無防備でポンコツな先輩の胸はありがたくガン見しよう 「手品先輩」後輩・助手の立場と青春
男子高校生だしね、見るよ。
すっごく元気でめちゃくちゃおバカ。テレビアニメ放送中の「手品先輩」(原作/アニメ)は、失敗率が限りなく100%に近いポンコツ手品コメディ。いろいろあやういハプニングとめげなさすぎる先輩との楽しくて厄介な日々、これもまた青春。
ポンコツ手品先輩と、振り回されっぱなしの後輩・助手くんのやりとりが楽しいこの作品。ただこの助手は受け身なだけじゃない。ちょっとニヒルで、意外とセンチメンタル。あとスケベ。えろハプニングにドン引きできる彼がいるから、安心して見ていられます。今回は助手の日々をクローズアップ。
ぼんやりした助手の高校生活
高校時代に訪れる、無気力無感動。助手は最初期はまさにそのぼんやりした心持ちど真ん中でした。
助手「やっぱ探すなら文化系だな 早く帰れて家でゲームできそうな 適当でだらしないそんな部活……」
この文科系部活をなめた感じの発言が、序盤の彼をよく表しています。まあでも、全員参加型の学校だと実際そういう「救済策」的な部活はあります。
彼から見て、手品先輩1人しかいない部活(正確には部活になっていない)は、別に魅力的な場所ではありませんでした。完全に巻き込まれただけです。そもそも奇術部に通うつもりは毛頭なかったのに、手品先輩が放送をジャックして呼び出すもんだから、逃げられなくなってしまった。
手品先輩は横暴なので、自分の手品失敗のつなぎを助手に丸投げしたりもします。とんでもなく迷惑な話なんだけれども、助手は意外と逃げずにこなせちゃうスペックの持ち主。度胸はそこそこあります。
おっぱい大好き助手
漫画やラノベに対して、ネットでは「やれやれ系主人公」という単語が用いられることがあります。破天荒なキャラクターに対して、主人公が受け身で俯瞰して見ながら「やれやれ……」と言うタイプの構造の物語のこと。
「手品先輩」における助手ポジションは、形式としてはこの「やれやれ系」の系譜をたどってはいます。しかし彼は反撃が多く、あまり受け身ではありません。また読者の心理とシンクロする、重大な部分を担ってもいるため、共感しやすい存在として表現されています。
特筆すべきは、彼はかなりスケベだということ。
「手品先輩」はお色気寄りの作品です。でも性的魅力メインというよりは、色気を飛び越えて、だらしなさにポンコツ性を感じてギャグ化した内容です。小動物が滑ってコケるかわいさに似ている。
ここで重要になるのは、無防備な手品先輩の肢体をガン見してくれる存在。だってするでしょ、ガン見。恥ずかしがって鼻血ブーするピュア高校生もかわいいけれど、高校生男子なら、乳尻目の前にあったらジロジロ見るでしょ。相手気付いてないし。
本人にセクハラを働くわけではなく、合法的範囲内で、黙って見る。これぞ高校生の生きざまよ。
手品先輩の横暴で部活に来ている、という言い訳はありますが、助手自身はそこそこの割合で、スケベ心を持って能動的に部活に来ています。自らエロスを探しに行く姿勢、これが後に、手品先輩に対する保護欲求や、もうちょっと複雑なアオくてハルな何かに変化していきます。
スイッチ入ると凝り性な助手
基本的には手品先輩の理不尽に対してのツッコミ役で、飽き飽き気味な彼。しかしスイッチの入りやすい性格のようで、意外なところで夢中になり、一気にハイテンション化するシーンもまれにあります。斜に構えているように見えて、こういうところはとても純粋で幼い。
先輩が極度のあがり症で、克服するため訓練をするシーンがあります。意外と手品の腕は良いのに、人っぽいものの前だとだめという、ギャグではあるけど手品師としてはあまり笑えないシチュエーション。
これを手助けするため、助手側からさまざまな提案を持ちかけます。
先輩のあがり症、治ってほしいのです。影から見守りつつ、「がんばれがんばれ……」と応援する様子は、かなり部活動しています。成功したら、一緒に喜びます。変わったねえ助手くん。
先輩のことぶっちゃけどう思ってるんだい助手
時を重ねるごとに、どんどん息があってきてコントみたいになってくる先輩と助手。こうなってくると、お二人はどういう関係? と気になってしまうもの。
ここに関しては、新たに登場する2人の姉弟の視点も入り、さらに複雑化します。そもそも助手は自分の気持ちというものをまず考えたことがない。
手品先輩が知らない男と会っているシーンがあります。これを見た助手、今までにない大混乱。ここは今後アニメで公開されると思うので、楽しみにしておきましょう。コミックだと4巻で、この事件は起こります。
ただの「厄介な先輩」から、徐々に存在は変化しています。でも単純に「恋」ともいえない。
お世話しなきゃいけない対象、一緒にいると面倒な存在、セクシーな身体見放題なおいしい人、共に頑張って手品の準備をするパートナー、ボケに対して突っ込める相手。時々一緒にいて楽しいこともないわけじゃないような人。
助手「わからん……俺あと2年もあるし 先輩なんかまだ500年くらい部室にいそうな気がするし」
もちろんそんなわけはない。ぼんやり高校生活を過ごそうとしていた助手の中に、青春の3年間の意識が芽生えつつあるのが分かるシーンです。少なくとも、一緒にいるのはまんざらでもなくなりつつある。かと言って、積極的に一緒にいたいのかどうかまでは、ちょっと分からない。
4巻から5巻の臨海合宿編は必見です。ドタバタとエロスと、たくさんの思い出の詰まった内容になっています。助手の意識が如実に変わっていく内容です。
アニメはまだ始まったばかりですし、コミックもまだ半年経っていません。でも1年経って卒業したら終わりです。500年くらい先輩が留年しない限り。
はちゃめちゃな日々の中、先輩に対して助手がどういう意識を持っていくのかは、まだまだ迷走中。彼のスケベ心が別のなにかに変わった時、物語は大きな転機を迎えそうです。
(たまごまご)
(C)アズ/講談社
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