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「1999年が近づいてきてヤバいと思った」 伝説の漫画「MMR」を作った男たち タナカ・イケダ・トマル隊員インタビュー(後編)(1/4 ページ)

まさかの「復活予告」も!

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 前編に続き、「MMR マガジンミステリー調査班」(石垣ゆうき)に関わった、タナカ隊員、イケダ隊員、トマル隊員にお話をうかがっています。レジデント・オブ・サン(太陽の住人)やキバヤシ伝説の名ゼリフはいかにして生まれたのか。1999年をMMRメンバーはどんな心境で迎えていたのか。そしてインタビューの最後には思いがけない「復活予告」も……。

前編から引き続き、タナカ隊員(左)、イケダ隊員(中央)、トマル隊員(右)にお話をうかがいました

「MMR」にストップをかける役割のレジデント・オブ・サン

―― MMR海外隊員のチャーリーって本当はいなかったんですか?

イケダ 海外の情報を出すための位置づけですね。「X-ファイル」を見ても分かるように、海外にも超常現象オタクがたくさんいらっしゃる。そういう人たちの発言を一括りにするキャラがチャーリーだったんです。

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イケダ隊員の友人として登場したチャーリー(6巻91ページ)

―― 海外のうわさをまとめる集合知がチャーリーだったと。

イケダ ただ、そういう趣旨の発言をしている人は実際にいるんですね。アメリカは本当に便利で、CIAやNASAもあるしFBIもある。この3つがそろえば何でもできる。CIAが国のために情報を隠すのは論理的ですし、他2つも秘密を持ってそうですし。日本でもそれにあたる諜報機関はあるけど、例えば「日本政府が密約して、総理大臣が宇宙人と握手して」とは考えにくい。でもアメリカだと本物っぽいし、実際にそう信じられているので、いくらでもお話が作れる。冷戦時代にあった軍事開発でも、とんでもないものがありますよね。アメリカとつなげるキャラを入れておくと便利だったんですよ。

―― アメリカはエリア51という秘密の場所もあって、陰謀論に持って行きやすいですよね。

タナカ アメリカだけじゃなくて旧ソ連のゴルバチョフも出しましたね。本物はアザがあったはずなのに、アザが消えていたのはクローン人間にすり替えられたからだと。

―― レジデント・オブ・サン(太陽の住人)も、各エピソードの裏で暗躍する名キャラでしたね。「Resurrection」でMMRメンバーが再集結したとき、アマテラスのアドレスに「復活おめでとう」とお祝いメールを送ってきてくれて。

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タナカ 確か私は、レジデント・オブ・サンの投入には反対したと思うんですよ。特定の敵キャラを入れるのはどうかな、あえて分からないほうがいいんじゃないかって。面白いと思いますよと言われて、そうかなと入れてみたら、チャーリーと同じように便利キャラになっちゃった。あと、最後の話に向かって明確な敵を作っておくと楽だという思いもあったんですね。話をまとめるとき、いつも「俺たち『MMR』は無力なのか……」と終わってたじゃないですか。でも、一応敵がいた方が、うまくオチがつく感じがあったので。それで、いよいよ正体が……。

トマル そこは3月17日発売の単行本で明かされますので、お楽しみにということで。

イケダ そういう「MMR」の活動を止める、ストッパーの役って最初からいたんですよ。それが1巻では編集長だったんです。この調査は危険すぎるので中止しろ、と。その役割がレジデント・オブ・サンに引き継がれたという。

―― 「MMR」メンバーの安全を気遣ってくれる、いい人ですよね。

わざわざメールで復活を祝ってくれたレジデント・オブ・サン。意外にいい人たちなのかもしれない(新世紀黙示録MMR Resurrection 48、49ページ)

「南極にUFO」がやれる「X-ファイル」がうらやましかった

―― 「MMR」は話の導入が、いつも読者ハガキでしたよね。

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タナカ 当時はまだメールはなかったので、手紙で来てましたね。その8割ぐらいは応援だったんですが、中には「UFO見に来てください」というのもあって。沖縄から深夜に電話がかかってきて、「UFOが出てますから見に来てください」と言われても行けないし。「いま金縛りに遭ってるんです」じゃあ、なんで電話かけられるんだ? というのもありましたね。一番怖かったのは、心霊写真を送ってくる人たちですよ。

―― 宇宙人の陰謀にも立ち向かったのに、幽霊が怖かったんですか?

