紙を写して3Dゲームをプレイ――Qualcommが提案する新しいARアプリUplinq 2010 Conference

「AR(拡張現実)アプリ」といえば、位置情報を検出して情報を取得するアプリが主流だが、Qualcommは異なるアプローチでARアプリのプラットフォームを開発している。この新しいARアプリは“目に見えるもの”を認識するのが特徴だ。

» 2010年07月02日 16時34分 公開
[田中聡,ITmedia]

 米Qualcommは7月1日(現地時間)、米国サンディエゴで開催された開発者向けイベント「Uplinq 2010 Conference」で、新たなAR(Argmented Reality、拡張現実)サービスを紹介し、デモを実施した。

photo Qualcomm CEO ポール・ジェイコブス氏

 これまでのARサービスは、「セカイカメラ」をはじめ、GPSやモーションセンサーなどを利用して端末の位置情報と方位を検出後、周囲の情報を閲覧し、タグなどを投稿できるアプリが定着している。位置情報を利用するARサービスが“現実の空間”に焦点を当てるのに対し、Qualcommが提案するARアプリは“目に見える特定のもの”に焦点を当てる。Qualcommは“vision-based”(視覚ベースの)ARと呼んでいる。

 Qualcommは2010年初頭にオーストリアに研究所を設立し、ARとその関連技術の開発を進めている。Qualcomm CEOのポール・ジェイコブス氏は6月30日(現地時間)の基調講演で、2010年秋に新しいARのプラットフォームとSDKを提供することを明かした。さらに、米UnityがAR技術を使った3Dゲームの拡張ツールを提供し、開発者が容易にARゲームを制作できる環境を整える。

 Uplinq 2010 Conferenceでは、QualcommのARプラットフォームと、Android端末向けUnityの拡張ツールを用いたゲームのデモが披露された。米MATTELが開発したゲームは、以前は玩具として発売されていたロボットのバトルゲームをAR化したもの。ゲームを遊ぶのに必要なのは、ARアプリをインストールした端末と、カメラで写し出す「紙」。この紙にはゲームの情報がインプットされており、カメラで写すとロボットのキャラクターが画面に現れ、リングの中でバトルが可能になる。カメラはオートフォーカスに対応している必要がある。また、Bluetoothで通信をすれば、2台の端末で対戦もできる。

photophoto ARを使わずに遊ぶ、かつての玩具(写真=左)。デモコーナーの床に敷かれていた紙。これに端末をかざしてゲームをプレイする(写真=右)
photophoto カメラでうまく読み取ると、2体のロボットが画面に現れる。操作をしたフルタッチ端末の画面には「バーチャルジョイスティック」と呼ばれる操作ボタンが現れ、タップするとキャラクターを移動させたり相手を攻撃したりできる
photo A4サイズ程度の紙も読み取れる

 なお、このMATTELのゲームはモーションセンサーには対応しておらず、端末を傾けてキャラクターを移動させるといったことはできない。これは「(端末を傾けることで)センサーがキャラクターを見失ってしまう恐れがあるため」(説明員)だという。

 「ゲーム情報は紙の数千ものポイントにインプットされている」(説明員)とのことだが、端末を引いたり、角度を変えたりする必要があるなど、スムーズに読み取るには少々コツが要る印象だった。読み込む紙の大きさには制限はなく、A4程度の用紙でもOK。紙を携帯していれば、場所を選ばずにARアプリを楽しめる。説明員は「ボードゲームやカードゲームの代わりになるのでは」と話していた。

 このほか、Unityの「PENELOPE」というデモゲームも紹介された。カメラでマップ(紙)を読み取るとキャラクターが画面に現れ、画面に触れると、マップの中にある仮想空間を自由に動ける。端末を紙から離したり近づけたりすると、マップのアングルが変わり、自分がマップ上のどこにいるのかを把握できる。

photophotophoto Unityがデモ用に開発したARゲーム「PENELOPE」。紙の地図をカメラで読み取ると、地図上の仮想空間に入れる

 7月2日(現地時間)に開催されたARの講演では、Qualcommがアプリ開発者向けのコンテスト「AR Developer Challenge」を開催することも発表された。開発者には、SDKが提供される今秋からアプリ開発を進めてもらい、2011年1月までにアプリを提出してもらう。受賞者は2011年2月14日に開催予定の「Mobile World Congress」で発表される。受賞者の賞金はFirst prizeが12万5000ドル、Second prizeが5万ドル、Third prizeが2万5000ドルとなっている。

 同社はゲームのほかに、メディアや広告、教育、ナビゲーション、ハウツーなどの分野にもARアプリの可能性は広がるとしている。

photophoto 開発者向けのARアプリコンテストを開催する(写真=左)。ARアプリはゲーム以外のさまざまなジャンルへ広がることが期待される(写真=右)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/24/news088.jpg ヤフオクで出品されていた「20万円の引退品」→開封すると…… “まさかの中身”に賛否 「ゾッとしたわ…」「しゃーない」
  2. /nl/articles/2412/25/news115.jpg 辻希美&杉浦太陽、家族6人でクリスマスに豪華料理 長女・希空が作った“プロ級のケーキ”も…… 「凄くいい時間だった」
  3. /nl/articles/2412/24/news092.jpg 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  4. /nl/articles/2412/24/news037.jpg 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  5. /nl/articles/2412/25/news152.jpg 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  6. /nl/articles/2412/23/news078.jpg そば屋の看板のはずが…… 雪で“別の店”みたいになってしまった光景が北海道の豪雪のすさまじさを物語る
  7. /nl/articles/2412/25/news009.jpg 若かりしころの父と母→36年後…… 苦楽をともにしてきた“現在の姿”に「泣いた」「本当に素敵」と1700万再生突破【海外】
  8. /nl/articles/2412/23/news025.jpg 幼少期から“ディズニー”大好きな2人→25年後…… まさかまさかの“現在”が話題 「映画のワンシーンのよう」
  9. /nl/articles/2412/25/news021.jpg 大型ワンコが猫に育てられた結果…… 驚きの行動連発に「自分を猫だと思っていないっw?」「かわいすぎる!」
  10. /nl/articles/2412/24/news156.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」される夫婦の苦悩……“年の差33歳差”カップルに反響【個性的なカップル特集2024】
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」