戦っているのは“ユーザーの無関心”――岩田社長と宮本専務との一問一答(3/3 ページ)
「Wii Preview」開催終了後、任天堂の岩田聡社長、宮本茂専務との質問会が開かれた。岩田社長は「戦っているのはライバルメーカーではなくユーザーの無関心。ゲーム人口をいかに増やすかが課題」と語った。
ユーザーに充実感のあるインタラクティブな遊びを提供できるかが重要
――ニンテンドーDSとWiiが合わさって、今後は情報通信端末へ進化していくような印象を受けたのだが。またオンラインゲームとは競合しないのか。
岩田 確かに今日の発表で、我々が何をしたいのかということを伝えたことを切り捨てて“機能”だけの1面を切り出すと、任天堂は情報通信端末を作りに来たように見えるだろう。ただ、我々はどうしたらゲームをプレイしてもらえるかを考えてきただけだ。ビデオゲームという、これまで積み重ねられてきた、人間がコンピュータに何かを入れると、コンピュータから何らかの反応が返ってくるのがおもしろい、という存在。その中で、ハードとソフトを一体にして作って、世界一おもしろいものを作ることができる会社でありたいと思っているのが任天堂だ。これを実現するために、どうしたらゲームに興味を持ってくれるだろう、どうしたらこのリモコンに毎日触ってくれるのかを考えたときに、「ニュースチャンネル」や「お天気チャンネル」といった“触るきっかけ”が有効に働くのではないか、ということだ。
このため、ニンテンドーDSとWiiを混然一体として、情報通信端末にする野望は持っていない。我々が作った、さまざまなインタラクティブなエンタテインメントで楽しんでくれる人が1人でも増えてきたら我々はしあわせだ、ということ。目的がゴールに近づいたことになる。
なおオンラインゲームが競合になるのではという質問についてだが、あらゆる娯楽はコンペティターである。おもしろいTVも、映画のDVDも、小説も音楽も、有限であるユーザーの興味と時間を取り合っている。そこは競争だが、一方で通常のビジネスと違い、相手をたたいても自分が大きくなるものではない。娯楽は飽きたらおしまいなので、自分たちにしかない娯楽、飽きられる前にもっとおもしろい娯楽を考えて次を提案し、興味を持つユーザーが増えることが大事。オンラインゲームで感じるおもしろさ以上に、手軽でおもしろくて、何か充実感のあるインタラクティブな遊びを我々が提案できるかにかかっていると思う。
――サードパーティが「Wiiチャンネル」を使うときの仕様や、チャンネルを追加するときの手続きはどのようになっているのか。
岩田 いわゆる“勝手サイト”としてチャンネルを作るのは不可能だ。「Wiiチャンネル」については、我々のライセンス契約に基づき、使ってもらうことになる。プログラムサイズやインフラにかかる負荷などで制限を設けなければならないので、ガイドラインを決めて進めていくが、それに沿わないものについては目的や規模、ターゲットユーザーなどを吟味して話し合って決めていくつもりだ。
――プロセッサの詳細について教えてほしい。
岩田 これまでのゲーム業界の進歩方向は、ハイパワー・ハイパフォーマンスだった。電気を消費しても、熱が出てもいいからハイパフォーマンスなものを作ろうということだ。一方ニンテンドーDSのような携帯ゲーム機は何を目指しているかというと、ローパワー・ローパフォーマンス。ローパワー・ハイパフォーマンスはかなり難しいのだが、Wiiの場合は、そこを目指したら何ができるかと考えてきたのが1つの特徴になっている。我々はどんなに電気を消費してもいいから強力であるという方向よりも、静かであったり、24時間インターネットにつながるといった特徴の方が、最終的には我々が目指すゲーム人口拡大に寄与できるのではないかと考えたので、その方向に振ったわけだ。
一方で、ゲームキューブとの互換性を持たなければいけないので、当然アーキテクチャ的には、そこから劇的に離れることはできない。互換性を持ちながら、いまの技術を使ってローパワー・ハイパフォーマンスを目指したのがWii。
また、パフォーマンス上の数字を言うつもりはない。というのは、パワーゲームをしているのなら「うちの車は何馬力です」と言えばいいが、そうではないので、数字を出してもユーザーにアピールするとは考えていないからだ。
リンクの利き手はゲームキューブ版とWii版では逆
――Wiiのユーザー向け体験会の予定について教えてほしい。あとなぜリンクは右利きになったのか(笑)
岩田 11月に名古屋、大阪、東京の3カ所で行う(関連記事参照)。特に入場料など必要なく、一般のユーザーに体験してもらえるような場所を設けることにしている。
宮本 リンクは左利きということがこんなところで影響してくるとは思っていなかったのだが……。最初、リンクが剣を振るのだったら、右手に持つWiiリモコンを振り回すことを想定していたが、実際にプレイすると結構疲れた。このためボタンでプレイするように設定したのだが(※このためE3 2006版は左利き)、プレイしてみるとやっぱりWiiリモコンを使った方が気持ちいい。右と左の両方を試してみたが、ほとんどの人は右で振る。わたしは左利きなので左手で練習したのだが、そうであっても長年染みついたクセなのか、やはり右で使う。このため、リンクは本当は左利きなのだが、プレイ感をより感じてもらうために右にした。
なおゲームキューブ版は左利き。業界的には「ミラーモード」というのだが、これで遊ぶと同じダンジョンでもおもしろいので、ゲームキューブ版も買ってください(笑)。
――欧米などでも年末商戦に間に合う時期に投入されるのか。また各地域での投入台数は。
岩田 すべての地域で年末商戦のピークに間に合うよう発売したいと思っている。12月31日に発売して「公約を守った」といってもしょうがない。400万台、600万台の内訳は、今日現在話せる数字はない。アメリカはマーケットが大きいので相対的に数量は大きくなるので大きいだろうということはあるが、どの地域に何台出荷するという数字は、現時点では言えない。
――Wiiのプロモーション戦略について、詳細を教えてほしい。
岩田 これまでゲームに興味を持っていない人に届くようにするためには何をしなければならないのか、という問題はあると思う。まず我々は、一番最初にWiiへ興味を持ってくれるのはやはり、ゲームに愛情を持ち、興味がある人だろう。いきなり最初から「ゲームに興味がなかったがWiiってすごいね」と言ってくれることはまずない。そう言ってくれる人は、年内に売れる台数の中で1〜5%だと思う。
でも実際にまずWiiを買ってくれる、ゲームが好きである人の家庭の中でも、ゲームで遊ぶ人と遊ばない人がいるというのがリアリティのある話だ。まずその家の中でゲーム人口の拡大が起きるというのはあり得る。そこでできあがった新しいユーザー、たとえば、いままでゲームをプレイしなかった奥さんがリモコンを触って天気予報を見るようになったとか、ここが次のステップとなって広がっていくと思っている。
このような現象が段階を追って進んでいくものだと考えているので、最初から湯水のように広告をすればすべてが解決するとは思わない。ただ、プロモーションはユーザーに驚いてもらうからこそ意味があるので、何カ月も前から詳細を発表することはできない。段階を置いてプロモーションしていくが、物量を多くすればいいというものではないと思っている。
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