「映画ハピネスチャージプリキュア!」の興行収入はなぜ半減した? 2014年の出来事から考える:サラリーマン、プリキュアを語る(2/3 ページ)
映画キラキラ☆プリキュアアラモードが絶好調の今だからこそ、語るべきことがある。
2014年の子ども向け映画に起きたていたこと
2014年は、「ファミリー向け映画界」で社会現象になるレベルの大きな出来事が次々と起こりました。
2014年の子ども向け映画の出来事
3月:「アナと雪の女王」の大ブーム到来
7月:「映画妖怪ウォッチ」の前売り券発売。「メダル付前売り券」に長蛇の列
8月:アイカツ!劇場版の前売り発売。カード付前売り券も好調な販売
■アナと雪の女王、大ブーム
2014年3月14日に公開されたディズニー映画「アナと雪の女王」は空前の大ヒット映画となりました。
最終興行収入は254億7000万円と、その年の日本公開の映画で最大のヒットとなり、社会現象レベルにまでなっていました。
「みんなで歌おう上映」なども開かれ、映画はロングラン上映。
このアナ雪ブームは大人だけではなく、子どもにも浸透していた様子が当時の記事などに残っています。
「アナと雪の女王」を見に、子どももお母さん、お父さんに連れられて劇場に足を運んでいたのです。
■妖怪ウォッチ大旋風(せんぷう)
また、2014年は「妖怪ウォッチ」がまさに社会現象と化した年でした。
妖怪メダルの発売日には長蛇の列が出来、メダルの転売なども大きな問題となりました。
アニメも大好評で「ゲラゲラポーのうた」「ようかい体操第一」の大ヒットも記憶に新しいですよね。
2014年7月に発売された映画の前売り券は特典のメダル効果もあり、異例の113万枚を売り上げ、特典を入手できない子どもが続出して大きな問題となりました(この前売り券は東宝が配給する映画では史上最高枚数を記録しています)。
とにかく、あの年は異常なまでの「妖怪ウォッチブーム」だったのです。
妖怪ウォッチは「男の子向けコンテンツ」かと思うかもしれませんが、玩具業界紙には「現在のユーザーの半分は女児が占める(トイジャーナル2014.6月号)」「妖怪ウォッチの人気は現在男子小学生のみならず、女児や未就学児までに波及しつつある。(同10月号)」とあるように、女児にも妖怪ウォッチは浸透していたようです。
この2014年12月に公開された「映画妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」は、最終の興行収入が78億円、動員700万人とこれもものすごい成績を残しました。
■アイカツ!映画も公開
2014年8月9日には「劇場版アイカツ!」の「特典つき前売り券」も発売されています。
2013年後半に、バンダイのトイホビー売り上げでプリキュアを上回る好成績を残したアイカツ!。
当時の女児向けコンテンツはアイカツ!が大きなシェアを占めていたことは間違いないと思われます。
2014年も勢いはまだまだ健在で、劇場版のカード付き前売り券にも注目が集まりました。
このように、2014年前半は「ファミリー向け映画」「子ども向け映画」に社会現象レベルの出来事が次から次へと起こっていました。
プリキュア映画の前売り券が発売されたのが7月。
それとほぼ同時期に、「アナ雪」のロングラン上映、映画妖怪ウォッチの前売り券発売、アイカツ!映画の前売り券発売などが相次いでいたのです。
年間で映画に使う額は一定
これは総務省統計局が出している「1世帯当たりの品目別支出金額(総世帯)」中の「映画・演劇等入場料」の年次推移です。
これを見ると「世帯が年間に使う映画、演劇の入場料の金額」はほぼ一定であることが分かります(大ヒット映画のある年は、2本見に行くので2倍になる、なんてことにはなりません)。
もちろん2014年も例外ではありません。映画に使われる金額は一定なのです。
つまり、
ファミリーでアナ雪を見に行き、
映画妖怪ウォッチの前売り券を買い、
アイカツ!の前売り券も買う。
しかし、「世帯が年間に使う映画の金額は変わらない」。
となると、影響を受けるのは「定番映画」であるプリキュアなのです。
しかもドラえもんのような「春映画」ならまだしも、プリキュアは「秋映画」です。
年の後半になればなるほど影響を受けやすいでしょう。
いつもであれば、子どもと見に行く映画にプリキュアが選ばれるところが、「別のもの」が選ばれてしまった。
2014年のプリキュア映画はイレギュラーな「強大すぎるもの」に飲まれてしまったのです(もちろん、ハピネスチャージプリキュア!にアナ雪や妖怪ウォッチを超える魅力があれば、子どもたちもなびかなったかも知れませんが、「定番映画」となっていたプリキュアにはそれを覆すことは難しかったのでしょうし、「親の意向」が大きかったものと思います)。
これが2014年ハピネスチャージプリキュア!の映画の興行収入が半減してしまった大きな理由であると自分は思います。
(つまり、同じ年に「超強大な家族向けコンテンツ」が複数生まれると、定番ものであるプリキュア映画は影響を受ける可能性が高いのです。仮にこの先、春に公開されるオリジナルのファミリー向け映画が空前の大ヒットで200億円を突破するようで、それが複数あればプリキュアもまた影響を受けるはずです)。
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