人工知能「Watson」が医療・ヘルスケア業界に与えるインパクト “小さなWatson”が遍在する世界とは(2/2 ページ)
未来のWatsonの姿は
ユーザーの自然言語の質問を解釈して、指定された分野の集積情報を元に回答の候補を返すQ&Aサービスをベースに進化してきたWatsonは、現在Concept Expansion(コンセプト拡大)、Language Identification(言語識別)、Machie Translation(機械翻訳)、Message Resonance(メッセージ共鳴性診断)、Relationship Extraction(関係抽出)、Personality Insight(性格分析)といったAPIを提供しており、これらを組み合わせていろいろなサービスが作れるようになっています。
また2月にはConcept Insights(関連コンセプトの発見支援)、Speech to Text(音声のテキスト変換。英語のみ)、Text to Speech(テキストの音声変換。英語とスペイン語のみ)、Tradeoff Analytics(対立する優先事項がある場合の意志決定支援)、Visual Recognition(画像認識)といった機能拡張が加えられました。3月には、機械学習によるデータ分析を行うAlchemyAPIを買収しており、このリソースも活用できるようになっています。
なかなかアプリケーション開発や医療に従事していない立場では、具体的なサービスが出てこないことにはそのすごさがまだ分かりにくい人工知能ですが、人間よりもずっと多くのデータを元に、素早く最適な答えを見付けることも可能になっていることを考えると、医療やヘルスケア分野での応用もすぐに広がりそうであることは想像に難くありません。
将来のWatsonのあり方を、元木氏はこのように話しています。
「Watsonは人間の知能をまねるというよりは、人間の知能を補完したり、拡張したりするツールとして活用されています。人間から習うことによって身に着ける専門的知識、そして人間が扱えないような大量なデータ、複雑な概念を、Watsonが補いつつ広げていくのです。それが高度な判断や発見、創造的活動に広がっていくのです。
一部では、人間の仕事を置き換えるとか、悪さをするとかいったことも語られていますが、そういった議論は重要ではあるものの、IBMとして考えているのは非常に小さなWatsonがたくさん存在している世界です。IoTデバイスの中に、小さなシステムとしてWatsonが組み込まれ、人間はそれを組み合わせて活用していくようになるのではないでしょうか」
人間と対話する部分には、アバターのようなキャラクターがいて、そういったものを通して、専門知識を持った複数のWatsonを、分野や必要に応じて呼び出して使っていく、そんな将来を目指しているといいます。
いずれはディベートをするWatson、文脈を理解するWatsonなども誕生し、それを支える基礎技術として、ニューロチップなども開発していると元木氏。大量の非構造化データを扱うための処理能力をブースとしていくため、量子コンピューターも必要になってくるといいます。そういったハードウェアの開発も合わせて、IBMはWatsonの開発を推進していくとのことです。
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