花粉症から"リモートワーク"で逃げる――エンジニアに最大限の自由を「spice life」の働き方:うらやましすぎ?
花粉症の社員の一言がきっかけで、遠隔地からでも自由に働ける制度を作ってしまった会社がある。
「花粉症のない沖縄で働きたい……」とある社員のそんな一言をきっかけに、時期も場所も制限しない働き方を始めた会社がある。渋谷にオフィスを構える「spice life」(スパイスライフ)で話を聞いてきた。
「花粉症のせいで、まったく仕事にならない日がある」
spice lifeは、オリジナルのTシャツを作成できる「tmix」や、ソーシャルギフトサービス「SPOTLIGHTS」などを運営するWebサービス企業。現在の社員は20名で、そのうち約3分の1がエンジニアだ。中でも開発部で部長を務める五十嵐邦明さんは、毎年この季節になると憂うつになるある悩みを抱えていた。
「子供の頃からひどい花粉症で。一時期北海道に住んでいた頃には問題なかったのですが、20代で東京に越してきてからは毎年つらい思いをしていました」(五十嵐さん)
涙やくしゃみといった症状はもちろんのこと、何よりつらかったのが眠るときだ。鼻が詰まって呼吸ができず、口を空けて寝るとのどは腫れて眠りも浅くなった。空気清浄機を使ったり専門薬を服用してみたりもしたが、根本的な解決には至らなかった。
「シーズンのうちの何日かは、(あまりの症状のつらさに)まったく仕事にならない日がある」という五十嵐さんが、同社社長の吉川保男さんの前でふと漏らしたワードが「花粉疎開」。花粉症がひどくなる時期にだけ、北海道や沖縄などスギの木が植生していない地域に避難して過ごす行為のことだ。自身は花粉症ではない吉川社長だが、五十嵐さんの事態の深刻さを目の当たりにして、翌シーズンから花粉疎開制度(仮)を導入することに決めた。
「単純になんとかしてあげたいと思ったし、花粉症のシーズンは1〜4月の4か月間。1年のうち3分の1の期間でエンジニアのパフォーマンスが落ちちゃったら、とんでもない損失ですよね」(吉川社長)
まずは沖縄に2週間、その次は台湾
こうして制度の検討が始まったが、社内で話し合うにつれて「別に花粉症に限定する必要はないんじゃないかと思い始めた」(吉川社長)。「ほかの社員にとっては不公平感もあるだろうし、場合によっては『花粉症の人、いいな……』みたいな勘違いがあると本末転倒ですし」
その結果誕生したのが、時期にも場所にも制限を設けず、遠隔地から自由に働ける新制度「リモートライフ」だ。対象は全社員。<業務に必要と会社が認めた場合>というただし書きは付くものの、「社員には常に最高のパフォーマンスを発揮できる環境で働いてほしい」という吉川社長のもと、制度の利用を検討している社員は多い。交通費や滞在先での宿泊費などについては、会社から上限10万円で補助金が出る。
制度利用の第1号となる五十嵐さんは、2月半ばからまずは2週間、沖縄に滞在して働く予定だ。宿泊先は、旅行者と現地の空き部屋をマッチングするWebサービス「Airbnb」で決めた。続いて3月からは台湾にも2週間滞在し、やはり現地からリモートで業務をする。
リモート勤務で働く場所は「基本的には自由」としながらも、「できればこうしてほしい、というのはある」と吉川社長。「せっかく会社の経費で行くわけですから、できれば行ったことがないところに行ってみてほしい。普段とは違うプラスアルファの環境を体験して、その中で生活して、仕事も成果を出して。チャレンジすれば仕事も、それ以外でも視野が広がる」
エンジニアのためにできる限りのことを
遠隔地からの仕事環境には、Web上で共有プロジェクトのバージョン管理などが行える「GitHub」や、複数人での開発環境を想定したグループチャット「idobata」を利用する。ビデオ会議に「Google+ ハングアウト」を使うこともある。普段から自宅作業を認めており、首都圏外に住む社員もいる同社にとって、こうした働き方は自然なものだという。「もちろん対面で顔を合わせることで成り立つ業務もあるので、リモートだけで進められるわけじゃないですけど」(五十嵐さん)
このほかにも、「好きなオフィスチェアを購入できる」「技術書の購入や勉強会に補助金が出る」「自社サービスでTシャツ作り放題」など、同社にはエンジニアにとって働きやすい環境を整えるためのさまざまな制度がある。五十嵐さんもオカムラの高級チェア「バロン」を愛用中だ。「Webサービス事業を運営している以上、エンジニアにとって魅力のある職場でなければ人は集まらないし、そのためならできる限りのことをやる」(吉川社長)。
自由な働き方ができないのは業種のせい? 企業規模のせい?
