「強すぎ削除しろ」が現実に 人気ポケモンが消えたポケモンバトル界に今こそチャレンジすべき理由:芸人ヤマクエの「俺のゲーム愛を笑うな」
フライゴンを使おう。
9月1日から「ポケットモンスター ソード・シールド」のランクバトルにシリーズ6が到来。ミミッキュを始めとした上位のポケモンが軒並み使用禁止となり、ポケモントレーナーの間で大きな話題を呼びました。
「〇〇が強すぎるから削除しろ!」という声はポケモンのみならず多くの対戦ゲームで聞かれる意見ですが、それを(おそらく一時的とはいえ)実際に行うゲームはまれなこと。これにより、緻密な計算や読みで成り立っていたポケモンバトル界隈は、大きな変化を迎えているようです。
そこで、「芸人界最強」を自称するポケモン芸人・ヤマグチクエストさんに今回のバランス調整について語ってもらうことにしました。これを読むとあなたもポケモンバトルにチャレンジしたくなる……かもしれません。
ライター:ヤマグチクエスト(Twitter)
笑いを忘れたゲーム好き芸人。中でもRPGやシナリオの思い入れが強く、「伏線」「考察」と聞いただけでよだれが出る。あと野球も死ぬほど好き。一番好きなゲームは「ポケットモンスター」シリーズ。
過去にねとらぼで取材した記事:「ゲームやってない奴って話がつまんなくないですか?」 ガチゲーマー芸人「ヤマグチクエスト」のゲームへの異常な愛情
「人気ポケモン使用禁止」の衝撃
ことの発端は8月20日。お昼ごはんを食べたあとふとTwitterを開くと、私の目にとんでもない大ニュースが飛び込んできました。
「9月よりシーズン8ランクバトルで使用率トップ10に入ったポケモンが使用禁止に!」
あまりの大ニュースにその目を疑いましたが、どうやらこれはまぎれもない事実。それからというもの、私は生活・思考の半分以上をポケモンのパーティ構築に奪われた操り人形と化し、今日に至るまで夜も眠れない日々を過ごす羽目になっています。
そこで、今回は人気ポケモンが使用禁止となったことで誕生した「初心者さん! 始めるなら今ですよ!」環境についてお話していこうと思います。
ポケモン史上、前例のない豪快すぎるバランス調整
これまでのランクバトルでは、ミュウやミュウツー、ムゲンダイナといったいわゆる「伝説級ポケモン」の使用が禁止されてきました。一応、カジュアルバトルでは使用できますが、主流であるランクバトルでは「最初から」使うことができないので、彼らについては特別議論されることもありませんでした。一方、今回使用禁止となったポケモンたちはソード・シールド発売から2020年8月末まで使えていたのに、ここにきて「強いからもう使っちゃダメね」(意訳)ということになってしまったのです。
理由は単純。彼らは対戦環境においてあまりにも幅を利かせていたのです。
特に、自身のタイプを使った技のタイプに変化できる特性「リベロ」を持つエースバーンは、覚える技の範囲も広く、ステータスもバランスよく高いためほとんどのパーティで見受けられ、10戦やれば8、9回は遭遇するレベル。このころのポケモンバトルはもはや、「エースバーンをどうやって止めるか」というゲームであったといっても過言ではなく、「パーティ構築は、エースバーンと、エースバーンに勝てるポケモンを入れるところから始める」ことがセオリーとなっていました。
さらに、とんでもないすばやさと優秀すぎるタイプと広い技範囲を誇るドラパルト、登場時から「困ったら入れとけ」と言われ続けている超便利屋ミミッキュなど、今回禁止された16体のポケモンが入っていないパーティに当たることはほぼないという状況でした。
その結果、これらトップメタになったポケモンたちだけでなく、彼らの対策として使われている特定のポケモンばかりが対戦環境にはびこるようになり、「本当にポケモンって800体以上いるの? 30体くらいしかいなくね?」と思わせるほど環境が停滞していました。
ただ、何度も対戦を重ね、情報が次々に更新されていく中で、環境に“結論が出る”のは当然のことで、決して誰かが悪いということでもありません。みんな最適解を追い求めているわけですから。まぁ、でも、しいて言うならエースバーンが悪いです。
しかし、強ポケモンばかりになってしまうといつかみんな飽きてしまうでしょう。そこで今回の大幅なテコ入れが行われた、ということです。ランクバトル界において幅を利かせすぎたばかりに何度も思った、「こいつら強すぎだろ削除しろ」といういちゃもんに近い願いがまさかかなうとは思ってもみませんでしたし、実際にトレーナーたちに与えた衝撃は尋常ではありませんでした。
今回の調整で16体のポケモンが使えなくなった、要は「選択肢が減った」わけですが、前述したようにこいつらは環境を停滞させる原因になっていたポケモンたち。言い換えれば、今の環境は「選択肢が減ったことで逆に選択肢が増えた」という奇妙な状況が生まれているのです。
今までの調整が無に帰した
ポケモンの場合、今回のような調整が行われても、次点の人気ポケモンたちがそのまま繰り上がりで人気になるとは限りません。
なぜなら「禁止となった人気ポケモンたちに強い」という理由で使われていたポケモンや、その逆の「人気ポケモンたちに弱すぎて使い方が難しかった」ポケモンが数多くいるからです。
つまり、これまで対戦環境でほとんど日の目を浴びてこなかったポケモンや、強すぎるポケモンの登場で完全に役割を失ってしまったポケモンたちに新たなチャンスが巡ってきたのです。
