連載
» 2008年05月19日 15時00分 公開

ゲームはチャレンジャブルな仕事。“ノー”からは何も生まれない――セガ 鈴木裕氏(前編)ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その1)(1/3 ページ)

わたしたちは普段“ゲーム”をプレイすることはあっても、それを作り上げている“開発者”の素顔を知ることはあまりないかもしれない。そこで、ゲーム開発現場の生の声を、キューエンタテインメントの平井武史氏が直撃インタビュー。第1回目はセガの鈴木裕氏にご登場いただいた。

[ヒライタケシ/ITmedia +D Games編集部,ITmedia]

 わたしたちは普段“ゲーム”を目にすることはあっても、それを作り上げている“開発者”の素顔を知ることはあまりないかもしれない。開発者はどのようなプロセスでゲームを作っているのか、またどのような思いで作り上げているのか……。そこで、ゲーム開発現場の生の声を、キューエンタテインメント最高技術責任者(CTO)である平井武史氏が直撃インタビューする形でお届けしよう。ゲームの開発現場に興味がある読者はもちろん、次代の開発者を目指す人たちにも必見となる連載にしていこうと思っている。

 その第1回として、セガ R&Dクリエイティブオフィサーであり、AMプラス研究開発部 部長の鈴木裕氏にご登場いただいた。鈴木氏は話すまでもなく、読者としてはおなじみの方かと思う。まずは平井氏との出会いから始め、現在の開発者が目指すべき方向について語っていただいた。なお、2時間もの長時間にわたりお話しいただいたので、前後編の2回に分けて掲載するので、読者の方もおつきあいのほどをお願いしたい。(ITmedia +D Games編集部)


画像 キューエンタテインメント最高技術責任者 平井武史氏(左)、セガ R&Dクリエイティブオフィサー AMプラス研究開発部 部長 鈴木裕氏(右)

いきなり命じられた“シャドーボクシング”

平井武史氏(以下、敬称略) 僕と裕さんが最初に出会ったのは、僕はすごく覚えてるんですけど、1996年の春なんですよ。関西の拠点でとあるプロジェクトに配属されまして。軍隊で言ったら三階級以上上の方だったので、とても緊張した記憶があります。確か裕さんはR&Dで技術チーフをやってましたよね。

鈴木裕氏(以下、敬称略) あーそういえば関西の出身だって言ってたんだよね。思い出しました。

平井 そうですそうです。あのプロジェクトに入って、今後半年間、この作業手伝ってもらいたいと、完成させたいと。当時はドリームキャストの前の、セガサターンの時代だったと思うんですが。で、4月から開始して、たぶん裕さんと直接お話したのが、秋ぐらいですかね。ちょうど「SGL」ていうライブラリがありましたよね、それの描画まわりを修正するときに、僕がカツ丼をおごってもらったんですよ。

鈴木 カツ丼……(苦笑)。

平井 夜中まで仕事してると、裕さんが「飯でも食えよ」みたいな感じで。あー名前覚えてくれてるんだなと。裕さんはいつくらいから覚えてますか? 僕と話したとか、仕事とかで。

鈴木 一緒に動いてる人はいっぱいますからね……。大体名前覚えない方なんですよ。年齢も教えられた時の年齢で覚えてるんですね。だから女性なんて年を取らないんですよ(笑)。

平井 女性からしたら、すごくいいですね(笑)。

鈴木 聞いた時に25歳ならずっとそのまんまなわけです。おかしいよなーなんて思いながら。そんな感じなので、平井君については……彼いい仕事するとか、周りの噂で聞いていましたよね。彼は信頼できるとか、優秀だとか……。

平井 そこ強調して下さい(笑)。

鈴木 まあいろいろな話ですね(笑)。印象に残ってるのは、部下からも信頼されているっていう話と、あとはボクシングやっているって話かな。

平井 そうでしたね。金曜日に部長ミーティングがあったんですよね。部長ミーティングで、ホワイトボードに向かって、シャドーボクシングやってくれって言われたんですよね。ホワイトボードですよ。あんまり反射率がよくない、自分が見えにくい場所で、しかも10年ぶりくらいに。でも裕さんからの頼みなので、真面目にやらなきゃいけない。で、けっこう本気でやりましたね。そのときのボクシングや格闘とかのイメージを表すのに、周りの方に裕さんが伝えたかった。それでなんとなく、ですね。

