2007年末に海外ゲーム業界を語りたいくねくねハニィの「最近どうよ?」(その19)(2/2 ページ)

» 2007年12月28日 00時14分 公開
[くねくねハニィ,ITmedia]
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PS3とブルーレイ

 それにしてもPS2の売れ行きは止めどころなくて、とても旧世代マシンとは思えぬ。11月もほぼ50万台近く売っていて、もうすぐ北米だけで4千万台を突破しますよ。でも、次世代機PS3も、値下げ後売れているのは感じたね〜。もちろん、他のハードの勢いが激しいので目立ってないけど、月販40万台超えってすごいことよね。ただ、どうしても牽引するキラーソフトの不足は否めない。じゃあどうして売れているの? と思っていたら、Best Buyに行ったときに気がつきましたよ。PS3の近くにブルーレイプレイヤー(あくまでも再生機)が売られていて、「特価! 399ドル!(アメリカで特価と日本語で書いてはいない)」と書いてありました。単なるブルーレイ再生機がゲームもできるPS3と同等か高額なら、そりゃーPS3買いでしょ? しかもPS3 40Gバイトには「Spider Man 3」のブルーレイディスクが同梱されていて、80Gバイトには「Motor Storm」が同梱されているからお買い得。

 まるでPS2ローンチ時のDVD再生機のよう。ようやく北米でもハイデフTVが出回ってきて、ブルーレイの映画ソフトも増えてきたので、いよいよPS3の出番か? PS2もそうだったように、ハードが出回るのが先で、ソフトが後追いでいろいろ出回ってくる、プレイステーションってそんなハードなのかもしれないなぁと思う今日この頃ですわ。

度肝を抜く北米ユーザーのXbox 360へのロイヤリティ

 ハードが出回ればソフトが売れるってことは必ずしも正しくはないんだなぁと考えさせられる今日この頃。だって北米におけるXbox 360を見てみんしゃい。実はまだ北米で800万台も浸透していないのですよ、このハード。PSPにも及ばず、PS2なんてはるか彼方に見ているハードなんですけど、年末のソフト売上ランキングにはたくさんのXbox 360ソフトが顔を出していますね〜。

 「Gears of War」は発売以来260万本以上売れていて、これってXbox 360持ってる人の3人に1人は買ってるってことだし、「Halo3」に至ってはすでに400万本以上売っているわけで、なんとハード所有者の2人に1人以上が購入しているってことでしょ? ミリオンソフトを連発してるけど、100万本を超えるだけでもハード所有者の7.8人に1人が購入しているってことだわよ。ハニィがソフト会社にいたときには、ハードに対するソフト購入率って10%を超えたらすんご〜いソフトって言われていたんだけど、「Gears of War」は33%、「Halo3」は52%ってこと。恐ろしい……。

 これらはまさにお化けソフトでありまするが、言いたいのは、ソフトのことではなくて、Xbox 360ってハードの特質。PS2で見てみると、超お化けソフトとして「Grand Theft Auto San Andreas」(現在まで700万本以上北米だけで販売している)をあげてみても、当時のハードに対するソフト購入率は15%程度なのだよん。つまり、Xbox 360ユーザーはハードユーザーであり、コアゲームファンであるということ。

 その証拠に発売から2年しか経っていないのに、ソフト装着率(1ユーザーあたりの平均ソフト購入率)を出してみたら9.2本。すごいなぁ。Xbox 360を2年前に買った人も昨日買った人も含めて、平均的に9.2本のソフトを買ってるってこと。ちなみに、昨年発売になったPS3は4.3本、ソフトの満足率が高いWiiは3.9本でしたん。 Xbox 360のユーザーは「ゲームはXbox 360でやろう」というハードに対するロイヤリティが高いとも言える。もちろん良質なソフトが牽引して支えていることは間違いないけどね。

 マルチプラットフォームで発売されるソフトでも、Xbox 360で出したものが売れやすいってのは「Call of Duty 4」や「Assassin's Creed」の売れ方を見てると否定できないよね。ただし、「Guitar Hero III」のようなパーティもの、つまりライト向けはPS2版のほうがインストールベースの強さによってXbox 360よりも売ってるから(とは言えXbox 360版も86万本くらい売っていますが)、すべてのジャンルに当てはまるわけではないけどね。

 Xbox 360はコアユーザーによって支えられているということ、また、コアなジャンルであればXbox 360はプラットフォームとして除外できないハードであるってことは覚えておきたいね。あとは日本でもうちょっと頑張ってくれるといいんですけどね〜。

なぜ日本発の音楽ゲームソフトブームにならないのか?

