「WEST EXPRESS 銀河」で、昼下がりの山陽本線を旅してみた!:姫路「兵庫五国酒肴弁当」(1200円)
WEST EXPRESS 銀河に乗り、山陽コース12時間の旅に行ってきました。そこでいただいた「銀河」ゆかりの駅弁の味は……!
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
平成の終わり、鉄道各社がこぞって取り組んだ「豪華列車」の旅。しかし、鉄道旅好きには、少しハードルの高さを感じる列車でもありました。少し背伸びすれば手が届く長距離列車……この辺りのニーズに応えるべく、「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」の3つをキーワードに令和2(2020)に年誕生したのが、JR西日本の「WEST EXPRESS銀河」です。今回は、現在運行されている山陽コースの下り列車に乗車、約12時間の旅を楽しんでみました。
「WEST EXPRESS銀河」山陽コースの旅(第1回/全3回)
通勤・通学客が行き交う、朝の大阪駅に瑠璃紺色の電車が入って来ました。この列車は、「WEST EXPRESS銀河」。令和2(2020)年から、西日本エリアで運行されている新しい形の観光特急列車です。これまで山陰方面(京都~出雲市間)の夜行列車、山陽方面(大阪~下関間)の昼行列車、そして、紀南方面(京都~新宮間)の夜行・昼行列車が運行され、大きな人気を博しています。
「WEST EXPRESS銀河」は旅行商品として販売されており、事前の抽選に当選した方が乗車できます。当初は通常の列車同様、切符を購入すれば乗車できるカジュアルな形が予定されていましたが、コロナ禍もあって、当面の間は旅行商品として販売されています。今回は3月まで運行される山陽方面下り列車の抽選にようやく当選、乗車が叶いました。大阪駅の発車案内に「下関」と表示されると、いよいよ「旅」という気分になりますね。(注)5月からの山陰コースは、「先着順」で旅行商品として販売されます。
座席のバリエーションが楽しい「WEST EXPRESS銀河」!
「WEST EXPRESS銀河」山陽方面の下り列車は、大阪を7:19に発ち、終着・下関には19:45に着きます。山陽新幹線「のぞみ」が2時間あまり(新大阪~小倉間)で走破するところを12時間以上かけて行くのんびりとした旅です。今回はリクライニングシートが並ぶ3号車の普通車指定席に揺られていきます。この他、2号車が女性専用車両、1号車がグリーン車(ファーストシート)、6号車がグリーン個室(プレミアルーム)などとなっています。
夜行列車も想定した「WEST EXPRESS銀河」の目玉とも言えるのが、普通車指定席(クシェット)です。かつてのB寝台の2段式ベッドのようになった区画もあってゴロンとしながら、のんびり移動できるスペースとなっています。かつて夜行列車で感じた魅力は、やっぱり、明るくなってからの「気だるい退屈感」。もう世の中は動き出しているのに、自分はどうしてこんなところで空を眺めているんだという、人生の“究極の無駄遣い感”が贅沢なひとときです。
長時間乗車を想定した列車ということもあって、フリースペースが充実しているのも魅力。4号車には誰でも使えるボックスの座席などがあり、少し飽きてきたらくつろぐことができます。また、全席電源コンセント付でフリーWi-Fiもあるので、スマホで動画を楽しむ方もいました。私も線形のいい区間ではPC仕事ができたので、ワーケーションでの利用もアリかなとも。なお、食事の配布や車内販売なども、この4号車を使って行われています。
車掌さんオリジナルの案内放送を聴きながら、銀河オリジナルのパン朝食!
大阪を定刻通り発車した「WEST EXPRESS銀河」。新快速の間を縫って、ゆったりとした足取りで進んでいきます。ところどころ、車窓の案内放送が入るのも、いつもの列車ではないこと。最初の見どころは、東海道本線・住吉駅付近からの朝日を浴びた六甲の山並みです。
三ノ宮を過ぎ、神戸で山陽本線に入ると、今度は須磨の辺りで海の景色が楽しめます。ちなみに放送にはマニュアルはなく、乗務される方がオリジナルの放送を考えているそう。
そんな神戸の美しい景色を眺めながらいただくのは、「WEST EXPRESS銀河」の焼印が入ったパンとコーヒー。昭和21(1946)年創業の神戸・イスズベーカリーがつくるオリジナルのパンには、自家製バタークリームが挟まれ、「銀河」にちなんで星をイメージしたという白と黒のチョコパフがトッピングされています。コーヒーは神戸を拠点とするUCC上島珈琲。姫路までおかわり自由でモーニングコーヒーを楽しめます(共にツアー料金込み)。
「銀河」ゆかりの駅弁も、関西エリアで販売中!
摂津から播磨へ入って舞子駅を過ぎれば、明石海峡大橋の向こうに淡路島が見えます。いまの兵庫県は、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という、歴史も風土も異なる個性豊かなかつての5つの国からできています。とくに淡路国は平安時代まで朝廷に食材を納めていた「御食国(みけつくに)」の1つと云われ、古くから食材の宝庫として知られてきました。いまでは、淡路ビーフや淡路島玉ねぎなどが有名ですね。
パンとコーヒーだけでは、ちょっとお腹が空いてしまいそうという方は、兵庫の食材と「WEST EXPRESS銀河」にちなんだ駅弁「兵庫五国酒肴弁当」(1200円)を事前に買っておくのもいいかも知れません。製造しているのは姫路駅弁のまねき食品。令和2(2020)年、「WEST EXPRESS銀河」の運行開始を記念して誕生、山陰ルートの夜行列車では、夜の姫路駅で立ち売りされました。いまでは姫路・新大阪・新神戸で通年販売されています。(注)5月からの山陰コースでは、金曜発の下り列車で、姫路駅停車中に販売されます。
【おしながき】
<但馬>
- いなり寿司(但馬牛の煮付けのせ) パプリカ
<丹波>
- 黒豆煮(甘露栗のせ、兵庫県産丹波種黒豆使用)
<摂津>
- 鶏もも肉の味噌焼き ししとう素揚げ
<播磨>
- 穴子押寿司 生姜甘酢漬
- 蛸寿司(瀬戸内海産真だこ使用) 酢蓮根
- 姫路おでん風煮物(大根、厚揚げの生姜醤油あんかけ)
<淡路>
- 焼玉葱
- 玉子焼き
- 串カツ
- 甘えび唐揚げ、蓮根天ぷら
- 大根なます きゅうりと海老の酢のもの
淡路島ゆかりの玉ねぎや丹波種黒豆といった兵庫五国の食材が、9つのマスにたっぷり詰まっている「兵庫五国酒肴弁当」。但馬牛のいなり寿司や穴子押寿司をはじめとした、「まねき食品」自慢の味もしっかり入って、いただく人を飽きさせないつくりとなっています。“酒肴弁当”らしくご飯も控えめで、飲み物と一緒に楽しみたい方にはたまらないでしょう。「銀河」の抽選が外れてしまった方も、プチ「銀河」気分を味わえるかもしれませんね。
「WEST EXPRESS銀河」は、途中の土山駅・宝殿駅などで後続の特急列車や新快速に道を譲りながら、大阪から約2時間半をかけて姫路駅に到着しました。約5分停車して、乗務員さんの交代が行われます。さあ、まだ旅は始まったばかり。終着・下関までは、約10時間を残しています。ここからは、「WEST EXPRESS銀河」山陽コースの目玉となる、おもてなしや車内販売が行われる岡山エリアへと入っていきます。
(初出:2022年2月21日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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