鈴木 いやぁ、喧嘩が強いんだろうなと思って(笑)。

平井 そんなことはないですよ(笑)。

鈴木 強い男ってのは、男なら誰もがあこがれるわけじゃないですか。よくテレビドラマにも出てくる、悪い奴をバシバシっとやっつけるとことか。見てみたいなーと思って。だから、何だろうね。意外性があるかどうかは別として、かっこいいじゃないですか。なんか「シェンムー」か何かのチームにもいたんですよ、1人。ちょっとずんぐりむっくりで、どちらかというとスポーツをする感じでもないと。その人が飲みの席で、ちょっとした演舞みたいなことをしてくれたんだけど、すごかったですね。すごいスピードで。振り上げた脚がパーっと頭の上に上がる感じで。なんか見違えましたね。

平井 その演舞をキャプチャーしようとか思ったんですか?

鈴木 もちろん思いましたね。これは本当に技だなと思って。なめて喧嘩なんてふったら確実にやられると(笑)。中途半端な人が弱そうだと思ってかかったら分からないですよ。そんなことがあってしばらくしてからだったから、ボクシングやるって言っていたので、見たいなと(笑)。

平井 シャドーボクシングを(笑)。

鈴木 仕事ができるだけじゃなくて、やっぱり強い男ってのはかっこいいじゃないですか。で、ちょっとやってみて、ってことで(笑)。

平井 もう急に言われたんでね、びっくりしましたけど。

鈴木 はあはあ言ってましたよね(笑)。

平井 けっこう体力の限界でした(笑)。

鈴木 ……今もう一度やってもらうってのも……(爆笑)。

平井 いやいやいや、もう勘弁してもらいたいです(爆笑)。でも僕もイメージはすごく残っていますね。今までの人生でも、いろいろな注文をされてきたとは思うんですけど、“裕さんはどんなところから変化球を投げてくるんだ?”という感じは初めてでした。

画像

鈴木 さっき話した人はほんとにすごかったですね。回し蹴りもすごかったし、すごいスピードで。やっぱりいつもやってるってのは違うんですよね。でも、昔やってただけでもすごい自信になるだろうし、いろんな面で、仕事にも良い影響があるでしょうね。

平井 昔やっていたのって、精神的な部分で生かされてる気はしますね。心技体の心の部分で。

鈴木 部下と揉めても負けないぞ、みたいな(笑)。

平井 裕さんも武道とかお好きなんですよね?

鈴木 見ることはするんですよ。格好だけね。型とか。中国でも散々見たし。モーションキャプチャーの人に教えるために型を覚えたり。

平井 ヒクソンさん(格闘家のヒクソン・グレイシー氏)とお会いになったときは?

鈴木 ヒクソンさんの部屋に呼ばれてね。泊まっている部屋まで来てくれって言われて。取材終わった後かなり盛り上がっちゃって。

平井 立ち向かったらやられそうなオーラみたいなのってありました?

鈴木 それがあまりないんですよ。「八極拳」の老師もヒクソン氏も、立ち向かったらやられるっていうような、殺気みたいなのはないですね。ゼロと言っていかもしれません。老師の手を見ると、いい農民の手みたいな、分厚くて、暖かい感じだったのを覚えていますね。ヒクソン氏も決して大きな人じゃないし。だからどちらも“術”なんでしょうね。「柔よく剛を制し、剛よく柔を断つ」という言葉がありますよね、力に対して技で勝てるし、技に対しては力で押し切ることもできるという。ただしこのお2人はどちらも柔ですね。柔術だし、力じゃないですね。でもあれは力に勝つと思いましたね。あれだけ術が優れていれば。