 「Guitar Hero」から始まり、最近発売されたMTV Gamesの「Rock Band」などの演奏系ソフト。また、ヨーロッパから火がついている「Sing Star」を初めとするカラオケ系のソフト。音楽ゲームのブームなんですかねぇ。「Guitar Hero」は2005年に発売以降、「II」、「III」と順調に続編を重ねて最新作の「III」では、PS2、PS3、Xbox 360、そしてWii向けと、本当の意味でのマルチプラットフォーム化を実現しています。値段が鍵になると言われている欧米市場であの価格(下記参照)で、あんな大きなペリフェラル(周辺機器)付でこんだけ売っちゃうってのは前代未聞。これらのリスクを恐れず大きなバクチをしたデベロッパーとパブリッシャーの努力の賜物とも言えるでしょうね〜。

Guitar Hero IIIソフト単体

  • Xbox 360版:59.99ドル
  • PS2版:49.99ドル
※ただし、PS3版、Wii版は今回初版なのでソフト単体版はない。

Guitar Hero IIIコントローラ同梱版

  • XBOX360版:99.99ドル
  • PS3版:109.99ドル
  • Wii版:99.99ドル
  • PS2版:89.99ドル

 また、11月にはMTV Gamesから、ギター、ドラム、マイクが同梱された「Rock Band」が発売され、2万円近くもするにも関わらず単月で3万本以上売れています。10月に行われたE for Allでも、「Guitar Hero III」と「Rock Band」が目玉タイトルになっていたし、北米は空前の音楽ブーム。業界として一つの大きな流れを作るジャンルになりましたよん。

 一昔前に日本のメーカーさんたちがこぞって発売したジャンルですが、欧米では、そこそこってくらいしか売れなかったんだよね。では、なぜ今アメリカ発の音楽ゲーム? 2005年にRedOctane/Harmonixがこのゲームを企画する際に心がけたことは、「みんなが弾いてみたい曲であること」だったそうな。そんでもって、ギター野郎が弾いてみたい曲のライセンスを取ってそのままソフトに入れ込んでみたわけよ。

 日本のソフトの楽曲は、オリジナルや有名な曲をアレンジしたものが多かったことを覚えているかな? もちろんゲームのオリジナリティを考えると、何も他人が作ったものじゃなくて、オリジナルのすばらしい曲を世に出すチャンスだし、決して間違えていないと思うけど、「フック」と言う意味では欧米ユーザーの「弾きたい!」ってモチベーションにはちと届かないのかもしれないね。じゃあ、なぜ日本のメーカーは有名楽曲をライセンスしてソフトに盛り込まないのか? という問いがあるけど、これには日本のメーカーさんを責められないところもあるのだよん。楽曲の著作権使用に関する日本と欧米の違いがあるのだ。

 日本にはJASRAC(日本音楽著作権協会)という音楽楽曲のライセンスを取りまとめて管理してくれる団体(社団法人)があるんだけど、ライセンシー(楽曲を使う側)からすると、JASRACが管理している楽曲に関しては、決められたライセンス料を支払えば、個別にライセンス交渉しなくてもある程度自由に使用できるってメリットがあるの。このメリット、裏を返せば個別にライセンス交渉ができないってデメリットにもなるわけで、ライセンス料を交渉によって引き下げるってことが不可能なわけですね。この楽曲使用ライセンス料は音楽ゲームソフト開発における「コスト」の大きな比率を占めるから、楽曲をできるだけ多く使いたい場合には、致命的なのですな。

