連載

悪の組織も「稟議」を通す時代 「HUGっと!プリキュア」のクライアス社が社会人をザワつかせるサラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)

「HUGっと!プリキュア」、育児の丁寧な描写が光ります。

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 「HUGっと!プリキュア」が2018年2月4日に始まりました。

 元気なキャラクターが画面いっぱいに動き回る明るい作風は、まさに佐藤順一、座古明史両監督の成せる技なのではないでしょうか。

 HUGっと!プリキュアは「子育て」と「お仕事」をテーマにした作品で、第3話までで2人のプリキュアが誕生しました。2人目のプリキュア、キュアアンジュが本当に天使のようでネットが騒然としています。

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第2話で仲間になった「キュアアンジュ」。天使

 また、敵対組織「クライアス社」の描写が企業用語満載で、日曜日のお父さんお母さんに衝撃を与えています。

 そこでスタートダッシュを見事に決めた2月の「HUGっと!プリキュア」を振り返りつつ、話題となった敵組織「クライアス社」について少し語っていこうかと思います。

kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。

ワンオペ育児の否定


プリキュア達が育てることになった赤ちゃん「はぐたん」

 HUGっと!プリキュア、「子育て」と「お仕事」がテーマということで番組開始前には、一部界隈(かいわい)で「女性に育児を押し付けているのでは?」「子育ては遊びではない」などの不穏な意見もあったようです。

 しかし、いざ始まってしまえば、そんな意見はなんのその。

 第3話までに、たくさんの子育て要素が「丁寧な描写」で描かれました。

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(自分の観測範囲では「HUGっと!プリキュア」の子育て描写は良好で、悪い意見はほとんど聞きません)。

 第1話で「キュアエール」となり、赤ちゃんを育てることになった中学2年生の「野乃はな」ちゃん。

 はなちゃんは当初「カッコイイから」という理由で一人でプリキュア活動をしようとします。

 今作において「プリキュアの活動を1人でする」ということは「子育てを一人でする」という宣言です。


「はぐたん」を育てるのは大変

 しかし、早々にワンオペ育児は破綻します。とても一人で育児は無理、と判断したはなちゃん、きちんと周りに助けを求めました。

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 そう。ワンオペ育児は行き詰まるのです。

 「育児に困ったら、一人で抱え込まずに誰かに助けを求めよう」というメッセージを第2話にして発信したのです。しかも「イクメン男子」がきちんと赤ちゃんのお世話をします。

 また、一緒に育児をすることになった2人目のプリキュア、キュアアンジュ「薬師寺さあや」ちゃん。さすがにミルクの作り方が分からないので、インターネットでミルクの作り方を調べました。

 そう。「育児に困ったらネットに頼っても良い」のです(ただ、ネットの情報は玉石混淆なので、その辺りの描写もあると良いのですが……)。

 薬師寺さあやちゃんが決して「何でも知っている万能キャラ」ではなく、「知らないことは調べよう」という動機付けのキャラクターなのも良いですよね。

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 子育ては(自分もやってみて分かったのですが)知らないことばかりなのです。いろいろ調べて、先人の知恵も借りて、他人を頼ってようやくなんとかなるレベルです。

 「抱え込まずに、調べて、誰かに頼る」をたった2話の間で見事に描写しました。

 そして第3話においては子育て経験のある、はなちゃんのお母さんにより、泣き止まない「はぐたん」に対して「赤ちゃんは心臓の音を聞かせると落ち着く」といった知識が示されました(子育て経験のある母親、父親ならば「そうそう、その通り」って思ったと思います。僕も思いました)。

 子育てには「知識だけではなく、経験も大切」ってことですよね。


プリキュアにはめずらしい「だっこひも」を付ける描写のあった第3話

 「HUGっと!プリキュア」は開始からわずか3話の間で、

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1:ワンオペ育児は無理です
2:育児に困ったら、他人に頼ろう
3:育児で分からないことがあったら調べよう
4:インターネットも有効活用しよう
5:先輩お母さんの意見は大事
6:知識だけではなく、経験も大切

といった子育てに関するトピックスを、子どもたちと子育て中のお母さん、お父さんへと伝えていたのです。

 これ、結構すごいことなのじゃないかと思います。


ワンオペではなく、みんなで育児をする

私にできないことが、あなたにはできます

 第2話で薬師寺さあやちゃんがマザーテレサの言葉を借りて言います。

 「私にできないことがあなたにはできます。あなたにできないことが私にはできます。力を合わせれば、素晴らしいことが、きっとできるでしょう」。

 まさに「HUGっと!プリキュア」のスタートを象徴しているセリフだと思います。

 その他にもこの3話の間で、

「(呼び方は)委員長で良いよ」に対し、「委員長と話してるんじゃないもん。さあやちゃんと話しているんだもん」

「ほめられたら“ありがとう”だよ」

などの子ども向けアニメとしてすてきなセリフが随所に見られました。

 HUGっと!プリキュア、第3話まででは「子育て」の要素を前面に押し出してきました。さらにこの先、育児に加えて「お仕事」の要素が入ってくると聞きます。

 子育てに、ワーキングマザー問題に、母親の社会参加の問題。

 どんどん描写が難しくなってくると思います。しかし第3話までを理想的にこなしたスタッフです。きっとこの先も、女児にもお母さんにもお父さんにも分かりやすく楽しく、しかもカッコイイお話を展開していってくれるものと思います。楽しみですよね。あと、プリキュアが本当に「元気」なのもすてきです。

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