PS3が可能にする“次世代ゲームの裏側”に迫る――「RESISTANCE〜人類没落の日〜」Insomniac Games現地取材(その1)(2/4 ページ)

» 2006年11月10日 07時00分 公開
[小林仁,ITmedia]

PS3のケタ外れなCPUパワーはゲームにどう活かされるのか

 従来のコンシューマ機は、世代を経るたびに急激な進化を遂げてきた。PS3は、Cellをうまく使いこなせばスペック的には現行機ではおそらく最強のハードと言われているが、肝心なのはこうした“強力なCPU”(Cell)を搭載することでPS3のゲームがどう変わっていくのか、だろう。

画像 Insomniac Games マックス・ガーバー氏

 「レジスタンス」のリードプログラマーを務めるマックス・ガーバー氏によれば、「PS3の本当の力はCellによってコリジョン、物理演算、アニメーション(モーション)をリアルタイムに計算できる点にある。わたしたちは今回、PS、PS2のノウハウを活かすことでPS3用に高性能なレンダリング、物理演算処理能力、新しいエフェクトシステム、進化したアニメーション、AIシステムを含めた新しいシステムを開発することができた。現時点で極限の性能を引き出せたと思うが、将来的にはもちろんこれ以上のことができるよう研究は進めている。PS3は本当にパワフルでチャレンジし甲斐のあるハードだと思う」とミーティングの冒頭で語り、具体的な例として2つのデモを解説してくれた。なおインソムニアックでは、こうした物理エンジンはHavokやUnreal Engine3といった既存のものは使わず、すべて独自で制作し、フルスクラッチのものを使っているとのこと。

画像画像 「レジスタンス」に登場する敵・キメラは、一体ごとにプレイステーション 2の時よりも技術的に発達したAIが搭載されている。戦闘が始まれば遮へい物を使って身を隠しながら応戦してくるし、場合によっては物影で待ちかまえてプレーヤーを奇襲する、といった動きも独自に判断して行動する。もちろん他のキャラクターの動きに応じて行動パターンを変えるため、敵にまわすと「かなりやっかい」。走る、よりかかるといったキメラのアニメーション(6種類)も壁や坂といった周囲の環境にあわせて自然な動きになるよう計算されている

画像画像 1フレームの間にどれほどの計算が行われているのかを示す、爆発時に50の針が発射される武器「ヘッジホッグ手榴弾」を投てきした時のデモ。1つ1つの針は物理演算で計算されており、地面にそのまま刺さるもの、敵に当たれば部位(1キャラあたり28部位をヒットチェックしている)によって異なるダメージ量を算出する。さらに敵側も当たりどころによって400近いリアクションが用意され(PS2の時のリアクションは30ほどだったと言う)、倒れる場合も(床や地面の形に応じて)自然な姿で倒れる。もちろん敵側も周りの環境に対して何が起こっているのかを判断しているので、回避行動は個別に取っている。実際のゲーム中では「2〜3秒の出来事」でしかないワンシーンだが、本作ではこのように1フレーム単位で膨大な数のリアクションを同時進行でリアルタイム計算されているわけだ。こうした細かな動きのリアリティの積み増しが、新たなゲーム性を生み出すきっかけとなることは間違いない

謎に満ちたストーリー、PS3で可能になった世界観の表現

画像 Insomniac Games ジョシュ・ウォール氏

 プログラマーであるガーバー氏に続いては、ストーリー&アートのパートを担当したジョシュ・ウォール氏、ダレン・クァーチ氏が登場。ストーリーに関してはソフトが発売されればいずれ明らかになることではあるが、主人公である米軍兵士のネイサン・ヘイルは「イギリス軍と一緒に行動しているが普通の兵士ではなく、世界でただ一人だけキメラを止める力を持っている」(ウォール氏)ということが明かされた。

 ゲーム世界のタイムラインでは、アメリカは第一次世界大戦に参戦せず、アジアから侵攻してきた謎の生命体キメラがヨーロッパ全体を制圧しようとしている。孤立状態にあったアメリカは1951年7月にヘイルを含む米陸軍をイギリスに送り込むが、到着して部隊はすぐ行方不明となり、本編ではその後の4日間が描かれると言う。

画像 主人公のネイサン・ヘイルは、キメラウイルスに感染しながらも、ただ一人生き残る“特別な力を持つ人間”。ゲームの中でヘイルは「進化していく」のだが、その後はゲームをプレイしてからのお楽しみ
画像 ヘイルの行方を追うイギリス軍のインテリジェント・オフィサー、パーカー。彼女をはじめヘイルを取り巻く人々によって、濃密でミステリアスなストーリーが描かれるようだ

画像 本編のシナリオはミステリー色が強く、ゲームが進むにつれたくさんの疑問が残ると言う。各ステージに隠されている機密文書を入手して、キメラの謎に迫る資料、戦況といったを情報をもとに、プレーヤーは今回の物語の謎を解き明かさなければならない
画像 インソムニアックで見ることができたムービーの中には、どうやらキメラの誕生が描かれるシーンも。ウイルスに冒された人間はやがてキメラに改造されていくのだろうか?

画像 Insomniac Games ダレン・クァーチ氏

 本作の特徴のひとつに、“1950年代のイギリス”という独特な世界設定も挙げられる。この理由を聞いたところ「ロシアからイギリスに侵攻してきたキメラにはある目的がある。それに(アメリカ人にとって)イギリスはなじみ深い場所だし、ロケーション的に面白い部分が多い。また1950年代はアメリカにとって“明るい時代”だったことを、今の世代なら知っているから、そこであえて“暗い時代”の世界を作り上げることで真実味や没入感を高めることができた」とクァーチ氏。

 また、「最初のレベル(漁港のステージ)は人間の世界が破壊されたものだが、ゲームが進むとキメラの世界が次第に見える作りとなっている。PS3は従来と比べてスケールが大きくても細かなディティールの表現ができるから、現実世界にあるものと実際に存在しないものをまぜあわせる作業は非常にクリエイティブだ。以前手掛けた『ラチェット&クランク』もそうだが、今回もできるだけ多くの環境を用意するよう心がけている」(クァーチ氏)とのこと。また今回はゲームの全体的なムードを形作るため天気やライティング表現にも力を入れており、没入感の高い環境が再現されていると言う。

画像画像画像 英ヨーク市街をはじめとした、街のコンセプトイメージ。キメラによって徹底的に破壊され、市内は完全な廃墟となっている。街の全景を見ると街の周囲が深くえぐられており、中央には巣穴らしきものも。

画像画像画像 物語が進むうち、人間世界はキメラたちに浸食されていく。ひとつひとつのマップはかなり広大だが、作業の効率化が進んだおかげでデザインチームをそれほど増やすことなく完成させることができたとのこと

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