こうした制度を見て「うらやましいけどうちの会社ではムリ」「そりゃ、業種によってはそういうこともできるだろうけど……」と考える人も多いかもしれない。当然、業種によって勤務形態は大きく異なるし、組織の規模や人事制度によっては社員個々へのマネジメントが立ち行かなくなる可能性もある。しかし、満足度の高い働き方ができない原因は、業種や職種、企業規模による理由がすべてと言えるのだろうか。
「有給休暇ひとつとっても取りづらい会社がある。本来は誰でも取れる、取っていいはずなのに、『自分が有給取ったらみんな困るかな』って自主規制しちゃう、自粛しちゃうケースがある」(吉川社長)。「うちの場合は、今いるメンバーなら(リモート勤務でも)ある程度自分の責任で、ルーズにならずにやってくれる、という信頼関係があるからできている。できているなら自由な方がいいでしょ、というのが基本的な考え方」
最後に吉川社長に質問してみた。やっぱり、“社長業”でもどこか遠い場所から仕事してみたいものですか?
「そうですねー、僕もどこか……行きたいね(笑)。行けるかなあ……」「だから、社長でも行けるように周りが準備する、ってことですよね」。隣の五十嵐さんがさらりと答えてくれた。
関連記事
- 1000台の「ポールンロボ」が監視する花粉最前線
花粉症の人にはつらい季節がやってきました。花粉の飛散状況を詳細にリポートしてくれるウェザーニュースの「花粉Ch.」をご存じですか。全国に1000個のセンサーを設置して、飛散状況をモニターしていて、花粉の現状や予報を確認できます。 - スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」で知る花粉情報
そろそろ花粉が飛び始める季節です。今年の花粉は、全国平均でも前年比1.5倍、飛散量が多い関東から当会では、前年比で2〜3倍の花粉が飛ぶと予想されています。ウェザーニュースタッチは、花粉症の人必携のスマホアプリです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
天皇皇后両陛下と愛子さま、“仲むつまじいショット” 女性皇族「ティアラ」にも注目…… 80万いいね
-
目からウロコな“ビニール袋のたたみ方”が100万再生 超便利な“裏技”に「こっちの方が絶対いい」
-
「目がバグる」 どこからどう見ても“平面”にしか見えない千葉のビルが話題 投稿者にその後を聞いた
-
“100歳おばあちゃん”の朝食作りに密着したら……驚きの姿と「最高の朝食」に大反響 2024年ねとらぼで読まれた【レシピ記事トップ5】を紹介
-
「WEST.」、メンバー結婚発表から“YouTube登録者2万人減” 目標の100万人を突破したばかりだった
-
サバの腹に「アニサキス発見ライト」を当てたら……? 衝撃の結果に「ゾワっとした」「泣きそう」と悲鳴 その後の展開を聞いた
-
幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
-
「昔はモテた」と話す母→全然信じていない息子だったが…… 当時の“異彩を放つ姿”に驚き「わぁ!」「とても魅力的」【海外】
-
白髪でやる気がわかなくなった女性、“白髪手術“したら…… “二度見必至な若返り”に「ビックリ」「凄い変わり様」
-
「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」→こだわり満載の完成品に「すごすぎて意味わからない」と大反響 2024年に読まれたハンドメイド記事トップ5
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
- 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
- 「麻央さんにそっくり……」 市川團十郎の11歳息子・勸玄の成長ぶりに驚きの声 「大きくなってる!」「すでに貫禄がある」
- チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
- 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
- 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
- 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
- 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
- 「デコピンを抱き寄せたのはもしかして」 妻・真美子さん第1子妊娠発表で大谷翔平の発言と行動に再注目 「“もう帰る?”は気遣っていたのかも」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」