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「今のマンガ家って売れても儲からないんですか?」 『アホガール』のヒロユキ先生に聞く、マンガの現状かーずSPのインターネット回顧録(番外編)(3/3 ページ)

他にも「同人の方がいいってホント?」「電子書籍よりも紙の本で買ってほしいのが本音?」など聞いてみました。

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―― 「単行本は電子じゃなくて紙で買ってほしい」という意見もよく目にします。

ヒロユキ:個人的にはどちらでも、読者が好きな方で買ってくれたらうれしいです。でも電子書籍って数字が上がってくるのが遅いようなんです。紙の場合は売上がすぐ分かるようなので、発売して1カ月で打ち切りかどうか編集部が決めたい場合、紙の方が優先して見られちゃうことは確かにあると思います。

―― 電子の売り上げがすごく良かったのに、紙の結果で打ち切りが決定した後だった……となると悲惨ですよね。

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ヒロユキ:さすがにその時は何か救済策があるんじゃないでしょうか。例えば電子書籍が極端に売れている作品があったとして、それが評価にならないわけがないと思うんです。

 初動の評価ができないのは電子書籍市場の過渡期だからで、今後の課題ですよね。出版社によっては僕のところに電子書籍の売上データが来るのは半年に1回ですから(笑)。

―― それは遅いですね。

ヒロユキ:なので僕にできることは紙の結果だけで打ち切られないように頑張ることで、買い方を読者さんに無理強いするつもりはないというのが個人的な意見です。なんなら僕の場合1冊あたりの印税は電子の方が高いので(笑)。

―― 半年おきということは、漫画村がなくなってから売上が増えたかどうかはまだ分からないんですか?

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ヒロユキ:僕のところにその結果が来るのは年末です。でも漫画村が流行りだしたころに実際に売上が下がったというのは聞きました。

参考に、メディアドゥが2018年4月に公開したデータ。ある大手マンガ出版社の電子書籍売上額をグラフにしたもので、漫画村が流行した2017年9月を境にグラフが右肩下がりになっている(関連記事

―― 電子書籍市場が好調に見えるのは、過去の有名作品の再販売がかなりの割合を占めているというのも聞いたことがあります。

ヒロユキ:過去作が売れているって話は超有名タイトルだと思うんです。僕レベルのマンガ家だと、今連載しているマンガの方がはるかにたくさん売れています。

―― 過去作はそこまで動いていない?

ヒロユキ:いえ、ちょこちょこ売れています。だからたくさん冊数を持っていれば持っているマンガ家ほど、月の収入としては潤っているんじゃないでしょうか。

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 昔だったら紙で1回売ったらあとは1円にもなりませんでしたが、電子だと連載を持った分だけ、1冊1冊がちょっとずつ稼いでくれます。かわいい息子たちが働いてくれるみたいな(笑)。

―― 長くマンガ家をやるほど収入が安定するのはいいですね。一方で、電子書籍だと割引セールがあったりして、実入りが減ることにはなりませんか?

ヒロユキ:いえ、それは違います。終了したマンガの1巻を無料で出してみたら、後続の巻が売れて何百万円とか入ってきたって話もあるようで。もちろん繰り返しセールをしていくと下がっていくんですが、それでも、終わったタイトルですよ? 人の目に触れる機会があるのが重要だと実感しました。

 1巻を無料にして何万冊かダウンロードしてくれたとして、100人に1人でも2巻以降を買ってくれたら結構な金額になります。紙だと無料で配るわけにはいきませんからね。

―― 確かに、これは電子書籍の強みですね。

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ヒロユキ:セールをしなかったらそもそも見てもらえません。3巻まで無料になったところで、続きが読みたくなったら残りの巻にお金を出してくれるわけですから。

 それに最近はアプリで完結作品を再連載するパターンもあって、そこでも収入が得られます。たくさん描いていくと良いことがある時代になっています。

『アホガール』はヒロユキ流ギャグマンガの集大成

―― お話を伺っていると、ヒロユキ先生は作家としてだけでなく、プロデューサーとしての目線を持っているように感じます。

ヒロユキ:どうですかね……(笑)。僕は赤松健先生が好きで(公式サイトの)日記帳を毎日見ていました。赤松先生こそ企画やビジネス的な思考をお持ちで、そこが僕には響きました。

赤松健先生のサイト「AI Love Network」(現在は更新休止中)

―― 逆にマンガを描くことに100%注ぐタイプもいらっしゃいますよね。極端な例だと、プライベートでは電車の乗り方も知らないけど、マンガだけはめちゃくちゃうまい方とか。

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ヒロユキ:率直にいうとうらやましいです。僕は新人賞のころに10連続ボツを食らって最終候補にも残らなかった時期があります。自分には才能がないという前提でスタートしているので、頑張って雑巾(ぞうきん)を絞り出している感じなんです。ギューっと雑巾を絞って、やっとポタって一滴たれるみたいな(笑)。だから他のことを考える時間があるんでしょうけども。

―― 中にはいつも雑巾が潤ってしょうがないようなマンガ家さんもいますよね。そういう人に対してはどう思いますか。

ヒロユキ:うらやましいと思う反面、雑巾が潤うタイプってムラがあると思うんです。ハマるとめちゃくちゃ売れるので「うわーたまらん」って思うんですけど、次の作品でガクンと落ちたりもします。「安定して売れるのは自分の方だぞ」っていう対抗心みたいな気持ちは正直あります(笑)。

―― 次回作は考えていますか?

ヒロユキ:アホガールでは、今まで自分が築き上げてきた技術を全部詰め込んで、『週刊少年マガジン』の毎週6ページの中にギチギチに詰め込んで勝負しました。

 自分の中にあった「ギャグマンガの集大成」としては頂点に近づけたと思っていて、アニメも評判が良かったので、次は一度ギャグを離れてストーリーマンガをやってみたいです。

『アホガール』はヒロユキ先生流の『クレヨンしんちゃん』を目指したとのこと。「あっくんとよしこは、みさえとしんのすけまんまなので(笑)」(ヒロユキ先生)

―― 今後のマンガ家人生を見据えていかがですか?

ヒロユキ:好きなことだけで生きていきたい。

―― ホリエモンですか(笑)。

ヒロユキ:通勤しなくていいし、上司もいなくて、好きな時間に寝て起きて、マンガを描けてお金にもなるのはすごく楽しいです。

 もちろんネームや作画は毎回苦労してつらいんですが、人に楽しんでもらえるものはそんな簡単には作れません。「どんな反応が返ってくるんだろう」ってことをマンガにして、「面白い」って言われる喜び。それが最終的にはお金にも変わるし、大勢が認めてくれればアニメにもなっちゃう。マンガ家って楽しい仕事なんですよ。

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