泣きゲーだけど萌えもある!? PS2に舞台を移した智代のその後:「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」レビュー(1/2 ページ)
幾多もあるギャルゲーのうち、特に涙がちょちょぎれてしまうほど感動するゲームを“泣きゲー”と呼ぶのは、そのスジ(ギャルゲー好き)の人たちにとっては常識だ。2007年初の泣きゲー「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」で、涙を流してみました。
最近、泣いてますか?
2004年にゲームブランドのKeyが作成したPCゲーム「CLANNAD」(クラナド)は、同ブランドの「Kanon」、「AIR」に続く“泣きゲー”として、多くのファンを泣かせたのは記憶に新しい。その1年半後、「CLANNAD」本編に登場したヒロインの一人、坂上智代の後日談を描いた「智代アフター 〜It's a Wonderful Life〜」が、これまたPCゲームとして登場した。
坂上智代は、不良生徒たちとのケンカで無敗を誇るほど強いという力強さと、子供が好きという女の子らしさを兼ね備えた人気ヒロインだ。
そして2007年1月25日、プレイステーション 2版として「智代アフター〜It's a Wonderful Life〜CS Edition」登場した。シナリオや新規イベントグラフィック追加など、PC版に比べてボリュームも大きくアップしている。
ひとまず、本作の物語をざっと紹介しよう。社会人1年目になる主人公の朋也は、恋人である智代との幸せな日々を過ごしていた。そんな中、智代の弟である鷹文が、父親の隠し子である“とも”を朋也の家に連れてくる。ともの母親は行方をくらましているため、やむなく朋也と智代が一時的に面倒を見ることになってしまう。
さらに、鷹文の元彼女である河南子(かなこ)が実家を飛び出し、朋也の家に転がりこんでくる。そんな感じで集まった朋也、智代、とも、鷹文、河南子の、5人の共同生活が描かれるのだ。
彼らの“絆”を軸としたシナリオが印象的な本作。絆や家族といったフレーズが、筆者の心の琴線に触れる。プレイする際にはハンカチの用意を忘れずに。
萌えゲー好きな筆者は、当然泣きゲーも大好き! ……なのだが、泣かせる展開に弱いため、プレイ中はもうボロボロ泣いてしまうだろう。特にKey作品のおかげでどれほど涙腺が緩んだか。しかし、男子たるもの人前で涙は見せたくない。やっぱり泣きゲーを仕事場でプレイするなら、みんなが帰った後を狙い、1人でしんみりプレイしたい。というわけで、残業(?)プレイリポートをお届けする。
ちなみに本作は、テキストを読み進めつつ、要所で現れる選択肢を選んでいくオーソドックスなアドベンチャーゲームだ。ゲームオーバーになる選択肢はあるものの、基本的には一本道のストーリーのため、エンディングまでの道のりは難しくない。
さぁ泣かせてもらおうか! ……あれ?
というわけで早速プレイ開始。「CLANNAD」で紆余曲折を経て結ばれた、智代と朋也。しょっぱなから、ひとつ屋根の下でラブラブモード全開な生活を送る様を、まざまざと見せつけられる。
正直アツアツな2人を見ていて(特に朋也が)憎らしいくらいに感じるのは、それだけ彼らがまぶしく映っているからであろう。就職して1年目、徐々に仕事に慣れてやりがいを感じ始め、家に帰れば愛すべき人が夕飯を作って待ってくれている。なんとも幸せな情景ではないか! ましてや、その彼女が、ウェイトレスや水着といったコスプレを連発した日にはアナタ! “あれ? これって泣きゲーじゃなかったっけ?”とツッコミたくなるってもんだ。
恥ずかしいけれど、好きな相手のためなら……と、一生懸命になる智代と、それを面白がる朋也。そんな姉の痴態(?)を、偶然何度も目撃する弟の鷹文。それを目撃されて、へこむ智代。こんな楽しい生活がずっと続くならば、どれだけ幸せだったことだろう。筆者も智代のコスプレ姿を見続けられるなら、どれだけ幸せか……!!
