レビュー

目で楽しむ華麗なサイコロの世界 小説がテーマになったものや、4つ組み合わせると十字が浮かび上がるものまで司書みさきの同人誌レビューノート

手元に置いておきたくなるデザイン性。

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 おうち需要の高まりで、室内で遊ぶゲームが人気だそうですね。今回の同人誌は、電源不要のアナログゲームでよくお目にかかる小さな小さなアイテム、サイコロのご本です。

今回紹介する同人誌

『せかいのぶひん』A5 12P 表紙・本文カラー

著者:ダイスデザイン/製作:珠(珠工房)、冊子編集/デザイン:ナカタヒサ(久遠堂)


さまざまな色とデザインで一辺16ミリの世界が多彩に

華麗なサイコロの世界が広がる

 英語でダイスとも言うサイコロ。白い本体にぽちぽち丸い模様がついているのが一般的なイメージでしょうか。一方でテーブルトークRPGやボードゲームなど、アナログゲームを楽しむ人たちの間では6面体だけでなく、8面体や10面体などの多様なサイコロが使われてきました。私も10面ダイスや、クリア素材のものを初めて買ったときにわくわくと胸躍らせた思い出があります。

 そのわくわく感が、このご本では倍増して繰り広げられているんです。形こそスタンダードな真四角ですが、一見して「わっ、これなになに?」と手に取ってみたくなるオリジナルデザインのサイコロ11種類が紹介されています。

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12カ月のサイコロたち。思い入れのある月を選ぶか、逆に気に入った花から選んだりと、どれを手にするか迷ってしまいそう!

デザインから思いを知る面白さ

 まずはサイコロの大切な役割、数字を知らせるデザインの豊富さが目をひきます。普通なら1つの丸があるだけの「1」の面にお花が描かれていて、しかもそれは12カ月分それぞれの誕生花が模されているとか、月と蝶、金魚鉢と金魚など、すてきな作品が次々に登場します。例えば、サイコロを4つ組み合わせると十字が浮かび上がる仕様になっているものも。そんな仕掛けを知ったら4つそろえてしまいたくなるではありませんか! また色もカラフルで透き通っていたり、きらきらしたラメ入りだったりと、時に愛らしく、時に重厚な、それぞれに違った雰囲気を醸し出しています。

 こんな多彩なサイコロの世界がページをめくるたびに現れてくるのが、なんとも楽しいのです。本体写真、デザイン画、テキストがすっきりとまとまっているので読みやすいカタログ風でありつつ、モチーフや制作の裏話が添えられることで製作者さんの思いを伝える読み物にもなっていて、中とじの装丁と相まって軽やかに読み進められます。


4つ組み合わせると十字が浮かぶ! わくわくせざるを得ない

物語を秘めた“モノ”を楽しむ

 サイコロたちには名前がついていることも。例えば白詰草が刻印された作品は「はなあかりのよるに」。これは宮沢賢治の短編小説『ポラーノの広場』をイメージして作られたのだとか。それを知ると、透き通った緑に白く浮かぶ花は一層に明るく見え、薄青に金色模様のバージョンは「涼しくなった頃の様子かしら……」と深読みし、清廉なイメージのサイコロはどんなゲームで使おうか、もう、妄想がはかどるはかどる。手のひらに隠れる小さな四角にこんなロマンが詰まっているなんて。

 一方で製作者さんはご本の中でご自身のサイコロについて「一辺16mmの中で完結する作品ではありません」と書かれています。手に取って転がした皆さんとかみ合ってこそ、広がっていくのだと。このご本は“モノ”の背景を知ることができ、小さな16ミリにぐぐっと入り込みますが、それだけで終わらずに、このサイコロを手に取って遊んでみたいという気持ちにつながっていくように感じました。

 すてきなアイテムに実は秘められた物語があることを知ったら、ますますそのお品が魅力的に感じられてきますよね。思いを込めてサイコロを振ると、きっといい良い目が出る気がしてきました!

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本体、数値部分で色違いがあるのもすてきです

サークル情報

サークル名:珠工房

Twitter:@tama_koubou

次回イベント参加予定:2021年3月28日(日)ゲームマーケット2021大阪(インテックス大阪)出展[C-04]、2021年4月10日(土)11日(日)ゲームマーケット2021春(国際展示場青海展示棟)出展(ブース番号未定)

Webサイト:珠工房BASEサイト

入手先:せかいのぶひん

今週の余談

 私はクリアなタイプのダイスに惹(ひ)かれることが多いのですが、奥行きを感じる不透明なものもいいなぁと眺めました。デザインと組み合わせでゲームが始まる前から、手持ちアイテムに物語が宿っているなんて楽しい世界ですねぇー!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

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