特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙 でも東京ドームが「発電MAN」を待っている全身タイツで自転車こいで発電(1/2 ページ)

赤い全身タイツをまとい、僕はこれから「東京ドーム発電所」で「発電MAN」になる。まるでヒーローになった気分だ。通行人の視線が痛いが、気にしない。ヒーローというのは孤独なものさ。

» 2011年07月29日 19時40分 公開
[やまも&みやまき,ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
ヒーローカーの停電を阻止する男、スパイダーマッ!

 僕の名前は“やまも”。皆からそう呼ばれている。山本だからやまもだ。シンプルだろう? それはさておき、僕はこれから東京ドームで「発電MAN」に変身する。コスチュームは赤い全身タイツ。スパイダーマンにでもなったような気分だ。何も知らない通行人がけげんそうにこちらを見ているが、気にしない。ヒーローというのは孤独なものさ。

 僕の今回のミッションを紹介しよう。読売巨人軍が節電への取り組みの1つとして実施している「東京ドーム発電所」プロジェクトだ。一般から募集した「発電MAN&WOMAN」に、巨人戦を見ながら自転車をこいで人力発電してもらい、その電気をヒーローカーの動力に使う。

世を忍ぶ仮の姿

 普段は記者として働いているが、それはどうやら世を忍ぶ仮の姿だったようだ。今こそ、本当の姿――「発電MAN」としての“やまも”――をお見せする時が来た。戦いの日・7月27日の全記録をお届けしたいと思う。全身タイツがピチピチだからってどうか笑わないでほしい。いまダイエット中だから……。

こんな軽さなら余裕、よゆ……ぜぇぜぇ……

 東京ドーム発電所は、東京ドーム3階ライト側にある小部屋に設置されている。普段は警備員の詰め所となっており、窓からはドーム全体が見渡せる。ここに、スポーツジムにあるフィットネスバイクを発電用に改造したものを5台並べた。一定の速さ以上でペダルをこぐと発電できる仕組み。床に置かれた電光掲示板には発電量をリアルタイムに表示する。

東京ドーム発電所からの眺め
スポーツジムにあるフィットネスバイクを発電用に改造
発電量が表示される

 東京ドーム3階は、セレブな雰囲気のプレミアムラウンジが広がるフロアだ。東京ドームホテルが提供するビュッフェも楽しめる。座席もふかふかだ。スーツなど野球観戦とは思えないフォーマルな格好で歩いている人も多い。おいおい、戦いの場にしてはラグジュアリーすぎないか。僕は庶民の味方、そわそわしてしまうよ。

 共に戦う仲間は、中年の男性3人と高校1年生の女性1人。皆、熱烈な巨人ファンだ。当初は7人で交代しながら発電する予定だったが、2人が急に来られなくなり、計5人になってしまった。交代要員がいないことを当日に告げられ、ちょっぴりたじろぐ仲間たち。「5人でも大丈夫ですよ!」「頑張りましょう」と励まし合う。

 この日は巨人対横浜戦で、プレイボールは午後6時。その前に準備運動も兼ねて、ラジオ体操をすることになった。なんと、曲を流すために用意されたラジカセまで人力発電で動かす仕組みになっている。メンバーの1人が自転車をこぎ出すと、ちゃんとラジオ体操の音楽(なぜか英語バージョン)が流れてきた。

ヒーローの素顔は秘密です
最初に説明を受ける
ラジカセも人力で動かします

 4人のウォーミングアップが終わった頃、自転車をこいでいたメンバーだけは息を荒くしていた。「たった3分でそんなになるの? またまたご冗談を」と半信半疑で、僕もサドルにまたがり、足を動かしてみた。フィットネスバイクほどの負荷は感じないぞ。今度は30秒全力でこいでみる。こんな軽さなら余裕、よゆ……ぜぇぜぇ……。

 30秒間の発電量は「1.176Wh(ワットアワー)」だった。目標は試合終了までに7人合わせて300Whだ。全然ダメだ! このペースでは約2時間全力でこぎ続けなくてはならない。5人で割ったとしても、1人20分以上だ。30秒でも汗だくなのに……。仲間たちの目もうつろになっている気がする。やはり、大いなる力には、大いなる責任が伴う。

