歴史を変えた1日を体感――コーエーが調理した「関ヶ原の戦い」はポップでコミカルなアドベンチャー:「采配のゆくえ」レビュー(1/2 ページ)
コーエーにしては珍しい、ポップでコミカルなアドベンチャー「采配のゆくえ」。主人公は豊臣秀吉に忠誠を誓い、関ヶ原で西軍を率いる石田三成。宇喜多秀家や小西行長、島津豊久、細川忠興ら、一癖も二癖もある武将を説得し、天下分け目の戦いに挑め!
歴史ゲームに吹く新風
最近はめったに徹夜はしなくなったが、久々に気がついたら外が明るい!? というパターンにハマってしまった。先が知りたくて、ついつい止めどきを失ってしまう、それほど時間を忘れさせてくれたアドベンチャーが「采配のゆくえ」だ。石田三成となって、味方や敵の武将を説得したり、合戦の指示を出したりして、関ヶ原の戦いを乗り切っていく。歴史系ゲームはコーエーの十八番だが、ネオロマンスシリーズ以外でアドベンチャー形式なのは珍しい。
制作は「無双」シリーズで知られる開発チーム「ω-Force(オメガフォース)」。「真・三國無双」や「BLADESTORM 百年戦争」といった、同チームが送り出してきたタイトルと比べても、采配のゆくえは一線を画している。登場する武将はコミカルにデフォルメされていて、全体的に非常にポップな仕上がり。主人公・三成と軍師役の島左近やその娘・たまきとのかけ合いもテンポ良く、歴史もの特有の重さはない。
ただし、決していい加減ではなく、しっかりと史実を押さえたうえで、シナリオが作り上げられているのがコーエーらしい。詳しく書くとキリがないが、関ヶ原の戦いの流れや展開などは、一部を除いてかなり歴史に忠実。その上、オリジナルキャラクターに見える人物にもそれなりの元ネタがあったり、細かい出来事に本物のエピソードが反映されていたりと、コアな歴史ファンもニヤリとするようなツボがある。
もちろん、関ヶ原の合戦に詳しくなくても大丈夫。というより、まったく知らないくらいのほうが、先の展開が読めず、ストーリーをドラマチックに楽しめるだろう。全体的にアレンジのバランスが絶妙で、歴史ものをコミカルに仕立てる際にありがちな、居心地の悪さ、気恥ずかしさがないのが采配のゆくえの雰囲気の良さにつながっている。
アドベンチャーで重要な2つのポイント
さて、ここでアドベンチャーゲームの本質について考えてみたい。いろいろと意見はあると思うが、やはりアドベンチャーゲームの核となる部分は、作品世界や物語ではないだろうか。その点からすれば、アドベンチャーゲームは小説やアニメの進化形ととらえることもできそうだ。プレイヤーが主人公の立場に立って能動的に考え、行動することで、感情移入度が高まり、感動やカタルシスが増幅される。これこそアドベンチャーゲームの醍醐味。そこで、注目すべきポイントは2つある。
まずは、内面も含めてどれだけキャラクターが描けているか。主人公がどんな想いや理念を持って行動しているかがぼやけていると、プレイする側は意図に乗れず、やらされている感が強くなる。周囲の人物も、性格や行動原理が描けていて、始めてストーリー上で生きてくる。それがないと単なるにぎやかしに留まってしまう。感情移入度が高いメリットを生かすには、それだけ移入する器がしっかりしていなければ始まらない。
もうひとつはゲーム性。ゲームである以上、プレイヤーが参加できるインタラクティブ要素があるのは当然だ。ただ、物語を見せるという性質を第一に考えると、ゲーム性も作品世界にある程度フィードバックされなければならない。ゲーム部分だけが突出すると、それは別のジャンルになってしまうだろう(例えば初代「バイオハザード」は、“ゾンビを倒すアクション”というよりは、“恐怖の館から脱出する”というテーマ・物語性を感じさせるアドベンチャーの側面が強かったように思う。しかし、最近ではホラー系TPS・三人称シューティングといったほうがしっくり来るのではないか)。
簡単にまとめるなら、“キャラクターの内面”と“作品世界に貢献するゲーム性”。采配のゆくえではこの2点がどう機能し、関ヶ原の戦いを盛り上げているのか。順に紹介していこう。
歴史を変えた1日を体感する
――慶長五年九月十五日早朝。美濃国の関ヶ原で天下の行く末を決める大一番が始まろうとしていた。西軍の大将は石田三成。対する東軍大将は、今や天下一の実力者となった徳川家康。三成は大名としては格下だが、豊臣家への忠誠心から強大な敵に立ち向かう。
だが、西軍側の武将は、何の思惑があるのか、どうも足並みがそろわない。不穏な空気が漂う中、戦端は開かれた……。
ゲームは全5話からなる構成で、関ヶ原の長い1日を描く。石田三成は、歴史上では潔癖な忠臣とも小ずるい悪人とも評価が分かれる人物だが、本作ではまっすぐでちょっとバカ、でも豊臣秀吉への忠義に厚い熱血青年という性格付けになっている。くじけそうになっても「あきらめるものか……もう一度だ!」と立ち上がり、「くそっ、俺がもっと雄弁だったら……」と悩む。どんな局面でも正面からぶつかろうとする三成に、素直に感情移入できる。
その三成を支える家臣が島左近。「だって、殿は正真正銘のバカなんですから」と豪快に笑いながら軽口を叩くツッコミ役だ。口は悪いが三成に対する忠誠心が端々から感じられる。理想家の三成に包容力のある左近という2人の主従関係は温かい。
その娘のたまきも魅力的だ。途中から三成のお守り役となり、説得がうまくいかなくても「大丈夫! 自信を持って! 殿は、間違ってないもの!」と明るく励ます元気なヒロイン役だ。三成のつまらないダジャレに、冷たく突っ込むたまき、そんなかけ合いは微笑ましい。だが、たまき自身も、父親にはよそよそしく何か悩みを抱えている様子。コミカルな面とシリアスな面、両方が描かれていて、キャラクターに深みを感じる。
そのほかの人物も見た目はマンガ的で非常に親しみやすい。金ぴかの南蛮鎧に王子様ルック、自信たっぷりで本当に鼻も高くなる宇喜多秀家。愛用のソロバンを頭に乗せてプンプンむくれるメタボ体型の小西行長、巨大な百合を何本もバックに背負った細川ガラシャ(背景の百合に突っ込むのはタブー!?)……。
しかし、ユニークに映る武将たちもそれぞれに強い想いを抱え、戦乱の世を生き抜こうとしている。関ヶ原の戦場は彼らの想いが絡み合う、混沌とした地だ。その意地を三成が説得してほどいていく。そうしたカタルシスは特に前半3章までに顕著で、“関ヶ原の戦いってこんなに魅力的だったっけ?”と再発見させてくれる。
見た目やコミカルな動き、派手な演出で敷居は低いが、キャラクターには一本芯が通っていて厚みがある。ほかの人物の視点からも同じシナリオを見てみたい、そう思わされる。
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