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鞘師里保「実物の自分と、考えている自分でピントが合った」 元モー娘。の絶対的エース、ソロ3作目でようやく挑める自分の原点(1/2 ページ)

「今の私が過去の私を連れて、一緒にユニゾンして前に進む」そんな気持ちを込めた新作。

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 歌手の鞘師里保さんが3rd EP(ミニアルバム)「UNISON」を11月16日にリリース。ソロアーティストとして復活してから1年3カ月、順調にキャリアを築き上げています。

 2021年8月、ソロデビューEPの発売に合わせたインタビューでは、モー娘。卒業から5年半、その後のアメリカ留学帰国から1年以上、ファンを待たせた理由を「いまの自分のまま大人になってはいけない、自分が変わらなくちゃもっといいビジョンは見えてこない」と答えていた鞘師さん。あれから1年以上ソロとして活動実績を積み、24歳の“大人”となった今は何を考えているのか、再びのインタビューで聞きました。


鞘師里保さん

「実物の自分と、考えている自分でピントが合った」 過去の自分も包括して打ち出す新作

 初めてのインタビューと比べて、言葉の選び方に迷いがないなというのが直接対面した記者が抱いた印象。初のソロ作品に「愛情がすごい」とはにかんでいた初回のときに感じたあどけなさと初々しさが消え、ソロアーティストとしてのビジョンが明確になってきたのだと強く感じさせます。

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―― 最初のEP発売時にもインタビューさせていただいていて、当時と比べて今の鞘師さんがどう変わってきたかを知りたいです。ここまで1年以上ソロ活動をされてきて、どんな手応えがありましたか?

鞘師里保(以下、鞘師) 今まで2枚EPを出してきた中で、毎回その時々で自分の心情に一番合う歌詞、自分に一番合う音楽をちゃんと打ち出してきたと自負しています。

 その上で新作のタイトルに「UNISON」とつけたのは、今の私が過去の私を連れて、一緒にユニゾンして前に進むという意味を持たせたかったから。不安になっていた数年前の自分を連れて、「ちゃんと未来にいけるよ」といえる自信が持てた。

 音楽活動もソロでのライブも昔の自分は憧れていたけど、実現できるとは思っていなくて。1年半前の自分は2歩、3歩後ろにいたような感覚でした。休んでいた期間が長かったからなのかな。そこから人生観を含めて根底から感覚が変わっていった。いろいろな仕事をさせていただき経験を積み、その時の自分の全てを出しきりながら曲を出してライブをしてきた感覚があって、今回のタイミングでやっと今ここにいる実物の自分と、考えている自分でピントがピッタリあったという感覚なんです。

―― 今の鞘師さんの視点で聞き返すと、過去のEPは「当時はこんなふうに思ってたんだ」と感じるということでしょうか?

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鞘師 そうですね。懐かしいような感じがする。1枚目のEPの音源なんて、聞いていると「5年前くらいか?」と。ここまで急スピードでやってきた気がしていて。いろいろな方のおかげですし、それだけ濃い期間をここまで過ごせたということなんでしょうね。

―― パッと浮かぶだけでも、「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さん(ドラマ「俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?」)、吉岡里帆さん(舞台「スルメが丘は花の匂い」)、滝沢カレンさん(日本テレビ系バラエティー「行列のできる相談所」)と異なるフィールドで活躍されている近い世代の方々と共演されてきました。こうした方々の影響は大きいですか?

鞘師 同世代といえば同世代くらい、ちょっとお兄さんお姉さんみたいな方々です。今名前を挙げていただいたお三方とも、お会いするとすごくフレンドリー、というタイプではなく、ちょっと控えめで人見知りという印象が共通しているんです。

―― それは意外でした。

鞘師 だけど皆さん作品を作るときの空気感をとても大切にされている。滝沢さんはたくさんの映画を見ていて、「常にインスピレーションを得ていないとアウトプットできないから途切らせないようにしている」と伺いました。吉岡さんもラジオでいろいろな芸術家やエンターテイナーとお話されていて、あらゆる種類のエンタメに懐が広い。皆さん、おしゃべりなわけではないのに、いろんな人の意見を聞いてそれを自分に取り込むことができている。

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 私の場合「自分だったらこうだ!」と凝り固まっているところがありました。今回のアルバムだと、「UNISON」のオーガナイザーであるカミカオルさんから「DOOM PA」という曲をお薦めされたときは「今の自分にこんな明るい曲できるかな!?」と悩みました。だけど、裏側にある葛藤や、ネガティブな感情をコントラストで引き立たせるにはあえて明るい曲が必要ということもある。それは自分では気付けなかったし、周りからの意見ではっとした部分なんです。

鞘師里保 - DOOM PA (Official Music Video)

―― 視野が広がったということでしょうか。年を重ねて柔軟になったところはありますか?

