「今だから明かすはやぶさ帰還1カ月前」 川口プロマネが打ち上げ8周年に語る

「大気に還った「はやぶさ」、今、この瞬間にも、我々のすぐそばを通っているのかもしれません」――川口プロマネが打ち上げ8周年に寄せて語っている。

» 2011年05月10日 11時25分 公開
[ITmedia]
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 「関係者が本当に肝を冷やした一瞬でした」――小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネジャー、川口淳一郎氏が5月9日、打ち上げ8周年に寄せたメッセージを掲載し、1年前を振り返っている。

 1年前の5月ははやぶさ帰還の1カ月前に当たり、プロジェクトチームは11日にイオンエンジンの起動試験を行っていた。このときエンジンが起動しない問題が発生。その後エンジンは再度起動したが、関係者は「本当に肝を冷やした」と川口氏。これをきっかけに、残りのイオンエンジンの運転について一層の細心の流量調整を行うことにしたという。「予め注意を与えてくれたとでもいいましょうか。幸運だったと思います」

 また11日はJR東日本が東北新幹線E5系「はやぶさ」を発表した日でもあった。

2009年3月に寝台特急「はやぶさ」が廃止になり、我々の命運を予め告げられたようでした。当時はイオンエンジンの中和器引き出し電圧がじわりじわりと上昇しつづける中、果たして帰還まで持ちこたえられるのか、大変に不安をもって運用に臨んでいた最中のことでした。

碧(みどり)色という特徴ある車体の新幹線「はやぶさ」の登場は、一旦命運もつきかえた探査機「はやぶさ」が再び息をふきかえし、1ヶ月後に地球に帰還するのも叶うかもしれない、そんな期待をわれわれにも抱かせるもので、たいへん励まされました。(川口氏)

 その翌日の12日には、はやぶさは搭載の星姿勢計を地球方向に向け、地球と月を撮影した。地球と月を直接確認できるこの機会を、同氏は心待ちにしていたという。「地球はまばゆいばかりに明るく、画像は強いスミアの影響を受けましたが、月もくっきりと写っています」と当時同氏は特設サイトに記していた。またこのとき、「吾行かん 輝き潤む 碧き星 手がかり孵(かえ)す 終(つい)のひと駆け」という歌を特設サイトに詠み人不詳で寄せたとしている。

 はやぶさはその1カ月後の6月13日、大気圏に突入し、小惑星イトカワのサンプルの入ったカプセルをオーストラリアに落下させて燃え尽きた。はやぶさは「おつかい」を成功させ、カプセルにはイトカワ由来の物質が入っていたことが判明した

 「大気に還った「はやぶさ」、今、この瞬間にも、我々のすぐそばを通っているのかもしれません。無くなったわけではないと思えるところです」(川口氏)

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