見る、食べる、愛でる―― イカ愛好家たちによる同人誌『いか生活』でイカの魅力を再確認 :司書みさきの同人誌レビューノート
イカパーティ―が気になる。
さてさて、今日のごはんのメニューはどうしましょう? お肉料理で力をつけるのもいいですし、そろそろ鰹のたたきって旬じゃないでしょうか? 考えながらお店の魚を見ていると、いつもそこに白く輝いているような……今回は、白いその身で多数の人をひきつける「イカ」の同人誌です。
今回紹介する同人誌
『いか生活 vol.1』A5 28ページ 表紙・本文カラー
著者:佐野まいける(編集長)
どの方向から楽しむ? イカの魅力づくし
「生きているだけでこんなに美しいものか」。このご本の編集長さんが感じられた思いが、ページを開くとつづられていました。
海を泳ぐイカ、そう、あのイカが大好きな方々が集まり、おのおのがどのようにイカにひかれ、接しているのかを記しているのがこちらのご本。見開き1ページごとにテーマが変わり、10人が入れ代わり立ち代わりで、さまざまな方向からスポットを当てていきます。
基本的なイカの種類の情報からはじまり、イカとの出会い、イカと水族館、イカをイメージしたカクテル、イカアクセサリー……とにかくバリエーションが豊富です。ご本の中で皆さまの熱い語りとともに、「イカの美しさ」にたびたび触れられているのもうなずける輝くようなイカ写真や、ハンドメイドのイカアクセサリー、イカ墨を使ったイカの絵などがカラーで収録されていて、「イカが好きな方には、こんな風に見えているんだ!」と楽しく読み進められます。
見る、食べる、愛でるの一体感
イカの魅力、「おいしさ」にももちろん注目されています。ベトナム在住の方が現地で見つけたイカスナックや、イカを使ったラーメン店紹介、そして小麦粉や天草でイカらしきものを作り出してしまう試みまで、イカとおいしさが深く関係していると分かるラインアップです。
カリフォルニアでアオリイカの生態を研究している方のページ内で、「日本にいるときはイカが身近すぎた」と話を聞いたエピソードにはっとしましたが、確かに意識しなくても、私たちは日常のあちこちでイカと出会う生活です。それは主においしい食べ物としての出会いです。一方、このご本ではイカの美しい姿や生育といった方面からもアプローチがなされています。けれど、それらを分離させずに、丸ごと愛でていく! という一体感が本を包んでいるように感じました。
この先にまだ続くとは! 広がるイカ愛
ご本に参加されているのは、カメラマンさんだったり、水族館の職員さんだったり、職業ごとイカに通じている方もいらっしゃれば、ただただイカへの思いを語る方もおられ、立場を超えたイカへの思いがページをつないでいるようです。
ご本の最初では編集長さんが一人感じた静謐(せいひつ)なイカとの出会いから、終盤の記事にはイカ好きが集う会の様子や、イカをテーマにしたイカパーティ開催の話題に移っていくのは意図された構成でしょうか。イカという一つの生物に的を当てながら、多人数が参加しているからこその視点の豊富さ、そしてイカを通じて人と人が結び付いていくことまでを含めて、その魅力の奥深さを感じます。
さらにこちらのご本は続巻も予定されているそうです。まだまだ掘り下げることがあるとは! とびっくりしながら、その広がりを楽しみに待っていようと思います。
サークル情報
サークル名:日本いか連合
Twitter:日本いか連合Twitter(@japan_ika_union)、佐野まいける(@_maicos_)
ブログ:いか生活内容紹介ブログ
現在入手できる場所:
【取り扱い書店】シカク(大阪府此花)書店(通販あり)、古今東西雑貨店イリアス(東京都谷中)雑貨店、のらいぬ(函館市入船漁港)カフェ、BREWBOOKS(東京都荻窪)書店(通販あり)
参加予定イベント:博物ふぇすてぃばる!7(2020年9月12日、博ふぇす自体は13日も開催されますが、日本いか連合が出店するのは12日のみ)
その他:いか生活vol.2を5月の終わり~6月初めに発行予定。詳細はTwitterなどで告知
今週の余談
思わぬ事態で、いつものような混雑に飛び込む同人誌即売会は一休みになった連休。でもどんな方向で皆さまが創作を続けていくことができるのか、その模索がもう始まっているのを感じています。私もアンテナを張って楽しみたいと思います!
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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