レビュー

ふわふわした不思議な物体「ケサランパサラン」の謎 実体験をもとに書かれた同人誌にわくわくが止まらない司書みさきの同人誌レビューノート

正体が判明しないからこその良さもありますね。

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 捕まえると幸せになる、お金持ちになる……そんな言い伝えを持つ物体が、いまも世の中にふわふわ浮かんでいるのをご存じでしょうか。今回はさまざまな側面を持つ“ケサランパサラン”の同人誌です。

今回紹介する同人誌

『ケサランパサランの秘密』 A5 22ページ 表紙・本文カラー

著者:マンドラゴラ農場


ふわふわなケサランパサランの秘密とは?

リアル? 伝説? 不思議な存在ケサランパサラン

 ご本によるとケサランパサランは、

球状をしており毛が生えている
空から降ってきたり、雷と共に現れる
捕まえると幸せになる、お金持ちになる
願いをかなえると消えてしまう

という特徴を持っているそうです。

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 不意に現れたり消えたり、願いをかなえたり……昔からの言い伝えにも登場する、まったくもって不思議な物体ですが、興味深いのはケサランパサランにはいろいろなパターンがあることです。

 植物の種? 動物の毛由来? 鉱石の可能性も? と、ケサランパサランを構成している中身から可能性を探ったり、「テンサラバサラ」「ケサラバサラ」などの別名を挙げたりと、ご本では伝説的なこの存在を調べた結果が、写真やイラスト、文章ですっきりとまとめられています。


もしも手元に保管する際の方法まで。“おしろい”を食べさせる説はご存じの方もいらっしゃるのでは?

実体験をもとに秘密に迫る

 ご本のデザインは、ちょっぴり不思議な世界をご案内、といった趣でクラシックでかわいらしい雰囲気があります。しかし、それにとどまらない熱さが内側に秘められているように思います。それは、なんとご本人がケサランパサランを捕まえたことがおあり! という経験に由来しているのではないでしょうか。

 突如として出会ったのは植物らしくもなく、動物の抜け毛でもなさそうなふわふわで……小学生だった作者さんが当時、多摩動物公園に手紙で問い合わせたところ「それはケサランパサランではないか」とお返事があったとのこと。そこから自由研究に取り組み、月日が流れて同人誌にもなり、と幼いころの体験をもとに大人の目線をプラスし、今につなげて形にされています。児童向けの妖怪図鑑、過去の新聞、論文などの各種資料をチェックされている様子などから、一瞬で燃え上がって消える炎ではなく、じわじわぽかぽかと体を温めてくれるじんわりとした熱が続いているようだと思いました。

子どもの頃に出会ったものは出て行ってしまったそうですが、作者さんちの「我が家のケサランパサラン」紹介をカラーで

正体を知りたい気持ちと秘密を育てる相反する楽しさ

 ご本ではケサランパサランの「ふわふわしたものが手元にやってくることがある」という事実と、「幸せになる」「願いがかなうと消える」といった、受け取り手によって解釈が違ってきそうな不思議の部分が読んでいるうちに交錯し、リアルとファンタジックさの行き来が魅力的に感じられます。

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 作者さんは植物由来と思われるケサランパサランをガラス瓶に入れて保管されているそうですが、「現状、5年ほど経ちますが何も起きておりません…」とそっと書き添えられています。この、謎を解明するだけでなく“何か起こるかも”の気持ちを大切にし、秘密は秘密として楽しむ期待感、すてきです。

 ふわふわな幸せ、意外と近くまで来ているかもしれませんよ。


会いに行けるケサランパサラン情報も

サークル情報

サークル名:マンドラゴラ農場

入手できる場所:架空ストア魔術堂(実店舗)

Webサイト:https://mandragora.mystrikingly.com/

Twitter:@tidoriasshi

次回参加予定イベント:おもしろ同人誌バザール(2021年11月3日)

今週の余談

 それがですね……ちょうどこのレビューを書いている期間に、私も出会ったんですよ。ふわふわ物体に! 対象は階段の踊り場にたたずんでおり、ご本と照らし合わせると植物由来の線が強そうでした。そっと手のひらに乗せたら、ふわーっと風とともにどこかへ旅立たれて行きましたが、なんだかとてもうれしい出来事になりました。

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

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