ぐっすり眠るカギは枕よりも○○にあった!

普段、あまり気持ちよく眠ることができていないという人は、今の枕や敷布団が原因かもしれません。専門家の見解の下、見直してみましょう。

» 2017年02月01日 06時00分 公開
[石原亜香利ITmedia]

 夜、ぐっすり眠ることができていますか? 睡眠については、2014年3月に厚生労働省から「健康づくりのための睡眠指針2014」がまとめられるなどして、国民的課題になっています。納得のいく眠りが得られない原因は人それぞれ異なりますが、一つに、「寝具」による原因も考えられます。

 そこで今回は、寝具に対象を絞り、「ぐっすり眠れる寝具」を専門家に教えてもらいました。

取材協力:沢田昌宏(さわだまさひろ)さん

眠りプロショップSawada店主 日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士

127年続く老舗の寝具店。睡眠科学に基づいた快眠カウンセリングと快眠フィッティングで、個人に合わせた最適な寝具選びを提供している

http://sleep-natura.jp/


寝具を見直すと睡眠の質は上がる

 上級睡眠健康指導士と睡眠環境コーディネーターの両方の肩書きを持つ沢田昌宏さん(眠りのプロショップSawada)によれば、寝具を見直すことで睡眠の質を上げることができるといいます。

 「今は睡眠時間が足りない人や、満足のいく睡眠の質が得られない人が多くいます。寝る前のスマホや夜食、飲酒・喫煙など、睡眠の質を落とすものはたくさんありますが、そういった場合でも、敷寝具を替えることで睡眠の質が上がった人は97%にも上ります」(沢田さん)

寝具でポイントになるのは枕よりも敷布団

 沢田さんによれば、寝具の中でも特に重要なのは「敷寝具」とのこと。寝具といえば枕の高さやかけ布団の重さが気になるところですが、「敷寝具を替える」ことが重要なのはどういう理由からでしょうか。

 「睡眠の質を上げるためには、寝姿勢が適正であることが大切です。寝姿勢を担当するのは、敷寝具と枕です。敷寝具を優先するのは、敷寝具の硬さによって、枕の高さや硬さが決まるからです。まずは敷寝具を見直してから、枕をそれに合わせて替えるのがトータルで良い寝姿勢を考えるためには重要です」

 では、どんな敷寝具が睡眠の質を高めてくれるのでしょうか。

(c)眠りのプロショップSawada

 「上の写真を見てください。A〜Eまでの5か所の矢印の部分が、良い寝姿勢をつくるのにポイントになる部分です。

 基本的に、良い寝姿勢とは、自然にまっすぐ立ったときの姿勢のまま寝ることです。つまり、背骨のS字カーブが正しく保持されていることが重要になるのです。横向き寝の場合、背骨がまっすぐ、床と平行になるようにすることがポイントです。

 横向き寝の場合は、肩の部分が出っ張りを上手く受け止めて、横から見て背骨が真っ直ぐになるようにする必要がありますので、寝姿勢によって敷寝具に要求される機能が変わってきます」

(c)眠りのプロショップSawada

敷布団は「硬い」or「やわらかい」どちらがいい?

 敷布団といえば、その硬さは好みが分かれるものです。また、「腰が沈み込むと良くない」ことから「低反発」がいいともいわれてきました。果たして、どんな敷布団がいいのでしょうか。

 「確かにやわらかすぎる敷布団より、硬いほうがいいといわれていた時期はありました。しかし、今では硬いだけではだめであることが分かってきているのです。

 硬い布団は、確かに背中のS字がキープできますが、腰にすき間が開き、敷布団についている肩とお尻に荷重がかかりすぎてしまいます。すると、寝ている間に血流が悪くなり、寝返りが増えてしましますが、ひんぱんな寝返りは睡眠を浅くし、質を落とすことになってしまいます」

 沢田さんによれば、睡眠の質を上げるには、「体圧分散」が適度にされるような敷布団・マットレスがいいのだそうです。

(c)眠りのプロショップSawada

 「寝たときに、身体のどこにもすき間ができない『体圧分散』の敷布団が適しているといえます。しかし低反発マットレスのように、体圧分散がされすぎると、今度は寝返りが打ちにくくなるので注意が必要です。つまり、高反発でもなく、低反発でもない、適度にバランスの取れた敷布団が最適ということになります。

 また、快適な睡眠環境は温度33度・湿度50%といわれますので、寝姿勢や寝具の硬さだけでなく、保温性・吸湿性・放湿性・通気性なども重要になってきます。素材としては羊毛(ウール)が適しています」

最適な敷布団を選ぶには?

 敷布団は、バランスのとれた体圧分散のものを選ぶのが基本。こうした最適な敷布団を選ぶにはどうすればいいのでしょうか。

 「寝具選びの基本は、眠りを阻害するストレスをどれだけ避けるか、ということにあります。そのため、下記の3つのことを総合的に実現できる敷寝具を選ばなければなりません。

  • 不自然な寝姿勢にならないようにすること
  • 体圧分散と寝返りのしやすさのバランスが取れていること
  • 快適な温湿度を保てること

 しかし、これらを満たすには単独の敷寝具では非常にむずかしくなっています。

 そこで、寝姿勢を保つ敷寝具(マットレスなど)の上に温湿度調整を行うことができる敷布団やパッドを組み合せます。ベッドを選ぶ時もマットレスだけで寝心地を確かめるのではなく、上に合わせるベッドパッドの素材や厚さを組み合わせて判断することが大切です。

 いずれにせよ、ストレスの少ない敷寝具というのは個人によって差が大きいので、一人一人の睡眠スタイルに合わせて、専門スタッフによるカウンセリングやフィッティングを行うことが大切になってきます」

枕選びの方法

 まずは敷寝具を自分に合ったものにした上で、選びたい枕。どのような枕がいいのでしょうか。

 「敷寝具が決まったら、それに合わせて枕を選びます。枕選びは主ではなく、従であることを理解してください。経験的に、敷寝具が身体に合っていれば、枕選びはそれほどむずかしくありません。

 枕は、仰向き寝の場合は、首の“頸椎(けいつい)カーブ”に沿うようなものを選び、横向き寝の場合は、背骨の延長に頸椎がくるような高さを選びます。

 枕選びに困っている場合は、まず敷寝具が自分に合っているのかどうかを確認するのをおすすめします」

 ぐっすり眠るための寝具は、まずは敷布団やマットレスなどの敷寝具を、自分に合ったものにするのが先決。その後で、枕やほかの寝具を選ぶのがコツといえそうです。

 眠りに悩みのある人は、一度、現状の寝具を見直してみてはいかがでしょうか。

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