「プレイステーション」はハードからブランドへ――アンドリュー・ハウス社長兼CEOが語る「プレイステーション」の未来:社長交代でプレイステーションはどう変わる?
9月1日より新たにSCEの代表取締役兼グループCEOに就任した、アンドリュー・ハウス氏によるラウンドテーブルが開催された。そこで語られた、プレイステーションの未来像とは。
PS Vitaの予約は好調、海外展開にも手応え
PlayStation Vitaの勝算は? プレイステーション 4の開発は? ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の代表取締役兼グループCEO、アンドリュー・ハウス氏が12月15日、複数媒体を招いたラウンドテーブルを開催し記者らの質問に答えた。
真っ先に聞かれたのは、現行のプレイステーション 3に代わる次世代ハードの話題。しかしハウス氏はこれについて「みなさん予想されている通り、現時点では何もコメントはできません(笑)」と即答。PS3は今がまさに収穫期であり、もっともすばらしいゲームを提供できる段階になったばかり――とハウス氏は分析する。「プレイステーション 2は10年間生き残った。プレイステーション 3ではそれを超えるようなライフサイクルに期待したい」(ハウス氏)
17日に発売を控えたPlayStation Vitaについては、「予約販売も大変好調」と手応えを強調した。現状、海外市場では携帯機よりも据え置き機が主流となっていることについて聞かれると、ブラックフライデーにおける3DSの好調に触れつつ、「まだどんな国でも、ゲーム専用機のライフサイクルはある」と回答。
加えて海外で据え置き機が好調な背景のひとつに、「ネット対戦が当たり前のものになりつつある」点を挙げ、PS Vitaの強みであるネットワーク機能、ソーシャル機能は、北米やヨーロッパのユーザーにとっても大きな魅力になると考えを述べた。「ここ数年、ゲーム機のネットワーク化が大きく進み、十分なネットワーク機能を持った(モバイル)デバイスが必要になってきている。Vitaはそれに耐えうるものになる」とハウス氏。なお、Vitaの当面の販売目標数についても聞かれたが、こちらは「今の段階で具体的な数字は公表していない」とのこと。
また質問の中で多かったのは、ソーシャルゲームやスマートフォンといった新興市場との棲み分けについて。現状、日本ではモバゲーやグリー、海外ではFacebookなどが「ハードを持たないプラットフォーム」として大きな勢力を築きつつあり、今までのようにゲーム専用機をプラットフォームとして展開していくモデルは今後厳しくなっていくのではとの声もある。実際、SCEも「PlayStation Suite」という形で「ハードを持たないプラットフォーム」を打ち出しているが、このあたりについてハウス氏はどのように考えているのだろうか。
「PS Suiteのターゲットは、はじめてゲームに触る人たち。PS Suiteの魅力はマルチデバイス、クロスデバイスの部分にあり、開発者にとっては(専用機に比べて)アッという間に幅広いユーザーにアクセスできるというメリットがある。しかしどうしても、より奥深いゲーム体験という部分には限界があり、そこで並行して(PS Vitaのような専用機で)最先端のすばらしいインタフェースや技術を盛り込んだ体験を提供していく。PS Suiteを入り口にして、専用のデバイスでより良いゲーム体験を味わってもらうことで、徐々にその面白さを理解してもらうというのが理想」(ハウス氏)
ソーシャルゲームや他のスマートフォンとの棲み分けについてはどうか。ソーシャルゲームやスマートフォン市場の隆盛について危機感を抱いているか、との質問に対しては、「危機感というよりは、パッケージ購入やネット配信など、コンテンツによってふさわしいビジネスモデルがある、というのが私の認識です。モバゲーやグリーなどのユーザーについては現状、私たちのプラットフォームがリーチしていないユーザーベースであり、競合性はないものと考えています」と答えた。
もちろん、「ハードにまったくこだわらないわけではない」とハウス氏は強調する。ゲーム専用機から完全に脱却することは、自社が持っているOSやプラットフォームの魅力を失ってしまう可能性がある。PS Suiteは入り口であり、その入り口を進めば自然にゲーム専用機という道へとつながっていく。PS Suiteに力を入れていくからといって、今後ゲーム専用機から脱却していくということはなく、あくまで「両輪で進めていく」というのが当面の方針のようだ。
しかし、従来のような「プレイステーション=特定のゲーム機を指す言葉」という考えが、今後ゆるやかに変化していくことは間違いないだろう。「大事なのは(プレイステーションという)ブランド。今までプレイステーションというブランドはハードと結びついていましたが、これからはハードだけでなく体験、遊び方、楽しみ方に結びついたものになっていく。だからこそ社内でももう一度定義しなおす必要がある」というハウス氏の発言からは、少なからず、ゲーム専用機へのこだわりから離れつつあるニュアンスが感じられた。
最後に、今後どのようにSCEを変えていきたいか、と問われると、ハウス氏は「大きく2点あります」と答えた。1つは、これまで(SCEAやSCEEといった)各地域に任せていた、マーケティングやゲーム会社とのコミュニケーションを、SCE本社がより密接にグローバルに管理していくこと。そしてもう1つ、自身がマーケティング部門出身であることを踏まえ、「今一度プレイステーションというブランドがどんなものなのか再確認し、定義しなおしていきたい」とハウス氏。またハウス氏と言えば、2005年にはソニーのCMO(Chief Marketing Officer)にも就任しており、ソニーグループのブランド展開を一手に引き受けてきた実績も持つ。その実績も活かし、今後は親会社であるソニーとの連携を、SCE側からより積極的に提案していきたいとも語った。
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