コラム

“1000回遊べるRPG”を4000回遊んだ男 「SFCトルネコの大冒険」に挑み続けるプレイヤーが語る「不思議のダンジョンには、まだ不思議がある」(5/5 ページ)

求道者のごとく追い求める「トルネコ」の理論的限界。

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「トルネコ」をやりつづける理由

―― もう1つ、日記で印象的だったのが、すごく人間臭いところでした。「この人、ゲームじゃなくて、本当にモンスターと戦ってるんじゃないか」と思ってしまうくらい真剣な文章を書いたり、お酒を飲んだ後にプレイしちゃってものすごく後悔したり(笑)

・真面目なときは求道者のごとく

「可能性が極端に低くとも、そこに生き残れるチャンスがあるならば全力を尽くさなければならない」(2297回目)

「我に返れる冷静さと、易きに流れない心の強さが欲しい」(3610回目)

「連勝は34でストップ。(中略)まだまだ精進が足りない」(3773回目)

「もっと緊張感を持ってプレイするべきだろう。ぬるい」(4175回目)

・でも、たまにやっちゃう飲酒プレイ

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「酒を飲みながらやっていたらえらいピンチに」(2121回目)

「ビール飲みながらやってたというのがそもそもの間違い」(3104回目)

「だから酒飲んで帰ったときにトルネコの続きをやるなと言ってるのに」(4067回目)

 お酒を飲みすぎたときは、やっぱりダメです(笑)。視野が狭くなって、画面の隅にいる敵を見落とします。休日の朝なんかも、コンディションが良くないですね。

―― 2009年に「単純ミスを無くすために、声出し確認すべきか」と検討していましたが、あれはどうなりましたか? 「クリア率を上げたい」「でも、さすがにやりすぎか……」と葛藤していたようですが。

 結局、採用しませんでした(笑)。でも、階を移るときに「その階の注意点」「やるべきこと」「持っているアイテム」などを確認するだけでも、けっこう違いますよ。危機管理能力みたいなところが問われるゲームなので。

―― 最後にどうしても聞きたかったことを。秋川さんはなぜ、そんなに本気で「トルネコ」を遊びつづけているんですか?

 最近のゲームは、ゲーム側が“遊ぶ目標”を用意してくれますが、昔は違いましたよね。ハイスコアを目指すなど、プレイヤー側が自分なりに見つける必要がありました。

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 私にとっての“遊ぶ目標”は「『もっと不思議のダンジョン』で最適に動いた場合の理論的なクリア率」を確かめること。運要素も多少絡んできますが、95%くらいになるような気がしています。

 分かりやすく言うと「もしも、めちゃくちゃうまい人がノーミスで100回プレイしたら、95回は奇妙な箱を持ち帰れる」という仮説を立てているんです。これを証明したくて、自分がどこまでクリア率が高められるのか挑戦しています。

―― 出現するアイテム、ダンジョンの形状などによって冒険の内容は毎回変わるのに、腕があればほぼ確実に攻略できる……というわけですか。驚異的なゲームバランスですね。

 この課題が終わったら、私の「トルネコの大冒険」は終わりかもしれません。

 ですが、今でも試行錯誤の積み重ねで、遊んでいて楽しいですよ。周囲からはずっと同じことをしているように見えると思いますが、私は攻略法のバージョンアップを繰り返していますから。この間は、ミイラおとこが出現するようになる5階の立ち回りについて検討していました。

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 今までは4階でアイテムの識別を行うようにしていたのですが、それを改めたほうがいいんじゃないかって考えているんですよねえ……。

――  え、こんなにやり込んでいるのに、まだ悩むことがあるんですか?

 今でも不思議でいっぱいですよ、「もっと不思議のダンジョン」は。


 「不思議のダンジョン」シリーズは初代「トルネコの大冒険」以降、「風来のシレン」のほか、「チョコボの不思議なダンジョン」「世界樹と不思議のダンジョン」といった派生作品が登場。秋川さんは他作品に手をつけながらも、今日まで「トルネコ」を遊びつづけてきたそうです。

 同氏のWebサイトに設置されている掲示板では、今でも「トルネコ」プレイヤーからの書き込みが。攻略情報の交換、クリア報告などを行っており、古い作品ながら現役のファンが存在することに驚かされます。発売当時は誰も予想していなかったかもしれませんが、「1000回遊べるRPG」は「数千回遊んでも、数十年たってから遊んでも色あせないRPG」として愛されつづけているようです。

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マッハ・キショ松

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