鞘師 第一線で活躍されている方は何でも受け止める余裕を共通して持っているイメージがあって、接してみて自分ももっとオープンにならなきゃと感じました。視野が広がったし広げなきゃいけない。年を重ねたこともありますね。ブレるのが怖くてどうしても留まりがちな安全圏を確保していたけど、以前より少しだけ広く持てる余裕ができてきた。

―― 前回のインタビューでは、これからソロとしてやっていく上で「音楽6割、演技4割」ぐらいでやっていきたいとお話されていましたが、そのスタンスが功を奏したということでしょうか。

鞘師 音楽活動と演技では直接関わりはないように思えるかも。でも舞台で共演する方、一緒にお仕事する方、皆さん表現者としてたくさんのことを日々考えていて、意見交換をすると気持ちを言語化するのがとても上手。すてきな言葉遣いをされる方がたくさんいるんです。自分も演技をする中でさまざまな役を通じて「こういう手法があるんだ」と新しい自分を見られて、全て養分になっています。

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新しさと原点が同居 いま鞘師里保がダンスミュージックに挑む意味

―― 新作はダンスミュージックが中心。モーニング娘。時代から鞘師さん=ダンスというイメージがあり、そういう意味では原点回帰という気がします。

鞘師 私にとってダンスミュージックは、自分が聞いて育ってきた憧れの存在。今のタイミングだからやっとチャレンジできる。3枚目にして表現の仕方が変わったと感じられる1枚になっていると自負しています。

 カミさんから「里保ちゃんにはダンスという武器があるのだから、絶対ダンスミュージックをやった方がいい」と背中を押していただいたことも大きいです。憧れのジャンルだからこそちゅうちょしていたけれど、チャレンジしてみようと。新しい方向へかじを切っていこうというタイミングに話がでたのも巡り合わせだと感じました。

―― そのためにグローバルで活躍する作家陣との制作過程では、海外留学で培った語学力も生きたのでは? 過去の経験が生きたという意味も含め集大成となっている印象もあります。

鞘師 例えば「WE THE ONES」という曲の歌詞は、英語が半分くらいですが、もともとは全英語詞でそれを私が翻訳というか、自分の価値観を混ぜつつ日本語にするという作業がありました。最終的にはカミさんにレクチャーを受けながら完成させて。発音についてもネイティブではないけれど、勉強した経験が生きたとは思うのでアメリカへ行って良かったとあらためて思えました。

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―― 先行シングルとして「WE THE ONES」が公開された際には「鞘師さんが歌っているとは思わなかった」という驚きの声もSNSでみられました。過去の楽曲とは曲調、雰囲気、歌い方が全然違い私自身も驚きましたがこうした反響は届いていらっしゃいますか?

WE THE ONES

鞘師 届いていますしうれしいです。私自身は反対に「めっちゃ自分らしい」と思っていた曲で、肯定的に受け取ってはいますが違う人っぽく聞こえるというのは意外でした。ラップは自分では気持ちよくできていたんですけど、唯一の不安要素でどういう感想が届くのかドキドキで。ポジティブな声をいただいたので自信になってます。

―― これから控えている(※インタビューは10月末)ツアーでは、ゴリゴリに踊るんでしょうか。

鞘師 ゴリゴリに踊る予定です。

―― 先行公開の曲を聞く限り、言葉が多い曲も多くこれを歌いながら1人で踊るってすごいことでは……? ステージングがなかなか想像できません。

鞘師 グループでも歌える曲だと思いますし、歌詞が交差する部分をどう表現するか悩ましいです。以前より作業が増えて忙しくなりました。レコーディングもコーラスからガヤから量があって、今までと比にならないくらい。

―― コーラス、ダンス、また“1人じゃ歌えない曲”と、どれも過去のグループ活動と現在のソロでの活動の大きな違いです。1人だからこそできたこと、逆に難しくなったこと、それぞれ今のタイミングで感じることはありますか?

鞘師 グループだと歌に専念できる時間と、ダンスに専念できる時間で分かれていたけど、ソロだとバランスを取るのが難しい。どちらも諦めたくないので、うまく実現させるセットリストの組み方とか、見せ方の工夫の必要性をひしひしと感じています。

 今後ダンスを最大限見せるだけのコーナーを作りたい。でもライブでは皆さんと一緒に過ごす時間がすごく大切で、その気持ちをお互いに認識できる時間も作りたいから、どう提案していくか考えなくちゃならない。ただかっこよく歌って踊っているだけ、ただ集まっているだけではもったいない。どうメリハリをつけるかが私の課題です。

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