コラム

なぜ「ビタミンB」にはやたら数字がつくのか?

「ビタミンB1」「B2」「B3」「B5」……(なお「B4」はない)。

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 みなさんは栄養にどれくらい気を付けているでしょうか。筆者はラーメン、牛丼、パスタに落ち着いてしまいがちです。

 野菜や果物、お魚をとらないと不足しがちなのがビタミン。一口にビタミンといっても、「ビタミンB1」「ビタミンC」など、アルファベットや数字がついてさまざまな種類に分かれています。

 それにしても、ややこしいのは使われないアルファベットがあったり、ビタミンBにだけ数字がついたりすること。どういった経緯で、こうした分類がされてきたのでしょうか。

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ビタミンの発見

 最初に「ビタミン」という言葉を使ったのはカシミール・フンクという化学者。

 フンクは米ぬかに脚気(かっけ)を予防する物質が含まれていると考え、1911年に成分を抽出して「Vitamine」と名付けました。脚気とは、ビタミンB1の不足によって糖質がエネルギーに変えられなくなり、神経などに障害が起こる病気です。


日本では、玄米を精米して白米を食べることが一般化した明治時代から脚気が増えました

 フンクが見つけた物質は、後に「ビタミンB1」と名付けられますが、当時はまだビタミンの研究が進んでおらず、「ビタミン」という言葉がビタミンB1を指していました。

最初に見つかったのに「ビタミンB」?

 ビタミンB1はビタミンの中で最初に見つかったのに、なぜ「ビタミンA」と呼ばれないのでしょうか。アルファベット順でいったら「ビタミンA → ビタミンB → ビタミンC → ……」となるはずです。

 ここには、アメリカのマッカラムという人物が関わっています。彼はフンクの発見から数年後、乳製品を使った実験で、ネズミの成長に必要な2種類の物質を抽出しました。このとき、脂溶性(油にとけやすい)の物質を「脂溶性A」、すでにフンクが見つけていた水溶性の物質を「水溶性B」と名付けたのです。

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 先に発見されていたものを「水溶性A」と命名しなかった理由は、はっきりしません。自分が見つけた物質の重要性を強調したかったのかもしれません。

名称の変化

 さらにその後、レモンから壊血病を予防する物質を発見したジャック・ドラモンドという人物は、これを「ビタミンC」とし、「脂溶性A」を「ビタミンA」、「水溶性B」を「ビタミンB」としました。以降、健康を維持するのに必要な物質が、「ビタミンD」などのように空いているアルファベットを使って命名されていきました。

 ちなみに、ドラモンドはこのとき、フンクが名付けた「Vitamine」からeを取って「Vitamin」としました。このスペルは、今でも使われています。

ビタミンBに数字がつくのはなぜ?

 先ほど、乳製品から見つかった「脂溶性A」「水溶性B」がそれぞれ「ビタミンA」「ビタミンB」になった、という話をしました。

 しかし、さらに研究が進むと、「ビタミンB」がさまざまな物質の集合であることが判明。例えば、「ビタミンG」と名付けられていたものがビタミンBに含まれていることが分かり、1927年、名前が「ビタミンB2」に改められました。

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 以降、物質のはたらきを調査しているうちに、似た物質が「ビタミンB」群に組み入れられ、数字が付けられていきました。現在はビタミンB1、B2、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、B6、B7(ビオチン)、B9(葉酸)、B12が分類されています。

 「B4」などが欠番で、数字が飛び飛びになっているのは、後で「ビタミンとは全然違う」と分かった物質が除外されていったからです。

 ビタミンには「摂らないと健康に問題があるが、たくさん必要なわけではない」という特徴があります。たくさん摂取する物質よりも分析、研究が困難になりやすいことから、このような複雑な分類が生まれてしまったのかもしれません。

 名称を覚えるのは大変ですが、各ビタミンは先人たちの苦労の末に発見されたもの。その成果を、バランスの良い食生活につなげたいものです。

参考文献

日本ビタミン学会編『ビタミン総合事典』朝倉書店、2010

公益財団法人 ビタミン・バイオファクター協会

制作協力

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