第21回:ゲームは耳でも楽しめる! 効果音による快感演出のマジック:なぜ、人はゲームにハマルのか?(1/3 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の21回目は、ビデオゲーム独特の効果音に焦点を当ててみました。
人はなぜゲームにハマルるのかを、プレイ動画や画面写真を見ながら楽しくかつまじめに考える当コラム。今回のテーマは音、その中でもビデオゲーム独特の効果音にフォーカスを当ててお送りしたいと思います。
物が壊れたときの爆発音、ボーナス得点の計算中に数字が動く音、あるいはアーケードゲームでコインを入れたときに鳴るクレジット音など、プレイヤーにさまざまな情報を知らせてくれる役割を果たすのが効果音。プレイ中にずっと流れ続けるBGMとは違って、ほんの一瞬しか鳴らない効果音にははたしてどんな意味があるのでしょうか? その音色や鳴らす理由などをいざ調べてみると、なかなかどうして奥が深いもののようです。
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」バックナンバー
- 第20回:プレイヤー同士でいざ勝負! 対戦プレイはなぜ面白いのか?
- 第19回:仲間といっしょに遊べば楽しさ倍増! 同時プレイはなぜ面白いのか?
- 第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2
- 第17回:これ以上ないプレイヤーへのご褒美!? 極上の快感を与えてくれるエクステンドの演出
- 第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫
- 第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け
- 第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛け
- 第13回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ(つづき)
- 第12回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ
- 第11回:開発者VSプレイヤーの知恵比べ? あの手この手で編み出されたボーナス得点システムの数々
- 第10回:スコアアップ&劣勢挽回のチャンス! ゲームがますます楽しくなるボーナスステージ
- 第9回:テクニック・イズ・スコア! プレイヤーに「ゲームがもっとうまくなりたい!」と思わず夢中にさせてしまう得点アップの仕組み
- 第8回:ステージクリアの快感をさらに高める、ボーナス得点のアイデアいろいろ
- 第7回:ハイスコア更新は常に命がけ! 「ボーナス獲得=ハイリスク」の法則
- 第6回:ハラハラドキドキ感を演出するゲームサウンドの魅力
- 第5回:ゲームをより面白くする「4ステージ1セットの法則」
- 第4回:ピンチの後にはチャンスあり! プレイヤーへの爽快感を高める「逆転の法則」
- 第3回:「なぜ、ゲームではステージ数の表示方法にこだわるのか?」
- 第2回:「なぜプレイヤーは“ハイスコア”に夢中になるのか?」
- 第1回:「なぜ、プレイヤーはマニュアルを読まなくてもゲームを遊べるのか?」
ドレミファソラシドの音だけでプレイヤーがゲームのトリコに!
みなさんもハーモニカやリコーダーなどの楽器を、学校の授業で初めて習ったときはドレミファソラシドの1オクターブ分の出し方をまず覚えようと繰り返し練習したことでしょう。最初は単音でしか演奏できなかったのに、途中で失敗することなく1オクターブを連続して鳴らせるようになるととても嬉しくなりますよね。
今からちょうど30年前、筆者はこれとまったく同じ感動をゲームでも体験しました。そのタイトルは、過去の当コラムでも何度か取り上げている1982年にユニバーサルが発売したアーケード用アクションゲームの「Mr.Do!」。本作はステージのあちこちに得点アイテムのチェリーが8個ずつ配置されていて、これを1個取るごとに50点ずつ加算され、さらにノンストップで8個連続で取るとボーナスとして500点が追加されます。ただし途中で動きを止めたり、誤って違う方向に歩いた後に再度チェリーを取り始めた場合はボーナスが入りません。
以下の動画をご覧になれば明らかなように、チェリーを連続で取るとドレミファソラシドのちょうど1オクターブ分の効果音(※)が鳴るようになっています。このため、ゲーム中に効果音の法則に気づいたプレイヤーは、ついつい乗せられてボーナスの獲得にチャレンジしたくなってしまうのです。ボーナスを得るための条件に“ノンストップで”という制約があるのもこれまたミソで、途中で失敗した場合はまた“ド”の音からやり直しになってしまいますから、楽器の運指の練習をしているのと同じような楽しさがあると言えるでしょう。
特定のアクションを成功させると1オクターブの音階が鳴るというこのアイデアですが、最近もどこかで見たような記憶はみなさんありませんか? その答えは、2009年に登場した「NewスーパーマリオブラザーズWii」。本作のワールド7-5では、敵のパタメットの背中に途中で地面に着地することなく8回連続で飛び乗ると、上空からご褒美として1UPキノコが落ちてくるようになっています。ただし同じ敵に繰り返し乗った場合はダメで、1UPを狙うためには異なる8匹の背中に飛び移るテクニックが必要です。
あくまで筆者の体感ですが、このステージは足場がまったくない場所が多く、パタメットの背中を飛び移りながら先へ進まなくてはいけないので全ステージ中でも難関の部類に入ります。しかし、上記のような連続踏みで1UPキノコが出るお遊び的な演出を盛り込むことで、難しい場面でもついつい夢中になって遊んでしまう効果があるのです。もし途中でミスをしても、1UPキノコを1個でも取っていればマリオのストックは差し引きゼロになりますから、プレイヤーの受けるストレスを大幅に軽減するメリットもありますよね!
また、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が1987年に発売したいわゆるブロック崩し型のアーケードゲームである「クエスター」は、ボールを当てたブロックの色や種類によって決まった音が鳴る仕掛けがあります。ブロックの並び順がドレミファソラシドの順番どおりにはなっていないのですが、連続でブロックを消すとまるで楽器をイタズラして遊んでるかのような楽しい気分にさせてくれます。
それにしても、30年も昔から存在した単純明快なアイデアが今なお我々を楽しませてくれるというのは、もはや驚異的であると思うのは筆者だけでしょうか?
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