Apple Watch開発のために作られた秘密施設とは
Apple Watchのフィットネス技術の開発をリードしたジェイ・ブラーニク氏の来日に合わせ、6月1日にアップルストア表参道で開催されたトークライブで、Appleが用意した秘密施設の様子が披露されました。
6月1日にアップルストア表参道で「林信行に聞く:ヘルス、フィットネス、テクノロジー」というイベントが開催されました。このイベントは、Apple Watchのフィットネス技術の開発をリードしたジェイ・ブラーニク(Jay Blahnik)氏の来日に合わせたスペシャルトークライブで、実はApple製品に造詣が深いジャーナリストの林信行氏が、Apple WatchやiPhoneのヘルスケア機能について話すのに加えて、ブラーニク氏から、Appleが考えるヘルスケアやフィットネスについて話が聞けるというまたとない機会でした。
ジェイ・ブラーニク氏とは?
ブラーニク氏といえば、Apple Watchのビデオガイド「健康とフィットネス」編の冒頭にも登場する、Appleにおける健康・フィットネス分野のキーパーソンです(肩書はDirector of Fitness, Health Technologies)。Appleに入社する前は、Nikeの「Nike+ Running」や「Nike+ FuelBand」などの開発などにも携わっていた、フィットネス業界では名の知れたトレーナーで、この2年ほどは、ずっとApple Watchの開発に関わっていたとのこと。
今回の来日は、5月末から6月上旬にかけ、オーストラリアや日本、中国などのアップルストアで行われるトークイベントに登壇する、いわばアジアパシフィックツアーの途上でした。同氏はこれまでにも、世界各地のアップルストアで、Apple Watchと健康・フィットネスに関するイベントに登壇しています。オーストラリアでは、アップルストアシドニーで、パーソナルトレーナーのミッシェル・ブリッジス(Michelle Bridges)さんと、英国ではアップルストアロンドンで、Apple Watchの発表イベントにも登場したクリスティ・ターリントン・バーンズ(Christy Turlington Burns)さんとの対談が開催されました。
Appleの秘密の施設で行われていたこと
イベントのトークセッションは、Apple Watchの魅力や、林氏が見た未来のApple Watchの可能性などの話が中心でしたが、林氏が聞き出した「Appleの秘密の施設」の話が興味深かったので紹介します。
米国のABC Newsが3月20日に、Appleが、Apple Watchのフィットネス機能を開発する際の基礎的なデータを取得するために作ったとされる秘密施設の映像を放映しました。日本でもニュースサイトがその様子を報道していたので覚えている方もいるかもしれません。林氏はその時の映像に触れ、もう少しその秘密の施設について、話を聞かせてほしいと質問したところ、ブラーニク氏が笑いながら話したのが次のような内容でした。
「それは秘密です」(笑)
Appleが、秘密にしていた施設を世界に披露するというのは、Appleらしからぬというか、今までなかったことです。それをご覧になったことがあるというのはとてもうれしいことです。
私たちのiOS製品は、おそらく世界の中でも最もポピュラーな(人気の)スポーツ、フィットネス、ヘルスに関わるデバイスの1つです。ですが、Apple Watchは、私たちにとって新しい世界への挑戦でした。ユーザーが1日中身に着けるデバイスを作るのは初めてだったからです。
新しい世界に挑戦するとき、そこで成功を得るための最善の方法は、私たちの知らないことを、強い好奇心と謙虚な姿勢を持って見ることだと考えています。私たちは人の体がどう動くのかについて、本当にいろいろ学びたいと思っていました。
他者の後を追いかけるなら、すでにあるアルゴリズム(手順や方式)を借りてきたり、他の人がどうやっていたかを見たりすることもできますが、それでは私たちは何も学べません。
私たちが新しい領域に挑戦する際には、強い情熱を持って、その新しい領域について学ぼうとします。ですから、ラボを作ったのも人の体について学ぶためです。健康とフィットネスの分野に投資し、さまざまなことを学ぶことで、ようやく理解できるようになってきました。
私たちのチームは、約2年ほど、キャンパスにある“秘密のラボ”でいろいろなことを調べ、学びました。そこでは看護師やエクササイズの専門家などとともに、ボランティアのアップル社員に協力してもらい、多くの製品、多くのシナリオをテストしました。
面白いのは、そのボランティアのアップル社員たちが、自分たちが何のためにそのテストに参加しているのか、何をやらされているのかを理解できていなかったことです。あまりにも多くのテストや評価をしていたので、それがApple Watchのためだとは分かっていなかったようです。
ラボでは、砂漠の環境を再現したり、寒冷地の環境を再現した部屋を作ったりして、その中でボランティアの社員に走ってもらったりもしました。
こうした実験や評価を通して、本当にいろいろなことを学びました。中でも最も重要な学びは、「人の体は極めて複雑である」ということです。どれだけセンサーを付けて、どれだけテストをやっても、必ず、まだ学ぶべきことが起こります。私たちが改良すべき点や、やるべきことも、数多く残されています。でも、だからこそ、これはすごくエキサイティングな分野で、まだまだやらなくてはいけないことが残っているということです。
Apple Watchを使っていると、うまい具合に1時間に1回立ち上がることを促してくれたり、少し早めに歩くとしっかりエクササイズと認識してくれたりと、いわゆる活動量計とは違う、アクティビティ機能の使い勝手の良さに驚かされます。これらも、こうしたAppleの2年間の研究から導き出された機能ということなのでしょう。
先日、Apple WatchのWatch OSがバージョン1.0.1にアップデートされましたが、その際にスタンドアクティビティの測定や、室内自転車、室内ローイングワークアウトのカロリー計算、ウォーキングおよびランニングワークアウトの距離とペースなどが改善されました。秘密のラボで得られた知見と、ユーザーからのフィードバックを得て、今後もこうした機能改善が行われていくようです。
イベントの参加者からは、「バージョンアップによって、テニスなどのアクティビティが、Apple Watchで正しくエクササイズとして認識されなくなってしまったが、なぜか」という質問も出ました。これに対しブラーニク氏は、「アクティビティゴールは、まださまざまな改善が必要な部分。本来なら、走ったり自転車に乗ったりするだけでなく、テニスなどの楽しめるスポーツでも、ちゃんとエクササイズと認識できるようにしたい。ぜひ対応を検討したい」と回答。今後の進化の一端(?)も垣間見ることができました。
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