分身ロボット「OriHime」はなぜ生まれたか 開発者吉藤オリィさんに聞く

分身ロボット「OriHime」は、いかにして生まれたのか。その小さな体に込められた想いは、開発者である吉藤オリィさんが生きる意味とつながっていました。

» 2015年10月18日 07時00分 公開
OriHime 分身ロボット「OriHime」と、開発者の吉藤オリィさん

 なぜ、分身ロボット「OriHime」を作ったのか。誰にとってOriHimeは必要なのか。そして、OriHimeがいることで実現する未来とはどういうものか。いろいろなことが聞きたくて、知りたくて、開発者である吉藤オリィさんを直撃しました。今回はその第1回目。オリィさんがOriHimeを開発するに至る道のりを聞きました。

吉藤オリィさんに聞く「OriHime」

人の役に立ちたい――その想いからすべては始まる

 「OriHimeがどこからスタートしたかと言えば、工業高校時代に車いすの制作に関わったことでしょう。当時私が師事していたモノづくりの巨匠、久保田憲司師匠とともに、電動車いすの新機構を開発し、世界最大の科学コンテスト、ISEF(インテル国際科学技術フェア)で世界3位(Grand Award 3rd)を獲得しました。その時に感じたこと、経験したこと、その後に起こったさまざまなことが、OriHime開発のきっかけになりました」(オリィさん)

 小学校5年〜中学校3年まで不登校、引きこもりを経験したオリィさん。高校へ通うようになってからは、ボランティア活動に力を注いだと言います。そこにあったのは、オリィさん自身の「ありがとう」への渇望でした。

 「とにかく、人の役に立ちたかった。それまで、私はありがとうを言う側の人間でした。たくさんの人にたくさんのありがとうを伝えましたが、言い続けるだけでいることが辛くなったんです。自分も人からありがとうと言われたい。与えられるだけじゃなく、与える人間になりたい。そう強く思っていました」(オリィさん)

 オリィさんは「ありがとう」は言うだけではダメだと感じているといいます。もちろん、人から「ありがとう」と言われるだけでもいけない。自分が言い、人から言われ、「ありがとう」が循環することが大切で重要なのだと考えているのです。

OriHimeプロジェクト 分身ロボット「OriHime」について話す吉藤さん

生きる意味を考え続け、たどり着いたもの

 そして、世界的な科学コンテストがオリィさんにもたらしたのは、世界3位という名誉だけではありませんでした。もっと大事な、もっと根本的な部分に触れる経験をしたのだといいます。

 「コンテストに出場する学生はみな、このために生まれてきたんだという強い意思を持っていました。研究にかける情熱を素直にうらやましいと思ったんです。私はその頃、自分が何のために生まれてきたのかと、よく自問自答していました。それはすごくネガティブな思考でしたが、彼らは違いました。非常にポジティブに生まれてきた意味を理解していて、私も同じように、このために生まれてきたと言える何かがほしいと思いました」(オリィさん)

 生きることがあたり前と思えなかったという当時のオリィさんにとって、この経験は強烈なインパクトとなりました。自分が生まれてきた意味を考え続ける中、1つのキーワードが浮かび上がります。

吉藤オリィさん

 「私がたどり着いたのは、孤独の解消でした。自分自身、引きこもりをしていた頃、強い孤独感にさいなまれていました。今、同じような状況にいる人、病気で寝たきりの人、家族や仲間と遠く離れて暮らしている人など、孤独を感じている人は少なくありません。そうした人たちの孤独を解消するにはどうしたらいいのか。何が必要なのか。それに人生をかけてもいいと思い至ったのが17歳の時でした」(オリィさん)

 孤独の解消。それは、オリィさんが生きる意味であり、同時にOriHimeの最終目標でもあるといいます。

 そこで次回は、世界3位で一躍時の人となったオリィさんの周囲に起きた変化と、そこから気付いたことを追いつつ、OriHimeが分身ロボットである意味について迫りたいと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  2. 「驚愕の修理代」の金額明かす お見送り芸人しんいち、約2000万円の愛車が故障で「終わった」「お金がないです」
  3. プロ警鐘「エアコン、夏が終わったらコレやらないと……」が530万再生 水漏れや“内部のスライム化”を防ぐコツが目からウロコ
  4. “医療ミス”で両頬に大きな火傷 「鏡見るたび涙が止まらない」フォロワー24万人のモデルが悲痛の声 「周りの目が怖い」
  5. スーパーで買ったニンニクを土に植えると…… ぼこぼこ増える驚きの簡単栽培に「たくさん出来て最高」「植えてみよう」
  6. 「これは合格出せない」 リンガーハットがジョブチューン挑戦→“まさかの不合格メニュー2品”に騒然
  7. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  8. 「本当に56歳…?」 “王騎”大沢たかお、“腕と足の太さがほぼ同じ”の圧倒的肉体を披露 「かっこよすぎる」
  9. モグラに似てる“ヤベぇ虫”を、2カ月育ててみたら…… 感動の展開に「これはマジで凄い」「学術発表レベル」
  10. カインズの「撒くだけで防草できる砂」本当かどうか検証してみたら…… 驚きの結果に「魔法のような砂、買いに行きます!」「これさえあれば」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声