ファンタジーなのにヘルメット魔界塔士Sa・Gaゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)

» 2006年04月20日 00時00分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]
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ファンタジー世界から新宿へ

 システム面だけではなく、シナリオのほうもすごかった。携帯機ゆえにデータ容量も決して高くないが、マップを狭く感じさせないように工夫されている。

 まず大きな工夫は、冒険の舞台を大きな塔にしたことだ。

 塔を中心にして、4つの世界が階層立てになっている。それぞれの世界はあまり広くはないが、塔を中心にした世界の全体像を思い浮かべれば、上のほうの世界は空中に浮かんでいるわけで、広くなくても違和感はない。

 この塔の上には、楽園が存在するという。モンスターが現れ、すさんできた世界から抜け出すため、塔を昇っていくのがこのゲームの目的だ。

 4つの世界では、塔への入口に封印がほどこされており、そのままでは上の階に進めない。プレイヤーはそれぞれの世界で、封印を解くクリスタルを探すことになる。

 1階の「大陸世界」では、3人の王が持っている剣、よろい、たてを入手するのが当面の目的。

 ここで出てくる玄武は、四天王の1人。四天王は4つの世界をそれぞれ支配しており、クリスタルを手に入れようとする主人公たちと対立する。

 「海洋世界」では、まず地下のダンジョンを通って、動く浮島を探す。見つけたらそれに乗って海を移動する。最後は海底に潜む、四天王の青龍を倒す。

 「空中世界」では、四天王・白虎を倒そうとするレジスタンス勢力が存在する。主人公たちは白虎の配下となり、レジスタンスと戦うふりをして、白虎を倒すすきをうかがう。フィールドを高速で移動できる乗り物「グライダー」が登場。

画像 大陸世界。英雄の像に剣、よろい、たてを飾ればクリスタルゲット。ただし、玄武という敵が現れて、戦闘となる
画像 海洋世界。青龍が大事にしている宝玉がこの中にある。町で得られたヒントを頼りに探さなくてはならない。こういう謎解き要素があるところは、昔ながらのRPGっぽい
画像 名曲「涙を拭いて」が初登場するのもこの空中世界

 「都市世界」は、それまでとは違う、異色ずくめの世界となる。

 まず舞台がいきなり、荒廃した未来世界である。しかも町の名前が“アメヨコ”、“アキバ”、“シンジュク”といった、東京の地名。

 外を歩いていると、四天王の朱雀が自ら襲ってくる。シルクハットの男が助言したとおり、この時点では倒せないので、逃げたほうがいい。

 どうにか町にたどり着き、朱雀を倒そうとしている暴走族(!)と協力。朱雀のバリアを破る装置を作るための部品を探す。

 防具もこの世界観に合わせて、「バトルスーツ」や「アライのメット」が登場。

画像 サガだから、やっぱりヤンキーがモテるのか?
画像 四天王・朱雀との対決の場は、なんと地下鉄の屋根だ。車両は丸の内線500系か?

ゲームボーイの先入観を打ち崩す

 魔界塔士Sa・Gaのシナリオの白眉は、実はクリスタルを4つ集め終わったその先にある。

画像 衝撃的なシーンの1つ。シェルターで息絶えた男は、子供たちにあとを託すのだが、その子供たちは……

 四天王を束ねるアシュラを倒すため、さらに塔の上へと歩いていくのだが、その途中にはさまざまな部屋がある。死体の転がるシェルターや、死んだ冒険者たちの記録が残る部屋。

 4つの世界以外の場所は、ゲームのシナリオに直接関係がなく、行かなくてもゲームはクリアーできる。しかし、そういう場所をあえて設けたことで、背景世界に“深み”が増しているように思う。

 それまでのRPGではあまり見られなかったような、重々しい空気が漂っているのだ。

 「アシュラの破壊活動のおかげで大儲けしている会社」なんてのも、ストーリー上必要のない場所だが、ここを見た後、別の場所で多くの人々が死んでいるのを目にすると、やりきれなさを感じてしまう。

 現実の戦争でも、これに似たケースがよく報道される。現代の人にこそ見てもらいたい場面だ。

画像 実はアシュラが最終ボスではない。ちなみにボス戦ではチェーンソーが有効だが、使うと興ざめしてしまうかも

 ストーリーは、アシュラを倒した後、プレイヤーの誰もが驚くような展開を見せる。携帯ゲーム機のRPGとは思えないくらいの、壮大かつ思い切った展開である。

 もっとも、このゲームの世界全体が、携帯ゲーム機のRPGならではの狭い世界だからこそ、こういう展開になっても違和感が感じられないのかもしれない。

 終盤のダークな雰囲気といい、壮大な展開のストーリーといい、「ゲームボーイのRPGなんだから、そんなに大したことは、やってこないだろう」という、プレイヤーの先入観を見事に裏切ってくれる。

画像 ちょくちょく出てきて主人公たちに助言をするシルクハットの男

 もしかしたら、河津秋敏氏をはじめ、制作スタッフの皆さんは初めから、ゲームボーイというゲーム機に対する先入観を打ち払うために、魔界塔士Sa・Gaを作ったのではないだろうか? そんな気すらしてしまう。

 少なくとも、このゲームを作るにあたって、「ハードの性能に限界はあっても、作るゲームに限界はない」というような信念は持っていただろうと思う。

 翌年(1990年)に発売された「Sa・Ga2 秘宝伝説」も人気が高い。

 成長システムは一部変更になり、人間は「ファイナルファンタジーII」のように、使った能力が成長するようになった。また、アイテムを装備してパワーアップする、“メカ”が新たに登場。

 9つの世界で秘宝を集めながら、主人公の父親を探すのが目的。世界の中には「大江戸」なんてのもあって、世界観がファンタジーにとどまらないのも前作同様だ。

 「Sa・Ga」シリーズはその後、「時空の覇者 Sa・Ga3」を経て、スーパーファミコンの「ロマンシング サ・ガ」に移行する。ただし「ロマンシング サ・ガ」は、確かに同じ河津秋敏氏の作品ではあるが、コンセプトが違うので、元の「Sa・Ga」とは別のシリーズと考えたほうがいいと思う。

 携帯用ゲーム機の「Sa・Ga」シリーズは、以降発売されていない(2002年に魔界塔士Sa・Gaが、ワンダースワンカラーに移植されているが)。

 今、ニンテンドーDSがめちゃめちゃ売れてることだし、スクウェア・エニックスさん、DS向けに「Sa・Ga4」を作ってみるのはいかがでしょうか?

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