タナカ 「MMR」のメンバーってみんな怖がりなんですよ。ノストラダムス人気が出たからノストラダムスでいこうと言っていて、暗黙の了解で心霊は避けていて。でもある時、すごいリアルな心霊写真が送られてきて、それをどうしようかと。これは供養してもらうしかないだろうと霊能力者を探して、初めて心霊現象に足を突っ込んだんですね。

―― そういう「何かの報告があって、調査に動く」というスタイルは「X-ファイル」を先取りしてましたよね(「MMR」が90年、「X-ファイル」が93年開始)。

タナカ 「X-ファイル」のビデオが日本で発売されるとき、発売元の会社の方から「『MMR』で取り上げてみたらいかがですか」と言われて、見てみたら面白かったんですよ。それで、漫画の中で「メンバーが『X-ファイル』を見る」という形で出したんです。ビデオも売れたらしくて、先方からは「ありがとうございます」と言われたんですが、こちらとしては勝手な使い方をしてしまってスミマセンなんです。

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MMRと「X-ファイル」夢の共演(6巻92ページ)

―― その後「MMR」を作る上で「X-ファイル」を意識されました?

イケダ 設定はうらやましいと思いましたよ、FBIという組織の中に未解決事件を調査する部署があって、超常現象と出くわす。おいしすぎますよね、いかにもありそうで。「MMR」は漫画編集部でやってる中でギリギリのリアリティを保ってますけど、あの設定があればもっと面白く作れるなと。それ以上踏み込もうとするとCIAが横から出てきてストップをかけたり、まさか大統領が入れ替わっているとは! とか。それが本当っぽく受け入れられるアメリカが本当にうらやましかったですよ。

―― 今年1月に、「X-ファイル」の最新シリーズが始まりましたよね。

イケダ ちょうどアメリカで第一回が放送されて、視聴率が良かったと。実は当時と全く同じ「X-ファイル」宣伝担当の人から「MMR」でも何かやってほしいって話が来たんですけど(笑)。すいませんとお断りしちゃったんですね。

―― 「MMR」とモルダーやスカリーとの共演が実現したらワクワクしますよね。

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イケダ 「南極にUFOが埋まってる」(「X-ファイル ザ・ムービー」)はスゴイなと思いましたけど。「MMR」があそこまで飛躍するのはNGですね、完全にウソになっちゃうので。

―― 「MMR」メンバーが「X-ファイル」はやりすぎと言うのも面白いんですが、一応線引きはあったんですね。

イケダ 微妙ながらありますね、皮膚感覚でしかないんですけど。それをやったら完全にウソになるものは入れないようにしました。例えば「MMR」のラストで、編集部の前にUFOが降りてきたら、読者が引くと思うんですよ。「X-ファイル」なら、アメリカだったらありえるかもしれない。その違いですかね。

―― 講談社の前にUFOが降りてくるのはナシだけど、編集部のコイブチさんがUFOにアブダクションされるのはアリなんですね(笑)(第1巻)。

イケダ そう、「されたかどうか分からない」という境界ですよね。

―― 胸のところに手術跡らしき傷が描かれてましたけど……。

タナカ あれは読み切りシリーズとして単発でやってたので、まだ許されたんです。もしも連載後に、シリーズもので出てくるとウソっぽいかなと。読み切りだったので、チャレンジ気味にやったことで人気が出たんでしょうね。

―― 現実にあった事件として描くのはNGですが、「あくまで推測」ならOKと。

読み切りだったから許された「コイブチ隊員の傷」(1巻47ページ)
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