極寒の地で繰り広げられる戦いは壮絶で、やけどしそうなほどに熱かった「ロスト プラネット−エクストリーム コンディション−」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年12月27日 00時00分 公開
[小泉公仁,ITmedia]
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写実的な映像表現と、重厚なサウンドが素晴らしい

 それでもプレイする意欲が最後まで持続するのは、「ロスト プラネット」にたくさんの魅力が詰め込まれているからだろう。雪と氷の世界と聞いていたので、「雪景色が延々と続いて、見飽きてしまうのかも」と思いきや、実際のフィールドは広大でありながらも実に変化に富んでいて、似たような風景の連続になっていない。見せ場となるようなシーンが次から次へと出てきては、プレイヤーの目を終始引きつける。

 出色なのは、圧倒的とさえ思える映像美。人物、AK、VSの緻密なモデリングもさることながら、建造物などを含む風景全体の描写が写実的で、その美しさに思わず目を奪われる。Xbox 360が登場して約1年が経って、HDクオリティのゲーム映像も見慣れたつもりだったが、細部までこれだけ密に描き込まれた映像を見せられると、改めて“次世代”を強く実感する。

画像 雪原の描写が本当にリアル。光が当たっている部分が白く飛んで見え、眩しさを覚える
画像 敵VSを倒したり、ドラム缶を打つと爆発するが、その際に立ち上る炎や煙の表現がまたおそろしくリアル
画像 あるステージで見られる夕焼け空の美しさは、圧巻の一言。このシーンには思わずため息が漏れる

画像 BGMは常に鳴っているわけではなく、例えば序盤は寒風が吹きすさぶ環境音だけが鳴っていて、クライマックスが近づくにつれてオーケストラサウンドが挿入されるなど、シーンに応じて使い分けている

 このゲームは、サウンド面でも感銘を受けるほどに優れている。BGMのオーケストラサウンドは重厚で、ゲーム中の至る所で荘厳な雰囲気を醸し出すのに一役買っている。特に、「メインテーマ〜ロスト プラネット〜」のスコアがとても良い出来。中ボスなどとの戦闘では勇壮なBGMが力強く鳴り響き、倒すとそれがすぅっとフェードアウトしていく演出もいい。BGMとSE音のバランスも良く、サラウンド環境ではそれらが渾然となってプレイヤーを包囲し、気分をいっそう盛り上げてくれる。

 ストーリーについても、なかなかよく練られている印象。ミッションの前後に(一部はミッションの途中にも)ハイクオリティのリアルタイムデモが挿入されるが、その中でウェインが記憶を失った原因や、ハーモナイザーの秘密などが徐々に明らかになる。このイベントシーンがかなりのボリュームで、映画を観ているような感覚になる。

 興味深いのは、この「ロスト プラネット」の中で起こる出来事をただトレースするだけでなく、キャラクター間の人間ドラマも丁寧に描かれていること。詳述は避けるが、信頼や使命感が劇中の根底に流れるテーマのようにも感じた。また、台詞の言い回し、表情、仕草など、登場人物たちの“演技”にも注目したい。欲を言えば、終盤、ちょっと幕引きを急いだかな?という感があったのと、ウェイン以外の人物描写をもう少し掘り下げると、より味わいの深いストーリーになったかもしれない、という点が心惜しい。

最大16人でプレイできる「オンラインバトルモード」が熱い

 「ロスト プラネット」のもう1つの楽しみは、「オンラインバトルモード」。このモードでは、Xbox Liveを通じて、世界中のプレイヤーとオンラインで対戦または協力プレイが楽しめる。最大で16人まで同時に参加できるので、キャンペーンモード以上に熱いバトルが期待できそうだ。

 オンラインバトルでは、本編で敵として登場した雪賊たちのキャラクターを使用し、服の柄などを自由に選択して参加できる。ゲームタイプは4種類ある。まず「サバイバル」は、全員が敵同士となる個人戦。「チームサバイバル」は、文字通りチーム(最大4チーム)に分かれての対抗戦で、いずれかのチームの戦力ゲージがゼロになるか、タイムアップまで戦う。「データポスト争奪戦」は、本編でも登場したデータポストを探し出し、より多くのデータポストを起動させたチームの勝ち。最後に「フォックスハンティング」は、その名の通り“狐狩り”で、ゲームのホストが逃亡役となり、それ以外の参加者はハンターとして逃亡役を追うというもの。どのゲームタイプでも、ホストが対戦時間や初期武装などのルールを設定できる。