ポケモン対戦ではステータスをある程度こちらで調整することができますが、その調整の多くは「今回禁止されたポケモンを対策する前提で計算されたもの」でした。例えば、すばやさが非常に高いドラパルトよりも早く動くために、素早さを上げるアイテムを持たせたときにすばやさが最速のドラパルトより「1」上回るように調整したり、「つるぎのまい」で攻撃力が上がったミミッキュの攻撃を2回耐えられるようなHP・ぼうぎょに調整してみたり、などです。
今回、こうしたトップメタを意識した調整がほぼ無意味になります。ドラパルトより早くしたところでもうドラパルトはいないわけですから、その分のステータスをほかに割り振ったほうがいい。もっと言えば、そのポケモンをドラパルト対策として入れているのだとしたら、他のポケモンにしたほうがいい可能性すらあります。このように今までの調整と今までの情報が実質「無に帰した」わけです。
しかし、だからこそ「今始めてほしい」のです。今までプレイしていたトレーナーたちがほぼ1からのスタートになった今が、ほぼ横一線で始められるベストタイミングであると思うのです。
フライゴンが初めて活躍できる世界
ロトム、ウーラオス、アシレーヌ、マリルリなどの人気ポケモンを抑え、今現在最も人気を集めているポケモンが「パッチラゴン」です。もともと高火力と優秀な技範囲を武器に活躍していたこのポケモンは、天敵だったミミッキュ、ドラパルトなどが禁止になったことで活躍の場を大幅に広げています。現状、安定してパッチラゴンを止められるポケモンが少ないため、今後勝てるパーティを組むためにはパッチラゴンを使う、もしくは「パッチラゴンをゴリゴリに対策する」ことが必要です。
またパーティ構築の面では、古くからポケモントレーナーたちに語り継がれてきた、サザンドラ+ギルガルドのコンビ「サザンガルド」にも注目が集まっています。
「サザンガルド」はサザンドラ(あく・ドラゴン)の弱点であるかくとう技をギルガルド(はがね・ゴースト)は無効にでき、ギルガルドの弱点であるじめん技をサザンドラは特性「ふゆう」で無効にできる、などお互いの弱点補完が完璧なコンビです。これまでのエースバーン、ドラパルト、ミミッキュがはびこる環境ではギルガルドやサザンドラが活躍する機会はほとんどありませんでしたが、ドラパルトやミミッキュがいなくなったおかげで、一気にサザンガルドの需要が増したわけです。
そして、こんな環境の中で脚光を浴びているのが「フライゴン」。フライゴンはドラゴン・じめんという優秀な耐性をもつタイプで、ドラパルトを除くドラゴンタイプの中では現時点で2番目のすばやさ数値を誇ります。タイプ相性とすばやさの値により、流行しているパッチラゴンや「サザンガルド」にも強く、“現環境では”とても優秀なポケモンです。
ですので、皆さま、ぜひフライゴンを使ってあげてください。フライゴンが環境に刺さる日がようやくやってきたんです。この子が「強い!」ともてはやされる時間は、もしかすると「ヤツ」が来るまでの期間限定かもしれない。でもだからこそ、「ヤツ」がいない今は使ってあげてほしいんです。
ポケモン界の主人公こと「ガブリアス」がやってくる
「ヤツ」とは、ポケモンバトルをかじった経験がある人間であれば誰しもが知っている、あまりの強さと優遇ぶりからポケットモンスター界の「主人公」とも呼ばれた超優秀ポケモン「ガブリアス」のことです。
ガブリアスの強さは、高い攻撃力と耐久力、そして計算されつくされた(としか思えない)素早さにあり、特にすばやさ種族値「102」という固有の値は、すばやさ激戦区の「(すばやさ)100族」をギリギリ上回るという絶妙な高バランス調整を受けているため、トレーナーたちからはしばしば「露骨な調整」といわれています。
ちなみにフライゴンがガブリアスに勝っているステータスは1つもありません。加えて、フライゴンもガブリアスも同じくドラゴン・じめんの2つのタイプを持っていますから、ガブリアスはフライゴンのほぼ完全上位互換といえます(一応、フライゴンは特性「ふゆう」でじめん技を無効にでき、「りゅうのまい」を覚えることができるので差別化はできます。使ってあげてね)。
しかし、ガブリアスは現時点ではまだ入手することはできません。今後配信される予定の有料コンテンツ「冠の雪原」に登場するとされているので、ガブリアスの登場までの間だけでも、フライゴンの強さを体感してあげてください。お願いします。
世はポケモン大航海時代
ポケモンバトル上達の一番の方法は「自分のコンセプトを貫く」ことだと思っています。
「○○のが流行ってるから対策でこれを入れて……」という構築も悪くはありませんが、パーティの強みを相手に依存しているために負けた原因も相手に依存してしまいがちです。一方、好きなポケモンや活躍させたいポケモンを軸にパーティを組んだ場合、うまく機能しないときやそもそも選出すらできないときに「自分のパーティに足りないもの」が見えやすくなるので、最初はそうやってパーティを構築した方が良いと考えています。
今の状況で最善のパーティーを組むことは難しいですが、それは上級者たちも同じです。
新しい対戦環境の中で、どんな技やポケモンが増えるのか、だとしたらどんなステータス調整をすればいいのか、1からのスタートになったからこそ、今まで誰も注目していなかったポケモンを使用して結果を出せば「俺が流行らせた」と名乗りを上げることもできます。
これまでの経験値の差が「強いポケモン」の使用禁止により、かなり縮まりました。世は、ポケモン大海賊時代。将来、世界を席巻する「大怪物ルーキー」となるのは、これを読んでいるそこのあなたなのかもしれません。
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