【JUNK METAL】
■初陣
ガレージから颯爽と進発した愛機は拠点と外界とを結ぶ第一階層を抜け,<ロンバガーノン亜針葉樹林>に踏み出した。
先ほどのPOFビルの端末で調べた限りでは,ここロンバガーノン,通称「ロンバ」はPOFの支配下にあるので,いきなり無限大公社の連中に袋叩きに遭うこともあるまいと読んでの事だ。
辺り一帯を覆う濃密なガスの向こうに,樹冠のシルエットがぼんやりと浮かぶ。慎重に前進すると,ほどなく散発的な銃声と爆発音が聞こえてきた。
いつでもゲートに後退できるよう身構えつつ,辺りの様子を伺うと……居た!そこかしこでグールとPOF陣営のジャンクが戦っている。戦うというより,ジャンクが一方的にグールを殲滅している,といった感じだ。ただしグールも倒す端から新たに出現する。
グールは概ね,地球上の生物に似ているようだ。巨大なハサミが印象的なカニや,長い両腕を振り回すサル。獲物を見定めるかのように上空を旋回飛行するのはワシだろうか?
眺めていても仕方がないので,手頃なのを見繕って攻撃してみよう。お,あの箱型のちっこいのは弱そうだぞ。 十分距離を取って照準し,発射トリガーを引いた。
バババババッと小気味良い銃声と共に,左腕のマシンガンがブロンズ・ウェイラー弾を速射した。ほぼ全弾が命中して派手に火花を散らすが,一撃では仕留められなかった。
グールは眼を真っ赤に光らせ,こちらに突進してくる。発射,発射!銃口が火を噴き,機関部が空薬莢を湯水のように弾き出す。
蜂の巣になったグールは,遂に自機の目前で力尽きて爆発した。記念すべき初戦果だ。
ジャンクを前進させ,残骸の上を通過する。と,ログメッセージが倒したグールの頭部を回収した事を告げた。よしよし,我ながら上手いもんじゃないか。この調子でバリバリ狩るぞ。
しばしの間,同じ種類のザコッぱちグールを鼻歌混じりに駆除する。
基本操作にも慣れ,すっかり気を良くしたオレは,もう少し上のランクも狙ってみようと考えた。今のは恐らく最下級のグールだろうから,回収したパーツも大した値は付くまい。
めぼしい獲物を求めて辺りを観察していると,単機でカニ型のグールと交戦中だったジャンクが,どうした訳か不意に戦闘を中止してゲートに駆け込んでいった。チャンスだ。あのカニは多少なりとも損傷しているはず。
据え膳食わぬは何とやら,このオレが引導を渡してやるぜ。幸いゲート付近に居る事だし,苦戦したら速度に任せて拠点内に逃げ込めばいい。無意識に舌なめずりをする。
背後から近づいてマシンガンをぶっ放した。カニはぐるりとこちらに向き直ると,予想以上の速さで接近して来た。こちらも後退しつつ切れ間なく銃弾を浴びせるが,沈む気配はない。
しかもカニの前進速度はこちらの後退速度を明らかに上回っており,双方の距離は見る間に縮められている。
自慢の鳥脚の弱点の一つが後退速度の遅さにあることを,オレは今更ながら思い出す。「む,マズいな,退却!」マシンガンを撃ち続けながら,背後のゲートに向けて機体を旋回させる……って遅いわっ!自慢の鳥脚の弱点のもう一つが旋回率の低さにあることを,オレは今更ながら痛いほど思い知らされた。
ガキュンッという空き缶を潰したような音と衝撃。モニターに赤い警告が灯る。ついに間合いを詰めたカニが,その巨大なハサミを叩き込んできた。自在に回転する上半身もろともハサミを横薙ぎにぶん回す,超ワイルドスイングだ。
リーチこそ短いが,まともに食らえば紙のような装甲の軽量機はひとたまりもない。おちつけおちつけおちつけってば!と自分に言い聞かせつつ,自機の損害をチェックする。脚部破損……脚部って,要するに脚ッスよね!?
ガァァンッ!あっさり停止した思考に追い討ちを掛けるように,ハサミが一閃する。警告のビープ音と共に,今度は背面のカーゴが破損。コアの耐久力ゲージも,もう数ミリを残すのみである。
こうなったらオレもジャンク乗りの端くれ。斃れるまでに一発でも多くぶち込んでやるぜ!と思う頃には,自機は旋回を半分ほど終えたところ,つまりカニにもゲートにも真横を向いた状態だった。
脚に重大な損傷を受け,ヨチヨチ歩きを余儀なくされた機体に残された選択肢は,そう多くはない。無慈悲な連続攻撃で愛機はあっけなく大破。モニターをノイズが満たし,オレの意識も急速に遠のいていった……。
その後,業者の手による機体回収(「リトリート」と呼ばれる)を手配し,ジャンクの修理と再補給を済ませたオレは(新米ジャンク乗りへの救済措置として,レベル3までは修理とエネルギー補給のサービスは無償で提供されるのがありがたい),回収したグールのパーツをショップに持ち込んだ。この地で手にした,初の稼ぎである。
ついでにパーツと武器の価格をチェックするが……道のりはまだまだ遠そうだな。
今回の戦いで得た貴重な戦訓は,
1.愛機の癖を熟知すべし
そして, 2.調子こくな
の,ふたつに尽きる。ええ,基礎中の基礎だってことは解ってますってば。 次のページへ
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