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アジア系モデル、AIで“白人に変えられた”と告発 当のデザイナーは「写真家がやった」「ファンアート」とのらりくらり

これが多くのモデルが心配していることとの声も。

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 台湾系アメリカ人モデルのシェリーン・ウーが10月29日、自身のSNSで米デザイナーのマイケル・コステロによってAIで外見を「白人に変えられた」と訴えました。シェリーンはデザイナーへ直接苦情を申し立てたものの、誠実な対応をしてもらえないと現状を明かしています。


全くの別人に(画像はシェリーン・ウーのTikTokからから)

 シェリーンは29日、マイケル本人がInstagramストーリーズへ投稿した写真と、実際の出演場面を比較する動画をTikTokへ投稿。マイケルが投稿した画像のモデルは「私ではない」と主張し、「全くもって無礼」と彼女の外見がまるで白人のように修正されていることを説明しました。マイケルが投稿した画像のモデルはもとの写真に比べると、目が大きく瞳の色も変わり、骨格の凹凸が鋭くなって、完全に別の人種、別の人物のように変わっていました。

 シェリーンはマイケルへ、DMでどういうことなのか理由を尋ねたといいますが、マイケルは写真や動画、イラストやAI画像を送ってくるフォトグラファーやアーティストには「何の規制もない」と返答。著作権は写真を撮ったフォトグラファーのものでモデルは有していないことを踏まえ、暗にフォトグラファーがやったことだと主張したといいます。

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 しかしシェリーンがフォトグラファー本人へ尋ねると、彼女の写真に手を加えていないとの回答があったそうです。シェリーンは、フォトグラファーがInstagramストーリーズに投稿していた彼女の写真がオリジナルのものであったことから、この言葉に信ぴょう性があると考え、またフォトグラファーは、マイケルが“モデルが怒っているから”と彼のメッセージを消すよう頼んだと教えてくれたといいます。

 さらに、マイケルと近い別のモデルからは、マイケルがこの画像はAIで白人風に変えられたファンアートと説明しているとのメッセージが届いたとのこと。つまり、マイケルは3人の人物にそれぞれ別の話をしているとシェリーン。その後、マイケルは一切の謝罪もなく“白人風”シェリーンの画像をストーリーから削除しました。

 シェリーンは、まずモデルは顔を知られることが重要とマイケルのショー出演にあたり報酬は受け取っていないとしています。しかしAIで顔を変えられてしまえば機会損失になり、また彼女はこの告発によりモデルのキャリアを失うかもしれないとしつつも「私が立ち上がるべきことだと思ったんです」と勇気を振り絞ったことを伝えました。


ビヨンセなど大物とも仕事をする人気デザイナーのマイケル・コステロ(画像はマイケル・コステロのInstagramから)

 シェリーンが投稿したTikTokの動画は31万回以上も再生され(記事執筆時)、コメント欄には「これがまさに多くのモデルや俳優がAIについて心配していること。投稿してくれてありがとう」「彼は肩をとがらせてドレスの形も変えているよね。つまりこの服を着たら実際どう見えるかも変えているんだ」「加工後の画像もひどすぎる。あなたはとてもすてきだったし正当な報酬を得るべきだった」など、シェリーンに同情し、AIの発達と台頭でモデルや俳優といった職業に懸念される負の影響に言及する声が目立ちました。

 2023年エンターテインメント業界ではAIの発展で俳優や脚本家らの仕事が奪われ、また無断で意図しない形式に改変されてしまうのではとの不安が強まり、全米脚本家組合(WGA)と全米俳優組合(SAG・AFTRA)が立て続けにストライキを開始(全米脚本家組合のストライキは9月27日に終結)。

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 また、リーバイスは3月、デジタルファッションスタジオ「Lalaland.ai」と提携し、より多様性を高めるためにAIで生成されたモデルを利用し、より顧客一人一人の個性に沿った商品を提携すると発表しています。しかし「多様性を高めるため」としたこの取り組みは、モデルやクリエイター、特に白人に比べ圧倒的に仕事を得られない有色人種の仕事を奪うのではないかとの批判も多数寄せられています。

 なお、このシェリーンはInstagramでもこの出来事について訴えていましたが、その後アカウントを削除されたとのこと。英The Guardian紙は、10月31日にマイケルがInstagramへ「画像はAIを使ったファンアートだった」と釈明し、意識せずシェアしてしまったことを謝罪する投稿をしたと報じており、さらにシェリーンの動画による「虚偽の訴え」に対し法的手続きを進めると主張していたとのことですが、投稿はその日のうちに削除されたのことです。

 この記事には、「コステロの方が法的手続きを進めるって、なんで?」「これを報じている大手紙はThe Guardianしか見当たらないよね。もっと広めるべき」「彼女のInstagramアカウントが削除されたのも、ファッション業界仲間が必死に働きかけてるからなんじゃない?」など、業界による圧力を疑うコメントも目立っています。

 なお、シェリーンの告発では、過去にマイケルがセクシュアルハラスメントや人種差別で糾弾されていることにも言及。マイケル自身が2021年、モデルでタレントのクリッシー・テイゲンからSNS上で「人種差別主義者」と非難され、彼女と彼女の友人がかけた圧力によって複数の仕事を失い、精神を病み自殺を考えるまでに追い込まれたと明かしていたものの、この騒動をきっかけとしてマイケル自身が行ったハラスメントなどが次々に露呈しました。なおクリッシー側も、過去にネット上で何人かの人物に嫌がらせをしてきたことが発覚し、のちに謝罪しています。

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