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» 2015年02月09日 11時31分 公開

花粉症から"リモートワーク"で逃げる――エンジニアに最大限の自由を「spice life」の働き方うらやましすぎ?

花粉症の社員の一言がきっかけで、遠隔地からでも自由に働ける制度を作ってしまった会社がある。

[杉本吏,ITmedia]

 「花粉症のない沖縄で働きたい……」とある社員のそんな一言をきっかけに、時期も場所も制限しない働き方を始めた会社がある。渋谷にオフィスを構える「spice life」(スパイスライフ)で話を聞いてきた。

spice lifeの吉川保男 代表取締役社長(左)と、五十嵐邦明 開発部部長(右)。花粉症に悩まされる五十嵐さんの一言から新制度が誕生した

「花粉症のせいで、まったく仕事にならない日がある」

 spice lifeは、オリジナルのTシャツを作成できる「tmix」や、ソーシャルギフトサービス「SPOTLIGHTS」などを運営するWebサービス企業。現在の社員は20名で、そのうち約3分の1がエンジニアだ。中でも開発部で部長を務める五十嵐邦明さんは、毎年この季節になると憂うつになるある悩みを抱えていた。

 「子供の頃からひどい花粉症で。一時期北海道に住んでいた頃には問題なかったのですが、20代で東京に越してきてからは毎年つらい思いをしていました」(五十嵐さん)

 涙やくしゃみといった症状はもちろんのこと、何よりつらかったのが眠るときだ。鼻が詰まって呼吸ができず、口を空けて寝るとのどは腫れて眠りも浅くなった。空気清浄機を使ったり専門薬を服用してみたりもしたが、根本的な解決には至らなかった。

 「シーズンのうちの何日かは、(あまりの症状のつらさに)まったく仕事にならない日がある」という五十嵐さんが、同社社長の吉川保男さんの前でふと漏らしたワードが「花粉疎開」。花粉症がひどくなる時期にだけ、北海道や沖縄などスギの木が植生していない地域に避難して過ごす行為のことだ。自身は花粉症ではない吉川社長だが、五十嵐さんの事態の深刻さを目の当たりにして、翌シーズンから花粉疎開制度(仮)を導入することに決めた。

 「単純になんとかしてあげたいと思ったし、花粉症のシーズンは1〜4月の4か月間。1年のうち3分の1の期間でエンジニアのパフォーマンスが落ちちゃったら、とんでもない損失ですよね」(吉川社長)

まずは沖縄に2週間、その次は台湾

 こうして制度の検討が始まったが、社内で話し合うにつれて「別に花粉症に限定する必要はないんじゃないかと思い始めた」(吉川社長)。「ほかの社員にとっては不公平感もあるだろうし、場合によっては『花粉症の人、いいな……』みたいな勘違いがあると本末転倒ですし」

 その結果誕生したのが、時期にも場所にも制限を設けず、遠隔地から自由に働ける新制度「リモートライフ」だ。対象は全社員。<業務に必要と会社が認めた場合>というただし書きは付くものの、「社員には常に最高のパフォーマンスを発揮できる環境で働いてほしい」という吉川社長のもと、制度の利用を検討している社員は多い。交通費や滞在先での宿泊費などについては、会社から上限10万円で補助金が出る。

 制度利用の第1号となる五十嵐さんは、2月半ばからまずは2週間、沖縄に滞在して働く予定だ。宿泊先は、旅行者と現地の空き部屋をマッチングするWebサービス「Airbnb」で決めた。続いて3月からは台湾にも2週間滞在し、やはり現地からリモートで業務をする。

 リモート勤務で働く場所は「基本的には自由」としながらも、「できればこうしてほしい、というのはある」と吉川社長。「せっかく会社の経費で行くわけですから、できれば行ったことがないところに行ってみてほしい。普段とは違うプラスアルファの環境を体験して、その中で生活して、仕事も成果を出して。チャレンジすれば仕事も、それ以外でも視野が広がる」

エンジニアのためにできる限りのことを

 遠隔地からの仕事環境には、Web上で共有プロジェクトのバージョン管理などが行える「GitHub」や、複数人での開発環境を想定したグループチャット「idobata」を利用する。ビデオ会議に「Google+ ハングアウト」を使うこともある。普段から自宅作業を認めており、首都圏外に住む社員もいる同社にとって、こうした働き方は自然なものだという。「もちろん対面で顔を合わせることで成り立つ業務もあるので、リモートだけで進められるわけじゃないですけど」(五十嵐さん)

 このほかにも、「好きなオフィスチェアを購入できる」「技術書の購入や勉強会に補助金が出る」「自社サービスでTシャツ作り放題」など、同社にはエンジニアにとって働きやすい環境を整えるためのさまざまな制度がある。五十嵐さんもオカムラの高級チェア「バロン」を愛用中だ。「Webサービス事業を運営している以上、エンジニアにとって魅力のある職場でなければ人は集まらないし、そのためならできる限りのことをやる」(吉川社長)。

五十嵐さん愛用のバロンチェア
技術書も自由に購入できる

自由な働き方ができないのは業種のせい? 企業規模のせい?

 こうした制度を見て「うらやましいけどうちの会社ではムリ」「そりゃ、業種によってはそういうこともできるだろうけど……」と考える人も多いかもしれない。当然、業種によって勤務形態は大きく異なるし、組織の規模や人事制度によっては社員個々へのマネジメントが立ち行かなくなる可能性もある。しかし、満足度の高い働き方ができない原因は、業種や職種、企業規模による理由がすべてと言えるのだろうか。

 「有給休暇ひとつとっても取りづらい会社がある。本来は誰でも取れる、取っていいはずなのに、『自分が有給取ったらみんな困るかな』って自主規制しちゃう、自粛しちゃうケースがある」(吉川社長)。「うちの場合は、今いるメンバーなら(リモート勤務でも)ある程度自分の責任で、ルーズにならずにやってくれる、という信頼関係があるからできている。できているなら自由な方がいいでしょ、というのが基本的な考え方」


 最後に吉川社長に質問してみた。やっぱり、“社長業”でもどこか遠い場所から仕事してみたいものですか?

 「そうですねー、僕もどこか……行きたいね(笑)。行けるかなあ……」「だから、社長でも行けるように周りが準備する、ってことですよね」。隣の五十嵐さんがさらりと答えてくれた。

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