なぜ残業は減らないのか――働き方の多様化、実現のカギは サイボウズ青野社長に聞く(1/4 ページ)
労働時間削減や有給消化に、いま多くの企業が悩まされている。多様性のある働き方を導入していることで知られるサイボウズの青野社長に、同社の取り組みについて聞いた。
ある日突然、トップダウンで職場に降りてきた「早く帰れ、有休を取れ」と言う指示。
売上だけでなく労働時間にまで数値目標を課せられた社員からは、「残業代削減か」「たまった仕事はどうするんだ」と不平不満の声が聞こえてきて、時短に向けた取り組みは序盤から険悪なムード――。
「長時間労働は悪」といった風潮が広がってきている中で、強引に「時短」に舵を切った企業がこのような状況に苦しんでいるケースをよく耳にします。「ノー残業デー」や「健康経営」などの聞こえの良い言葉は、結局は経営陣の壮大な独り言であり、それを受けた人事や総務だけが目標達成のために鼻息を荒くしている“お題目”に過ぎないのではないかと。
一方、今では「多様性のある働き方」の成功事例として頻繁にメディアに取り上げられているサイボウズも、過去には「離職率28%」という時代がありました。同社は、休むことをよしとしない職場風土からどうやって脱却し、今のポジションにまでたどり着いたのでしょうか。
サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏は、多様な働き方を認める空気の作り方を以下のように語ります。
普通と逆? 「社員が増えるほど純度が上がる」仕組み
――今でこそ働き方の多様性が社内に浸透しているサイボウズですが、「休むのが悪」と考えられていた過去には、その考えをなかなか受け入れられない職場の空気もあったと思います。社員からの反発はなかったのでしょうか?
メンバーからの反発がなかったかというと、やはり少しはあったと思います。最初に働き方改革の方針を打ち出したときには、「残業代を削るつもりですか!」と言ってくる社員もいましたから。
ただ、この問題を解決するためには、その都度時間を取って説明して回るしかなかったです。「一律に早く帰れとは言ってない。そうではなく、働き方を選択できるようにしたいんだ。帰りたいと思う人が、早く帰れるようにしたいだけなんだ」と、その趣旨を伝える努力をずっとしてきました。
――ビジョンの浸透は、規模が大きければ大きいほど難しいイメージがあります。
そうですね。ただ、サイボウズの場合、働き方改革を2005〜2006年ごろからずっとやっていて、その中で「うちの社風に合わない」と感じた人は辞めていきましたし、逆に、それを魅力に感じて入ってくる人も増えていきました。
結果、社員へのビジョン浸透度、純度は、規模が大きくなるほど高くなっていったんです。一般的には、規模が大きくなればなるほどビジョン共有の純度は落ちるイメージがありますが、サイボウズは逆でした。80人くらいのときの方が、ずっとバラバラだったと思います(笑)。
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