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「こんな記念硬貨は存在しない」「異世界の硬貨っぽい」 10年前に発見された「謎の記念コイン」にTwitter民騒然、財務省・造幣局を取材して成分分析してみた(1/3 ページ)

研究機関で成分分析も行ってみました。

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 「我が家にも謎硬貨があったわ」――Twitterへ投稿された1枚の記念コインが大きな話題を呼んでいます。調べれば調べるほど謎が深まるそのコインは、“存在するはずのないもの”でした。

 話題を呼んでいるのはTwitterユーザーのハリジャンぴらの(@harizyan_pirano)さんが投稿した「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」と書かれた金色のコイン。表面には石油タンクや鉄塔などがデザインされており、裏面には「日本国」「千円」の文字とともに、青森県をイメージしているとみられる県の形や青森県の県鳥「白鳥」が描かれています。

ハリジャンぴらのさんにお借りした謎コイン(表)
ハリジャンぴらのさんにお借りした謎コイン(裏)

 ハリジャンぴらのさんがこのコインについて「不意に思い出して探してきたんだけど、我が家にも謎硬貨があったわ。確か誰かの家から出てきたやつなんだけど『日本国 千円』って入ってるけど、こんな記念硬貨は存在しないし、『むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念』で検索かけてもさっぱりひっかからない。正体不明なのだ」とツイートしたところ、9000件以上の“いいね”に加え、さまざまな説が投稿されるようになりました。

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謎の記念硬貨はいつどこで発見されたのか

 そもそも謎の記念コインはいつ、どこから発見されたのか。ツイート主であるハリジャンぴらのさんに伺いました。

――謎のコインとはいつごろ出会いましたか。

ハリジャンぴらの10年ほど前、福祉関係の仕事に就いていたときです。同僚が利用者の引っ越しのお手伝いをしていた際に、他の記念コインや古銭にに混ざった状態で発見されたと聞いています。他のコインは換金ができたものの、なぜか「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」と書かれたコインだけは換金できなかったため、友人が利用者からそれを譲り受けました。その後、その話を聞いて「でもこれ千円って入ってるし、記念硬貨じゃないの?」と私が言ったところ、「じゃああげるから換金してきなよ」とさらに譲り受けた形です。

――当時のコインの状態はどういう感じでしたか。

ハリジャンぴらの私が譲り受けた時点では箱などなく、裸の状態で2枚存在していました。

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――元の持ち主とむつ小川原(むつおがわら)という地名に何か関係性はありましたか。

ハリジャンぴらの元の持ち主情報が今では分からないので、詳細は不明です。また私自身は縁のない地名です。


 ねとらぼ編集部がハリジャンぴらのさんから謎の記念コインを借り受けてみたところ、直径は約40ミリ、厚さは約2ミリ、重さは25グラム程度。500円玉と比べると2回りほど大きく、表面は金色に輝いているものの、摩擦によって地金の部分が多少銀色に露出しているのが分かります。またコインに描かれている「むつ小川原国家石油備蓄基地」は青森県上北郡六ケ所村に実在する石油備蓄基地だということも分かってきました。一方で「千円」という記述があるのに換金できないというこの記念コインの正体は一体何なのか。まずは財務省に「これは貨幣なのか」について取材を申し入れました。

コインの重さは25グラム

財務省「いわゆる貨幣ではない」

 財務省の担当者によると、既に「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」と書かれた記念コインが存在しているということは「把握している」とのこと。ただし、国内で通用する貨幣は法律に定められているもののみとなっているため、記念貨幣として発行された記録がないこの記念コインは「いわゆる貨幣ではない」とのことでした。

 また今回のコインと似たケースとしては、「昭和61年」と刻印された純銀製の「偽造1万円銀貨幣」事件が挙げられるのではといい、これについては財務省の公式サイトなどで注意喚起が行われています。

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造幣局「発行の記録がない」

 続いては硬貨の製造などを行う造幣局に取材を申し入れました。担当者によると謎のコインに関する問い合わせは、「(メディアなどから)数件来ている」とのこと。「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」なる名称の記念貨幣については「発行の記録がない」としました。

 造幣局によると、そもそも貨幣そのものの発行を決めるのは政府であり、造幣局はその製造を担っているメーカーのような立場。記念貨幣が発行されるか否かについても政府が検討・決定をしていると説明しました。

 また「記念貨幣が発行されるのはどういったときなのか」という質問に対しては「国を挙げての記念となるような事業であったり、行事であったりという場合がほとんど。国民の皆さんがお祝いしてくださるものなのかというところも重要なポイントなので、空港の開港記念など大きな事業を除き、民間の事業が記念硬貨になるようなことはほとんどないでしょう」とのことでした。

JOGMEC「十数年に一度現れる亡霊のような話」

 さらにお話を伺ったのは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構「JOGMEC」。2004年2月から国の直営事業となった「むつ小川原国家石油備蓄基地」の統合管理業務を行っています。

――「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」と書かれたコインが出回っているのを把握していますか。

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JOGMEC把握しています。「むつ小川原国家石油備蓄基地」についてはJOGMECと関りがありますが、記念コインをJOGMECが発行したということは確認できておりません。

――当時の開発関係者にコインの出所を聞きたいと考えているのですが協力してくださる方はいませんか。

JOGMEC実は10~20年くらい前にも同じような問い合わせが何件か来たことがございまして、当時の関係者に心当たりがないかを調査したことがあるのですが、引退した方を含めて自社でこうしたコインやメダルを作ったという方はいませんでした。われわれとしてはこのコインは、10年、20年に一度、忘れたころに現れる亡霊のような存在です

――コインに描かれたデザインについて、石油タンクや鉄塔などが描かれていますが、「むつ小川原国家石油備蓄基地」は実際にこのコインのような外観なのでしょうか。

JOGMECいいえ、全然違います。備蓄基地には石油が入っているので、電流が流れるような高い建物は近くに建設しないことが基本です。

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 ちなみにこのコインには桐箱が添えられているパターンもあるようで、そこには金文字で「むつ小川原湖国家石油備蓄開発建築事業」と“湖”という字が1文字追加で書かれているんです。当初、該当地区では、「小川原工業港の建設等の総合的な産業基盤の整備により、陸奥湾、小川原湖周辺に巨大臨海コンビナートの形成を図る」開発計画が予定されており、桐箱にもあるように小川原湖も開発予定だったと聞いています。ところが、湖の水質や特性などが原因となり、後に小川原湖は開発予定地から外されました。このことから桐箱が作られたのは、湖の開発が延期されるよりも前だったと推測できます。

 またデザインについては、むつ小川原一帯には企業が誘致される予定でしたので、石油備蓄基地以外にもさまざまなものができるだろうという期待感もあり、こうした未来像を希望したデザインが施されたのかもしれません。コインの作り自体は精巧とは言い難いですから、おそらくはどなたかが当時の開発を記念して個人的に制作されたものではないかと思います。

このコインは一体何なのか……

ドライブインの展示品だった“桐箱入り”コイン

 ねとらぼ編集部ではJOGMECの担当者が話していた“桐箱”の存在にも注目。桐箱入りコインの持ち主を探しました。するとTwitter上で1人の持ち主と連絡が付き、当時の入手経路などを聞くことができました。

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