平井 やっぱりリングに上がった瞬間違うんですかね。

鈴木 全然違うんでしょうね。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2311/06/news020.jpg 柴犬「友達〜!!!」 お母さんの寝坊で散歩が遅れた柴犬、ワン友に会えず……→怒りMAXの拒否柴発動に母「スマン……」
  2. /nl/articles/2311/06/news041.jpg 素潜りでイソマグロを突いたら海に引きずり込まれ…… 水深25メートルの激闘が100万再生「怖い」「磯のダンプカー」
  3. /nl/articles/2311/05/news045.jpg カナダ留学中の光浦靖子、得意の手芸でまたしても力作を生み出す 「クオリティ高すぎ」「もープロですね」
  4. /nl/articles/2308/06/news018.jpg 柴犬がプールからあがろうとした瞬間……! 「何回見ても爆笑」「好きすぎる」コントのようなずっこけハプニングが発生
  5. /nl/articles/2311/06/news047.jpg 隣家にいった飼い主、ふと視線を感じると柴犬たちが……? じーっと監視するワンコきょうだいの圧に爆笑
  6. /nl/articles/2311/06/news117.jpg 「スト6」フランス大会決勝、モニターにペンキで中断 環境団体乱入で
  7. /nl/articles/2311/06/news068.jpg 村重杏奈の“最強遺伝子”な弟、7歳バースデーお祝いに黄色い声 姉とうり二つな姿に「幼さが抜けて更にイケメン」「可愛いしカッコイイ」
  8. /nl/articles/2311/04/news008.jpg 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. /nl/articles/2311/04/news016.jpg 突然現れた痩せて汚れた野良猫、「ごはんくだちゃい」と訴えてきて…… 距離が縮まっていく姿に「涙が出ます」と100万再生
  10. /nl/articles/2311/05/news052.jpg 「ここはあんたが座る席じゃないよ」 末期すい臓がんの叶井俊太郎、優先席に座るも高齢者から非難 妻・倉田真由美が明かす
先週の総合アクセスTOP10
  1. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  2. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  3. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!
  4. 「BreakingDown」出場の元プロボクサー、5人から一方的に暴行される 顔面数針縫うも「私は1発も攻撃してません」
  5. 「頭が大きい」「普通ではない」 パリス・ヒルトン、9カ月長男の受診勧めるコメントにぴしゃり「世の中には病んでる人がいるみたい」
  6. 「最期の最期まで闘って」 元「妄想キャリブレーション」水城夢子さん、27歳で病死 2年前には“しばらく療養が必要な病状”で休止
  7. 3児の母・杏、異次元スタイルのパンツスーツ姿が衝撃的 目を疑う脚の長さに「身長の半分股下」「えっ! 本当!? っと思っちゃうくらい」
  8. 志穂美悦子、68歳バースデーに鍛えられた筋肉バキバキの肉体美披露 「いろいろやりたいことがある」「まだ見ぬ自分へ」
  9. 柴犬と父のやりとりに「20分これ見て爆笑してます」「気持ちよすぎるいい返事」 お笑いコンビを超える関係性が100万再生
  10. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 病名不明で入院の渡邊渚、3カ月ぶりSNS更新で「表情に違和感」「そこまで酷い状況とは」 ベッド上で「人生をやり直すこともできません」
  2. 動かないイモムシを助けて1年後のある日、窓の外がありえない光景に 感動サプライズが「アゲハ蝶の恩返し」と話題
  3. 「スカートはないわ」「常識無視の番組でびっくり」 山下リオ、登山中の服装批判巡って反論「私が叩かれているようですが」
  4. 「千鳥」大悟、大物美人俳優にバッグハグされた表情に注目集まる 「マジ照れのお顔ですね」「でれでれやん」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 神田愛花アナ、拡散された女子中学生時代ショットにスタジオ騒然「ヤバい」→“アネゴ感”でSNSもざわつく
  7. 「生きててよかった」 熊谷真実、美麗な初“袋とじ”グラビアで63歳の色気全開 真っ赤なドレス着こなす姿に「すごいプロポーション」
  8. 尻尾がちぎれた小さな子猫をサーキット場で保護→1年後“ムキムキ最強生物”に 驚異の成長ビフォーアフターに注目集まる
  9. 双子モデル・吉川ちえ、美容整形後のひたいが“コブダイ”状態へ 多額の費用要した修正手術で後悔も「傷がこんなに残りました…」
  10. 「犬ぐらい大きくなれよ」と願い育てた保護子猫が「まさか本当に犬ぐらいになるとは」 驚異の成長ビフォーアフターが192万表示!