みんなで作るRPG「百の世界の物語」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/2 ページ)
ボードゲームスタイルのRPG、「百の世界の物語」(アスク講談社)。中古でけっこうなプレミアがついているようですが、一般的にはあまり知られていないゲームだと思われます。でも、1人から4人まで楽しめる、かなりハマれるゲームなのです。
RPGっぽいハウステンボスの街並み
ハウステンボスの建物はどれも、オランダの歴史ある建物を再現している。だから街並みも、中世ヨーロッパの雰囲気に満ちている。
しかも、そこここに花が散りばめられていて、実際のオランダの古都よりも、メルヘン的な要素が強い。まさに、RPGに出てくる“ファンタジー世界”そのものといった感じだ。
考えてみれば、この連載ももう19回目になるのに、今までファンタジーRPGを取り上げてこなかった。現在でも最も人気の高いジャンルだし、そろそろ1本くらいテーマにしなければなるまい。
今まで私がプレイしたRPGの中で、どれを取り上げようか、とても迷った。
迷った末に選んだのが、1991年に発売された「百の世界の物語」(アスク講談社)。このゲームに漂う、ほのぼのとした雰囲気と、何が起こるかわからない、びっくり箱のようなにぎやかさが、テーマパークっぽく思えたからだ。
もともと好きなゲームだったが、中古ソフト屋さんに行ったとき、この「百の世界の物語」にプレミアがついていたのには驚いた。
中古の販売価格が、発売当時の価格である6200円を上回っているのだ。
確かに、多少マイナーで、あまり本数が出回っていないほうがプレミアはつきやすい。とはいっても、まさかこのゲームがプレミアの対象になるなどとは思いもしなかった。
ユキリアは、ほのぼのファンタジーワールド
「百の世界の物語」の舞台・ユキリアは、このゲームのために設定された世界というわけではなく、テーブルトークRPG「ウィッチクエスト」や、富士見書房の本「ファンタジーRPGクイズ 五竜亭の一夜」など、冒険企画局が手がける、さまざまな作品の舞台となっている。
これらの作品に共通するのは、ほのぼのとした空気が流れていることだ。
ユキリアが、ほのぼのとした雰囲気になっているのは、“猫の人”の存在によるところが大きい。
“猫の人”はこどもっぽい外見で、猫耳としっぽがついている。その言葉は、日本語に訳す際、すべてひらがなで表記される。
「百の世界の物語」でも、ゲーム中に勇者たちがこなすクエストに、ユキリアの“ほのぼの感”が色濃く反映されている。猫の人だけではなく、登場する人間は皆、何となくほんわかとしている。
勇者が「手紙を届けに行く」というのは、ほかのRPGにもあるかもしれない。でも、勇者が「コーヒーを届けに行く」というのは、さすがにユキリアならではだろう。
RPGの世界をちょっとパロディ化したような設定は、同時代に書かれた小説「フォーチュン・クエスト」(深沢美潮)や「ゴクドーくん漫遊記」(中村うさぎ)に通じるものがある。
社会思想社の雑誌「ウォーロック」では、ユキリアの一部として“二つの川”という地域が設定され、そこに住む人や起こった出来事を読者投稿で決めた。そのため、ファンタジー世界なのに、不動産屋やレコード店があったり、新たにラーメン屋がオープンしたりと、何でもありな状態に。
そんな状態を許容できるのも、ユキリアという世界の、懐の深さといえるだろう。
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