
見ず知らずの人とオンラインでゲームをプレイするのは、どうも気後れがしてしまう。思い浮かぶのは、ゲームの上手い人ばかりが集まるマニアックなムード。自分など相手にもされないのでは……。そんな不安感を、このゲームが拭い去ってくれる。勝ち負けにとらわれず、オンラインでもオフラインでも「ああ、楽しかった」という気分になれる“エブリパ”って、感嘆に値するほど素晴らしい。
取っつきやすく、飽きのこない新機軸のボードゲーム
2005年末に日本でも発売されたXbox 360では、旧Xboxの不振を考えてか、著名な日本人クリエイターによる日本市場向けタイトルの強化にも注力している。本体と同時発売になった「エブリパーティ」も、その1つだ。開発は、元カプコンの岡本吉起氏率いるゲームリパブリック。ストリートファイターシリーズなど数多くのヒット作に関わった事で知られる氏が、Xbox 360の第1弾にボードゲームタイプの作品というのはちょっと意外にも思える。グラフィック性能に長けるXbox 360なので、見た目やゲーム性で派手なものが用意されるものと想像していただけに、意表を突かれたような感じだ。
その意図するところは、プレイするにつれて次第に読めてくる。エブリパーティのコンセプトは、「年齢、性別を問わず、すべてのユーザーが気軽に楽しめる」ということだったが、本当にそうなのだ。操作もルールも至って明快で、ややこしさを感じさせる部分がなく、とにかく取っつきやすい。それでいて戦略性が要求される一面もあり、数時間ほどのプレイで飽きられるような内容になっていない。Xbox 360が旧Xboxユーザー以外の層にも受け入れられるためには、こういうタイプのゲームも必要との判断が働いたものと思う。
“ほのぼの和み系”に見えて、実はかなりシュール?
エブリパーティでは、キャラクターデザインに「ちびまる子ちゃん」などでおなじみのさくらももこ氏を起用し、ゲームオリジナルのキャラクターに加え、「神のちからっ子新聞」(ビッグコミックスピリッツで連載中)のキャラクターも多数登場することが見どころのひとつ。人物の性格や外見をやや誇張気味に表しながら、身近にいる誰かを思い起こさせるあたりが彼女の描くキャラクターの魅力と思うが、注目したいのは、原作の持ち味を崩さずにキャラクターを3D化していること。3Dポリゴンで描かれたキャラクターは、どの角度から見ても違和感がなく、紛れもなく“さくらももこキャラ”として成立しているのが見事だ。
この味わいあるキャラクターに加え、街並みもどこか懐かしさを感じさせる雰囲気で、ビジュアルからはほのぼのとした印象を受ける。が、そのビジュアルが醸し出すイメージとは裏腹に、ストーリーはかなりシュール……。笑いを誘うというより、ある種の脱力感を伴う展開がやたらおかしい。
そのストーリーは、1人用モードの「おはなしすごろく」の中で楽しむことができる。舞台は「神力子市」(じんりきこし)という町で、見るからにありふれていて何の特徴もないところだが、住人たちにはどことなく活気がない。そこに降り立った主人公(プレーヤー)が、ある老婆からなぜか“救世主”と称され、困っている市民たちの手助けをする羽目に。といっても、依頼というのが「スーパーの特売でメロンを買ってきてくれ」だの「自動車教習所で待つ人に届け物をしてくれ」だの、どう見ても“救世主”向きじゃない。そんな任務を押しつけられた主人公は、すごろく風のマップを巡って、誰よりも早く目的地に到達しなければならないのだ。
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