 一方海外の場合には、個別の交渉をしていくわけですが、これって本当に面倒ですぜ。許諾権を持っているライセンサーが楽曲によって異なるんですよ。パブリッシャーである場合もあるし、演奏者である場合もあるし、作曲家や作詞家、またはその複合かもしれない。1曲1曲の楽曲のライセンサーが誰なのかを調べて、個別交渉して、ライセンス料を決定するのですわ。これが開発費としてミートすれば、いろいろな有名楽曲を使って、ユーザーへの訴求をしつつ音楽ゲームが発売できるわけですね。

 許可を取らねば使えないし、すべて個別に楽曲ごとの交渉という大変な道を通ってライセンス楽曲を使用した音楽ゲームは誕生するのだ! 万が一ライセンサーを間違えたり、個別の契約書内容に沿った使用の仕方をしないと、契約違反で使用禁止になったり、訴えられたり、損害賠償請求されたりするってリスクを考えると、日本における楽曲使用の際のJASRACの存在は本当にありがたいのさ。

 手間を取るか、コストを取るか、というところだけど、楽曲数や演奏時間を売り物にする音楽ゲームに関しては、楽曲ライセンス料を別途ユーザーから徴収することはできないし、ユーザーが許容するソフトの販売価格で吸収するしかないから、手間をかけてコストを下げるという手法を取らざるを得ないのだね〜。

ハニィのあとがき

 読者の皆様、本年も「最近どうよ?」をご愛読頂きましてありがとー! 今年最終だったので、いろいろと述べておきたいことをつれづれに書いてしまったけど、今年をまとめると「任天堂」と「音楽ゲーム」、そして「Halo3」に尽きるかな、と。

 年初から年末までずっと書き続けたこと「Wiiが足りない」。不具合があってローンチ後しばらくの間出荷に苦労していたXbox 360を思い出すけど、ちと事情が違う。「発売したら即売り切れ」ってことでしょうけど、発売されてから1年経っても欲しい人が買えないって状況は、早く解消して欲しいもんです。生産台数、もう少し上げられませんかね? ニンテンドーDSも北米では既に1千5百万台を超えて、Wiiともども任天堂ハードがよく話題に上る年でしたね! ソフトの意味でも、任天堂は日本メーカーで唯一と言っていいトップ10に頻出するパブリッシャーでした!

 「Halo3」は11月末時点で400万本の売上を達成してXbox 360では一番売れたコンソールソフトになっただけではなくて、今年一番売れたソフトになったね。今年Xbox 360とPS3で発売される予定だった「GTA」は来年に持ち越されてしまったため、「Halo2」、「GTA San Andreas」が発売された2004年度と比べると市場的には元気がなかったと言いたいところなんですが、いえいえいえいえ、2004年の「GTA、Halo2はバカ売れして、その他のソフトがあんまり売れなかった」状況に比べると、「Halo3も売れたけど、それだけじゃない!」し、そのおかげで市場規模は過去最大だしってことが言えましょうね。

 そのソフト売上高に大きく貢献した「Guitar Hero」シリーズも見逃せないよね。2007年前半は「Guitar Hero II」、後半は「III」が大ブレイクし、「北米ではペリフェラル(周辺機器)同梱のソフトは難しい」という定説を破ってしまったのよ。このジャンルが「ブーム」なのか、それとも今後1つの大きなジャンルとして継続的に市場に認知されていくのかをきちんと見ていきたいと考えるハニィでした!

 今年も語りたいことはたくさんあったけど、来年もまだまだ語り続けるので、ご愛読よろしくお願いしますね〜。いつも不定期でごめんなさい。来年は、もっと日本発のタイトルが海外で暴れてるってリポートをしていきたいと思っていますので、よろしくお願いします! 皆様、良い御年をお迎えくださいませませ。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

ハニィさん、本当に今年1本書くといって有言実行されましたね。普段もこれだけかちっと期限を守ってくれると助かります。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。


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