レビュー

夏休みの工作にもよさそう リアルな野鳥たちをかわいく再現する同人誌『ぽんぽんでつくる日本の野鳥』シリーズ司書みさきの同人誌レビューノート

おうちに飾りたい。

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 開けた窓から、鳥の鳴き声が聞こえました。街中でも意外と鳥の声を聞きます。街を離れたらもっとにぎやかかもしれませんね。あの鳴き声の主はどんな姿でしょうか。今回は、野鳥の姿をじっくり観察したくなる同人誌です。

今回紹介する同人誌

『ぽんぽんでつくる日本の野鳥』シリーズ Vol.1~3、5→各26ページ Vol.4→25ページ 表紙・本文カラー

著者:大畠幸夫

さまざまな鳥がマスコットに。(左からVol.1表紙、Vol.4表紙)

毛糸で作る野鳥のマスコット

 こちらの同人誌は、毛糸を丸く形にした“ぽんぽん”で鳥のマスコットを作るご本です。毛糸の種類やカットで変化をつけることのできる手芸のジャンルで、動物や鳥もこれまでさまざまなレシピが世の手芸本などで公開されている中で、このご本ではテーマを野鳥に絞り、街で見掛けそうな鳥から絶滅危惧種まで1冊につきおよそ5種類のつくり方を掲載し、シリーズで発行され続けています。

 内容はぽんぽんを作る道具や、使う毛糸、頭・胴体・羽・足などのパーツごとの制作方法について、写真や図を交えてカラーで解説されています。電子形態のみでの発行ですが、すっきりと見やすい構成なのでスマホのような小さめの画面でも見やすく、また作業中に本のページが閉じないように心配しなくていいのは、実は結構うれしいポイントです。

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色の配置や量、手順も細かく紹介(Vol.1)

地味めな色? 実は多彩な野鳥を楽しむ

 作者さんは日頃から野鳥観察がお好きとのことで、茶色や黒の鳥が多くなった巻(Vol.4)ではその地味な色を「唐揚げ弁当みたい」なんておっしゃるものの、随所に隠し切れない鳥への愛がにじみます。

 説明写真に添えられるのは手芸としての作り方解説だけでなく、鳴き声や、生息地域、観察できる時期などについても所々にそっとコメントがあります。ぽんぽんで作った本体に後付けする羽は尾羽・風切羽とそれぞれの特徴をまとめ、足の色も赤や黄色と意外と違いがある点など、読んでいるうちに「身近にいそう」「見たことあったような気がする」と漠然としたイメージから、「一つ一つこんな違いがあるんだ」と鳥本体にぐっとピントが合っていくような感覚がありました。茶色や黒と一口で言っても、自然の生き物は微妙で複雑な色あいですよね。それを限られた毛糸の色で再現しながらも、鳥本体へも興味が湧いてくるのは、リアルと愛くるしいマスコットとしての省略を、ちょうどいいデフォルメ具合にまとめられた、鳥好きさんならではの目線があるように思います。


白黒だけでこんなにかわいい! 解説のすずめさんも愛くるしい……!(Vol.5)

直接見ても、図鑑でも。観察眼がかわいさを支える

 首のあたりのラインの微妙さ、くちばしの長さ曲がり方といった、「あっなるほど、ここを押さえると“らしく”なるんだ」という細かいポイントを図や言葉でまとめるのは、さらっと書かれていますが実は大変な作業ですよね。そのポイントに気付くのはやはり、対象をよくよくご覧になっている観察眼だと思いますが、その観察に図鑑や写真もしっかりと取り入れていらっしゃるのがうれしいです。

 例えば夏休みの宿題として「○○を観察して絵を描いたり工作をしましょう」と課題が出ると、私はついついその観察の対象は「実物を見る」ことだと考えがちでしたが、ご本では実物にとどまらず、外出や遠出がままならないいまだから図鑑を開いて楽しんだり、美しい写真に触発されたことを好機としてぽんぽん野鳥制作に向き合われたことが伝わってきます。実物を見て、声や羽ばたきを聞いて、対象に興味を持つのももちろん、資料を活用して腰を据えてじっくり取り組むことも、かわいい作品へとつながっているのですね。

 ご本のシリーズはどんどん増えているようです。お好みの鳥の作り方を探してみるのも、ご本から気になる野鳥を見つけるのも、どちらも楽しそうですよ。

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たくさん集う様子、和みます(Vol.4)

サークル情報

サークル名:めらま~と

入手できる場所:BOOTHBOOK WALKER技術書典

Twitter:@isohiyobig

今週の余談

 例えばぽんぽんマスコットを夏休みの工作や自由研究に生かすとしたら、「本を見て作りました」はもちろん、「観察して好きな鳥を選びました」「声を聞いた野鳥にしました」とか、「好きな鳥をセレクトして夢の野鳥園を作りました」とか、「マスコットに合わせて、詳しい生態を調べてまとめました」とかとかとか、活用の夢が広がります。もー楽しそう!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

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