もう一人の敵、それは

ヒーローカーの守り人たち

 さあ間もなくプレイボールだ。「レッツゴージャイアンツ」のかけ声とともに、僕らもミッションを開始する。ヒーローカーを見て笑顔になる子どもたちのため、節電に取り組む日本のため、エコな地球の未来のため、発電MAN&WOMANとしてのプライドを守るために――。

 「シャーシャー」「ガシャガシャガシャ」――ペダルをこぐ音が東京ドーム発電所に響く。試合は目の前の窓越しに見えるが、テレビの野球中継のように実況や解説は聞こえない。部屋は意外と静かだ。誰かがペースを上げると、ほかのメンバーのペースもつられて上がってしまう。

 試合が動いたのは2回の裏。部屋からかなり近い距離にボールが見えた。巨人の5番、阿部慎之助選手の1発だ。観客の歓声が聞こえてくる。発電MAN&WOMANも巨人ファンの血が騒ぐ。5人のペースは最高潮に達していた。まだ2回だけど。

乗るバイクの位置は休憩ごとに交代する

 僕たちは攻守交代のタイミングで休憩を取る。スタッフのお姉さんたちが水やスポーツドリンクを持ってきてくれるのだが、あまりゆっくりしている時間はない。目標の300Whを発電する以前に、僕の足は9回までもつのだろうか。さっきから両足が“まじでつりそうな5秒前”だ。

 3回が終わり、翼が必要だと思った僕は持参したレッドブル(※)を飲もうとした。あれ? ないっ! ビニール袋に入っていたレッドブルが消えている。そして、同行した先輩記者も消えている。まさか……。

 信じられない。ずっと「大変そうねえ」と眺めていただけの先輩がプレミアムなシートに座り、僕のレッドブルを勝手にごくごく飲んでいる。赤いコスチュームがブラックスパイダーマンのように、黒く染まっていく気がした(汗でぬれただけです)。もう一人の敵、それは「自分」……じゃなくて「先輩」。

※レッドブルは取材用の小道具です。東京ドームでは缶の持ち込みが禁止されていますので、ご注意ください。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/17/news061.jpg ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  2. /nl/articles/2502/18/news140.jpg 職場で21歳上の女性上司に“一目ぼれ”→猛アタックして交際&年齢差を乗り越え結婚 夫妻が波乱語る
  3. /nl/articles/2502/18/news090.jpg 伊勢丹で販売の高級バレンタインチョコに「カビによる汚染」発覚…… 回収・返金へ
  4. /nl/articles/2502/18/news092.jpg 「悲しみに暮れてる」 サイゼリヤがメニュー改定→“定番商品”消滅にショック広がる 「大好きだったのに」
  5. /nl/articles/2502/18/news011.jpg そうはならんやろ! あどけない女の子が約45年後には…… “とんでもないギャップ”に爆笑 「立派に育ってw」
  6. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  7. /nl/articles/2502/18/news005.jpg 咳き込んでいたら、愛犬が寄ってきて…… ぽとりと置いたぬいぐるみに「なんて優しい子」と大反響 1年後の現在、飼い主に話を聞いた
  8. /nl/articles/2502/18/news151.jpg 父は時任三郎、母は元モデルの“33歳俳優”が「ダンディー」と話題 海外生まれで大卒後に俳優として活躍中
  9. /nl/articles/2502/18/news014.jpg 不要になったペットボトルに種をまき、3カ月育てたら…… 驚きの成果に「すごっ!」「素晴らしいアイディア」
  10. /nl/articles/2502/18/news047.jpg 母が7歳娘のために“ほぼ100均コーデ”を手作りしたら…… 信じられないクオリティーに驚き「マジすごい」「おしゃれすぎ」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  4. 雑草ボーボーの荒れ地に“牛3頭”を放牧→2週間後…… まさかの光景に「感動しました」「いい仕事してますねぇ〜!!」
  5. “この子はきっと中型犬サイズ”と思っていたら……たった半年後とんでもない姿に 「笑わせてもらいました」
  6. 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
  7. 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
  8. サイゼリヤ、メニュー改定で“大人気商品”消える 「ショック」悲しみの声……“代わりの商品”は評価割れる
  9. ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  10. 「さすがに無神経な内容」 “暴言受けた”伊藤友里が降板発表→岡田紗佳の直後の投稿に批判の声 Mリーガーも反応
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議