画像 Xbox Liveを通じてオンラインプレイができる「オンラインバトルモード」。まずは、自分の分身となるキャラクターと服の柄を選ぶ
画像 オンラインバトルには、ランキングを競い合う「ランクマッチ」と、ランキングに関係なくオンライン対戦を楽しむ「プレイヤーマッチ」がある。また、ヘッドセットの声質を変える「ボイスマスク」も用意されている
画像 対戦時間、初期武装、ステージなどは、ミッションを作成して参加者を募るホストが決める

 このオンラインバトル、プレイしてみると非常にエキサイティングでおもしろい。タイムラグや処理落ちはほとんどなく、キャンペーンモードと同様の感覚で快適にプレイできるし、相手が人間だけあって次の行動が予測できず、ハラハラドキドキの連続。とりわけ「チームサバイバル」では、示し合わせたわけでもないのに不思議とチーム内での役割ができあがって、うまく連携が取れると喜びもひとしお。4種類あるゲームタイプの中でも、この「チームサバイバル」と「データポスト争奪戦」が人気を集めるのではないかと思う。オンライン対戦というのはどうも敷居が高く感じられて、参加するのに二の足を踏んでしまうが(わたしもその一人)、「ロスト プラネット」を入手したら思い切って飛び込んでみるといい。このゲームなら、プレイのうまい下手にかかわらず誰もが楽しめると思う。

画像 まずは「チームサバイバル」に挑戦。仲間がいるって心強い……
画像 データポストをせっせと起動するわたし。キャンペーンモードのとき以上にBボタン連打に力が入る
画像 敵チームのメンバーに果敢に挑むも、ハンドグレネード(グレネード)の直撃を受けてあえなく爆死……。ちなみにこの後、5回も死亡した。おまけに間違って仲間を撃っちゃうし、チームにとってはお荷物キャラだったかも。同じチームだった方、ごめんなさい……

FPSやTPS系のゲームに苦手意識を持つ方にもお勧めしたい傑作

 月並みな表現だが、このゲームは本当に“すごい”。その一言に尽きると思う。ビジュアルやサウンドが実に素晴らしい出来で、目と耳から入るものに説得力があるし、世界観もしっかり構築されている。見せ場と呼べるようなシーンの連続で、最後までプレイヤーを飽きさせない。

 難易度について「かなり高め」とは書いたが、それも決して理不尽さを覚えるようなものでなく、リトライする過程で敵や武器の配置が頭に入ってくると、どの順でどういった手段で敵を倒せばよいかという自分なりの戦略が見えてくる。その戦略に基づいて行動し、難攻不落のミッションを突破できたときの達成感は、格別のものがある。

 また、一人称(FPS)や三人称(TPS)視点のアクションシューティングに苦手意識を持つ方も多いと思うが、「ロスト プラネット」に関して言えば、操作性、ゲーム内容ともそれほどマニアックになりすぎていないので、すんなり入り込めるのではないかと思う。フィールド上の地形や建物などの配置がよく練られているせいか、広大なフィールドを駆け回るミッションでも、どっちへ行けばよいのかが何となくわかって、途中で行き詰まることも少ない。

 強いて難をあげるなら、Bボタンに「武器を拾う」「VSに乗る」「データポストを起動する」などさまざまなアクションが割り当てられているため、ときに想定外のアクションが出てしまうこと。例えば、武器を拾うつもりが殴るモーション(しかも隙が大きい)になったり、VSに乗ろうとしたのにVSの武器を取り外してしまったり、といった具合。もっとも、すでに全ボタンを使用していて、他に割り当てるのも難しいが、何か誤操作が少なくなるような工夫があれば理想的だった。

 また、主人公ウェインをイ・ビョンホン氏が演じていることが、ゲームファンの間でどのように受け止められるのかも未知数……。確かに意表を突いたキャスティングではあると思うが、彼のファン層とXbox 360のユーザー層が重なるとはちょっと考えにくい。ただ、この「ロスト プラネット」を実際にプレイしてみて、それほど違和感はなく、ウェインのキャラクター像に意外とマッチしているように感じた。案外、このゲームの発売がきっかけで、イ・ビョンホンファンの奥様方がこぞってXbox 360本体をお買い上げ……となったら、それはそれでおもしろい。

画像 静止画でキャプチャするとよくわかるが、速い動きには残像が映る演出もある。また、敵の攻撃を辛くもかわしたときなど、ウェインがよろけるモーションもあって、芸が細かい
画像 イ・ビョンホン氏の熱烈なファンなら、Xbox 360本体ごと購入してプレイするだろうか……。それとも、プレイは旦那や息子に任せて、自分は鑑賞に専念するとか?
Character Wayne by (C)Lee Byung Hun/FANTOM CO., LTD, (C)CAPCOM CO., LTD. 2006 ALL RIGHTS RESERVED.


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