レビュー

「同期のサクラ」このドラマが持つメッセージは何なのか? 「自分の人生だけでいっぱいいっぱい」の残酷な展開に救いはあるのか(1/2 ページ)

寄り添うべきサクラに依存し、尻を叩き続ける同期4人……。

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 12月4日に「同期のサクラ」(日本テレビ系)が放送された。筆者はこのドラマの持つメッセージがいまだ掴めずにいる。というか、第8話によって見失ってしまったかもしれない。

サクラのいない世界なんかに生きていたくない イラスト/まつもとりえこ

どん底のサクラを支えるのではなく、求め続けた同期4人

 祖父の柊作(津嘉山正種)を亡くし、1年以上も会社を休職した北野サクラ(高畑充希)を同期4人は励まそうとした。しかし、その方法はどれもピント外れだった。

 清水菊夫(竜星涼)は自分が担当した図書館へサクラを連れて行った。土井蓮太郎(岡山天音)は作成した設計図を見せ、サクラに意見を求めた。木島葵(新田真剣佑)は「お前1人くらい養える」とサクラにプロポーズをし、月村百合(橋本愛)は自分の昇格をサクラに伝えた。立ち止まり足踏みするサクラからすると、どのアプローチも仲間の成長がダイレクトに感じられてしまう。はっきり言って、逆効果だった。

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 サクラ「自分でもいけないことだってわかってるんですけど、この頃、自分の感情がうまくコントロールできなくて。悲しくもないのに涙が出てくるし、おかしくもないのに笑いが止まらないし、怒るとどんどん腹が立ってきて。だから、私みたいな奴もう放っておいてください」

 菊夫「もしサクラだったら、きっと俺たちのことを絶対放っとかない。何があっても助けようとしてくれるって思うからさ」

 蓮太郎「実際、お前に救ってもらわなかったら今頃うちの会社にいなかったかもしれないし、みんなと仲間になることもできなかった」

 百合「だから、どうしてもサクラには元気になってほしいの。元のサクラに戻ってほしいの」

 サクラを見ていると、気力を失い、どん底にいることがわかる。励ますよりも、見守ることが必要な状態。そんな彼女に対し「前のサクラに戻ってほしい!」と尻を叩き続けた4人。“今のサクラ”に寄り添って受け入れるのではなく、“自分たちを救ってくれたサクラ”のみを求め続ける光景が、怖かったのだ。「サクラのいない世界なんかに生きていたくない」(百合)が指すサクラとは、自分たちが欲するサクラのこと。4人はサクラを支えようとするのではなく、いまだにサクラに求めていた。

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夢を失い、どん底に落ちてしまったサクラ イラスト/まつもとりえこ

百合と葵はなぜ結ばれたのか

 特にサクラへの依存度が高かったのは、百合と葵。花村建設を退社し、熊本復興という人生の目的を見つけた菊夫、火野すみれ(相武紗季)と新たに家庭を築く蓮太郎に比べ、両者の中でサクラの存在は一際大きい。

 「私なんか仲間なんて思わないでください」と告げられ、サクラという道しるべを失った2人は慰め合った。サクラへのプロポーズに玉砕したばかりの葵が百合と結ばれる展開に、多くの視聴者は騒然となる。でも、筆者は理解できなくもない。

 「笑っちゃうよな。バットを1回も振らないうちにゲームセットって感じだったし」

 百合「私は、何だか自分のいる世界が変わったみたいな気がする。世界で1番信頼できて、ずっとそばにいると思ってたサクラが、世界で1番遠くに行っちゃった……」

 百合と葵は同じように傷ついている。2人が一番好きな人はサクラだ。そんな同志が傷を舐め合った。そして、百合は身ごもった。

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 「考えたんだけどさ、『夢』ってどうかな、名前」

 百合「珍しく気が合った。私も同じこと考えてたからさ」

 2人は寂しさから寄り添い合っただけ。まだ、サクラに依存している。じゃないと、生まれてきた子に「夢」なんて名付けない。「結婚しよう、百合」と見るからに暗い表情で申し出た葵。サクラに思いがあるのは明らかで、葵の気持ちに共感する百合はその申し出を断った。

サクラの同期たち相関図 イラスト/まつもとりえこ
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