新型コロナの影響でリモートワークに 同棲“エンジニア”カップルの働き方が早くも同人誌に:司書みさきの同人誌レビューノート
スピード感ある。
桜咲く季節。春から新生活を始める方はもとより、ここのところ何かと落ち着かなく、暮らしのリズムや環境がぐぐっと変わった方も多いのではないでしょうか。お仕事を、急きょ自宅で行うようになったお話もよく聞くようになりました。今回は、早速そんなリモートワークのエピソードをまとめられたご本です。
今回紹介する同人誌
『ねこはうす通信創刊準備号』 24ページ 表紙・本文カラー
著者:のりこ
同棲しているカップルが両方リモートワークになった話
作者さんはおよそ15年ほど前からリモートワークの経験のあるエンジニアさんです。そして2020年2月、同棲しているお相手の方もリモートワークに突入。「ええ! この狭い家でどうしろと!」と困惑しつつもお2人のリモートワーク生活がスタートします。
主に使ってみた道具のことや、お互いの過ごし方についてかわいくポップなマンガで描かれ、後半には作者さんの長いリモートワークの経験も文章でつづられています。
あるある! ありそう! が生み出す和やか空気
話題は決してシリアスではなく、机はどうしよう? 使い心地は? と言った、はじめてのリモートワークでのちょっとしたエピソード集となっています。
例えば「自宅に居ながら会議に参加する際、もう一人はどうしていたらいい?」問題。片方にたまたま外出する用事があればいいけれど、普通に隣にいたら会議の中身を聞いてしまうことに……。そんなときお2人が採った解決方法は「ヘッドフォンをして大音量でメタル音楽を聞く!」。お相手の方も「えっ」と驚きつつも結局のところこの方法を実施中とのこと。こういう場面って自分は体験していなくても、その事態が簡単に想像できますし、実体験をもとにしているから、日常に即した解決方法がリアルで腑に落ちます。
ご本は「これ一冊でリモートワークがスタートできる」という教本タイプではありませんが、ほんわか絵柄のままに、自宅での仕事を馴染ませていく様子を和やかに追うことができます。何か物事を知ろうとするときに実際のノウハウが役に立つのはもちろんですが、何気ないちょっとした「そうそう、そうなんだよね」「ああ、こういうことって起こるんですね」とうなずくような「あるある」の気持ちに一緒になれるのも、新たな環境に戸惑う折りの一つの安らぎになるのではないでしょうか。
まとめる即効性と、手にする楽しみの両立
こちらの作品はダウンロード版のみ、なんと無料で公開されています(詳細は以下の「サークル情報」にて)。線のはっきりした読みやすい絵柄のマンガは小さなスマホの画面に読むのにも向いていました。多くの方が新たに取り組むことになった事柄に向け、ご自身の経験を生かしてスピーディーにまとめられた即効性に拍手を送りたいです。そして今後はITエンジニアさん向けの話題を中心にした『ねこはうす通信創刊号』を紙媒体の同人誌でも予定されているとのこと。また同人誌即売会で出会うのを楽しみに待ちたいです。
今週の余談
急に忙しくなった方、のんびりすることになった方、気持ちが落ち着かない方……どうぞ自分を甘やかしてあげてくださいね。少し暖かくなってきたので、冷たい飲み物もおいしいですし、この時期に熱いお茶を味わうのも良いものですよー。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
関連記事
「10年後には朽ちるものを100年後に延ばす」 博物館の裏方描いた漫画が驚きの連続
『ただいま収蔵品整理中!Vol.1』『ただいま収蔵品整理中!金属保存編』をご紹介。アフリカで初音ミクのライブをやってみた 一人の教師が実現させた異国の”ミクライブ”
今回は初音ミク愛にあふれた『Miku in Africa』をご紹介。決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』
忘れたと確信したときのドキドキ感……。全国各地の“恐竜像”を1冊に 220カ所ものスポットを紹介した「日本全国恐竜公園ガイド」にワクワクする
そんなところにもいるの!?こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。国体初のマスコット”未来くん”を小説に 同人誌『古都こと奇譚』は京都を舞台にしたキャラクターたちの物語
皆さんの町にも、人気を博したキャラクターがきっといるはず。炎の揺らめきと溶けた金属 職人自ら撮影した鋳物製造の写真集『滴る金属』
こだわりが詰まってる。“お江戸のコミック”を現代語訳 同人誌『黄表紙のぞき』が江戸文化の扉を開く
難易度の高かった「くずし字」を読みやすく。これまで撮った「片手袋」の写真は4000枚超 築地に通って約20年、“片手袋研究家”による同人誌が奥深い
趣味、ここに極まれり。理学部生だったあの頃の自分に伝えたい 作者の後悔から生まれた同人誌『理学部生を手伝うイモリ』
イラストはかわいいけど中身はマジ。“テレポートするナメクジ”を追った5年間 調査の内容をまとめたレポマンガに興奮を隠せない
104ページという力作。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.