しかし、そんな妄想全開の日々も終わりを告げる。というか、実はここまでが本作のプロローグなのだ。お忘れだろうか、本作が泣きゲーだということを。決して智代のコスプレ日記ではないのだッ!! プロローグが終わると、鷹文が智代の腹違いの妹である、ともを連れてくる場面が始まる。
愛する者のためにいつも全力投球で、周りが見えなくなる智代。最初のころは、その性格がコミカルに演出されており、“不器用だな”と思いつつもかわいく見守れた部分だった。しかし、智代のともへ対する態度を見ていると、徐々に“その性格では辛いだろうに”と思えてくる。
というのも、ともを預かっているのは一時的なことで、いつかは母親の下へ送り返してあげる必要がある。ともにとっては、そちらの方が幸せだろうからだ。しかし智代は、ともを捨てた母親の元に返すことが本当に幸せなのかと、朋也に訴える。どうせなら、養子にすればいい、と盲目的な発言まで出始めるのだ。
とにかく智代を見ていると、とても切なくなってしまう。捨てられた仔猫を拾ってくる子供を叱る、親のような気分になってしまうのだ。
仔猫を拾ってきても、親は大抵、飼うことは駄目だと言う。かわいそうだと親も思うが、どうにもできない現実があって、それをうまく子供に諭さないといけない。拾ってきた子犬に情が移れば移るほど、別れが悲しくなるからだ。
犬猫ならば、まだ感情のコントロールもできるだろう。だが、ともは人間で、さらに年端も行かぬ女の子。本当ならば、親から愛情をたっぷり注がれていなければいけない少女なのだ。智代に、別れが悲しくなるからあまり可愛がるな、なんて誰も言えやしない。例え話の親とかぶる朋也の気持ちが、痛いほど伝わってくるのだ。
この時点で、大体先の展開が読めてくる。智代の元から、ともは去るんだろうなと。なんとも泣ける展開ではないか。悲しすぎる! ともや智代がかわいそうすぎるよ! と、1人仕事場で叫んでしまう筆者。いや、周囲に誰もいなくてよかったデスヨ……。
ともを溺愛する智代の姿や、親の勝手な都合で振り回されるともの姿が、筆者の目頭を熱くさせる。どうして誰も傷つかない話はないのか!? と思ってしまう。人生は厳しい。
しかし中盤あたりで、物語は予想もできなかった方向へ急展開。このあとともに対して、智代がとった行動とは……!? ここから先の物語は、ぜひプレイして自分の目で確認し、決着をつけていただきたい。筆者はプレイして、“なぜそこまで智代を追い込むんですか!?”と、原作者を問いつめてみたくなった。
シナリオに感じる切なさを何十倍にも引き立てるBGMたち
本作を語る上で欠かせないのが、作中に使われる楽曲だ。ピアノやアコースティックギターを使ったBGMが、切ないシーンを盛り上げてくれるのだ。
原作を手がけたKeyというゲームブランドは、泣きゲーに不可欠な“泣かせるシナリオ”に加え、音楽という要素を重要視している。「Key Sounds Label」という自社レーベル会社を有していることからも、楽曲に対して非常に注力していることがうかがい知れるだろう。
コアユーザーならば、楽曲を聞いただけでゲーム中のシーンがよみがえり、涙を流してしまうほどだ。もちろん、楽曲単体としての完成度も非常に高い。
筆者としては、“オープニングとエンディングに挿入されるLiaの歌を聴いてくれ!”と、声を大にして言いたい。Liaというアーティストは、Keyの過去作とも密接につながりがあるため、Keyのボーカル曲=Lia、と結び付けられるほど。その澄んだソプラノボイスを本作でも十分に発揮し、抜群の歌唱力で、聴くものの心を鷲づかみにするのだ。
ちなみにLiaの代表作は、「AIR」の“鳥の詩”や“Farewell song”、“青空”など。本作の前身にあたる「CLANNAD」では“Ana”という曲を歌っている。また昨今では、Key以外のゲームでも活躍している。コナミの音楽ゲーム「beatmaniaIIDX11 IIDX RED」では、“HORIZON”という曲をLIA名義で提供している。
筆者がオススメする曲は、“鳥の詩”と“青空”だ。「AIR」をプレイしてからこの2曲を聴いたら、必ず号泣してしまう。未体験の方がいたら、ぜひ本作の楽曲と合わせて、一度は聴いてみていただきたい。
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