これから重要度を増す音響技術、補聴支援スピーカー「コミューン」のアプローチ(1/2 ページ)
ユニバーサル・サウンドデザインから補聴支援スピーカー「comuoon」(コミューン)の新製品が登場した。独自の技術で高齢者や難聴に悩む人たちの音声コミュニケーションをサポートする。
ユニバーサル・サウンドデザインは3月3日、補聴支援スピーカー「comuoon」(コミューン)の新製品を発表した。高齢者や難聴を抱える人たちの音声コミュニケーションをサポートするというもの。「スピーカーでは難聴者の支援はできない」という、かつての常識を覆した製品の最新版だ。
ボリュームを上げると逆効果になる場合も
同社の中石真一路社長によると、難聴はその原因によって大きく2つに分類されるという。1つは、外耳や内耳(外耳道、鼓膜、耳小骨など音を振動に変えて体内に伝える器官)に機能障害がある「伝音性難聴」、もう1つは内耳やその先にある聴神経に障害のある「感音性難聴」だ。
伝音性難聴の場合、補聴器などで音を大きくすれば聞き取れるが、一方の感音性難聴は音が歪(ひず)んで聞こえるため、単純にボリュームを上げると余計に音が歪んで逆効果になる。しかも、日常生活に支障があるとされる“中度”や“重度”の難聴は感音性難聴であるケースが多い。
音を大きくするとさらに聞き取りにくくなるのだから、スピーカーや補聴器はあまり役には立たない。中石氏によると、「以前は、“スピーカーでは難聴者の支援はできない”というのが医療関係者の常識だった」という。難聴と診断された人でも、実際に補聴器を使っている人は少ないという状況もそれを裏付けている。
そんな常識を覆したのが、2013年に登場した初代「comuoon」だった。comuoonは、独自の研究成果を反映し、とにかく“歪(ひずみ)のない音”を目指した。例えばスピーカー部では、低歪で知られるアルミニウム素材を用い、非常に細かいハニカム構造(蜂の巣状)の振動板を開発。歪を抑えつつ振動板自体の柔軟性を上げて応答性を向上させた。再生周波数特性は、人の可聴域をカバーする80〜2万Hz。ただし、難聴の方は1700Hz付近の高い音が聞き取りにくい傾向があるため、該当する周波数帯を少し持ち上げるセッティングになっている。「1700Hz付近は、人の声を聞き取る際に重要になる」(同氏)
一方でアンプ部はとにかくフラットな特性を目指した。コミューンには、オーディオ用に開発された新日本無線のオペアンプ「MUSE」(ミューズ)が2基搭載されている(マイクと外部入力に各1個)。MUSEは、ピュアオーディオの世界でも音質に定評のあるアナログ半導体だが、補聴支援の場でも「究極にクリアな音を出す」(同氏)と評価されている。
マイクは、一般的なコンデンサーマイクだが、細長い形状にして集音性能を高めた。これは、テレビ番組などで音声スタッフが使っているガンマイクと同じ仕組み。効率良く集めた音は、A/D変換後に非圧縮のまま、やはりオーディオ用に開発された2.4GHz帯デジタル無線方式で伝送する。伝送距離は見通し約10メートル。
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