「プレイステーション」はハードからブランドへ――アンドリュー・ハウス社長兼CEOが語る「プレイステーション」の未来社長交代でプレイステーションはどう変わる?

9月1日より新たにSCEの代表取締役兼グループCEOに就任した、アンドリュー・ハウス氏によるラウンドテーブルが開催された。そこで語られた、プレイステーションの未来像とは。

» 2011年12月16日 08時21分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

PS Vitaの予約は好調、海外展開にも手応え

画像 アンドリュー・ハウス氏。SCE本社にて長らく北米市場のマーケティングを担当しており、日本、北米、ヨーロッパの3市場に明るい。日本語も流ちょうに使いこなす

 PlayStation Vitaの勝算は? プレイステーション 4の開発は? ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の代表取締役兼グループCEO、アンドリュー・ハウス氏が12月15日、複数媒体を招いたラウンドテーブルを開催し記者らの質問に答えた。

 真っ先に聞かれたのは、現行のプレイステーション 3に代わる次世代ハードの話題。しかしハウス氏はこれについて「みなさん予想されている通り、現時点では何もコメントはできません(笑)」と即答。PS3は今がまさに収穫期であり、もっともすばらしいゲームを提供できる段階になったばかり――とハウス氏は分析する。「プレイステーション 2は10年間生き残った。プレイステーション 3ではそれを超えるようなライフサイクルに期待したい」(ハウス氏)

 17日に発売を控えたPlayStation Vitaについては、「予約販売も大変好調」と手応えを強調した。現状、海外市場では携帯機よりも据え置き機が主流となっていることについて聞かれると、ブラックフライデーにおける3DSの好調に触れつつ、「まだどんな国でも、ゲーム専用機のライフサイクルはある」と回答。

画像 12月17日に発売されるPlayStation Vita

 加えて海外で据え置き機が好調な背景のひとつに、「ネット対戦が当たり前のものになりつつある」点を挙げ、PS Vitaの強みであるネットワーク機能、ソーシャル機能は、北米やヨーロッパのユーザーにとっても大きな魅力になると考えを述べた。「ここ数年、ゲーム機のネットワーク化が大きく進み、十分なネットワーク機能を持った(モバイル)デバイスが必要になってきている。Vitaはそれに耐えうるものになる」とハウス氏。なお、Vitaの当面の販売目標数についても聞かれたが、こちらは「今の段階で具体的な数字は公表していない」とのこと。

 また質問の中で多かったのは、ソーシャルゲームやスマートフォンといった新興市場との棲み分けについて。現状、日本ではモバゲーやグリー、海外ではFacebookなどが「ハードを持たないプラットフォーム」として大きな勢力を築きつつあり、今までのようにゲーム専用機をプラットフォームとして展開していくモデルは今後厳しくなっていくのではとの声もある。実際、SCEも「PlayStation Suite」という形で「ハードを持たないプラットフォーム」を打ち出しているが、このあたりについてハウス氏はどのように考えているのだろうか。

「PS Suiteのターゲットは、はじめてゲームに触る人たち。PS Suiteの魅力はマルチデバイス、クロスデバイスの部分にあり、開発者にとっては(専用機に比べて)アッという間に幅広いユーザーにアクセスできるというメリットがある。しかしどうしても、より奥深いゲーム体験という部分には限界があり、そこで並行して(PS Vitaのような専用機で)最先端のすばらしいインタフェースや技術を盛り込んだ体験を提供していく。PS Suiteを入り口にして、専用のデバイスでより良いゲーム体験を味わってもらうことで、徐々にその面白さを理解してもらうというのが理想」(ハウス氏)

 ソーシャルゲームや他のスマートフォンとの棲み分けについてはどうか。ソーシャルゲームやスマートフォン市場の隆盛について危機感を抱いているか、との質問に対しては、「危機感というよりは、パッケージ購入やネット配信など、コンテンツによってふさわしいビジネスモデルがある、というのが私の認識です。モバゲーやグリーなどのユーザーについては現状、私たちのプラットフォームがリーチしていないユーザーベースであり、競合性はないものと考えています」と答えた。

 もちろん、「ハードにまったくこだわらないわけではない」とハウス氏は強調する。ゲーム専用機から完全に脱却することは、自社が持っているOSやプラットフォームの魅力を失ってしまう可能性がある。PS Suiteは入り口であり、その入り口を進めば自然にゲーム専用機という道へとつながっていく。PS Suiteに力を入れていくからといって、今後ゲーム専用機から脱却していくということはなく、あくまで「両輪で進めていく」というのが当面の方針のようだ。

 しかし、従来のような「プレイステーション=特定のゲーム機を指す言葉」という考えが、今後ゆるやかに変化していくことは間違いないだろう。「大事なのは(プレイステーションという)ブランド。今までプレイステーションというブランドはハードと結びついていましたが、これからはハードだけでなく体験、遊び方、楽しみ方に結びついたものになっていく。だからこそ社内でももう一度定義しなおす必要がある」というハウス氏の発言からは、少なからず、ゲーム専用機へのこだわりから離れつつあるニュアンスが感じられた。

画像 1990年ソニー入社。SCE本社にてマーケティング担当として活躍したのち、ソニーCMO、SCEEの社長兼CEO兼Co-COOなどを経て、2011年9月1日をもってSCE代表取締役兼グループCEOに就任した

 最後に、今後どのようにSCEを変えていきたいか、と問われると、ハウス氏は「大きく2点あります」と答えた。1つは、これまで(SCEAやSCEEといった)各地域に任せていた、マーケティングやゲーム会社とのコミュニケーションを、SCE本社がより密接にグローバルに管理していくこと。そしてもう1つ、自身がマーケティング部門出身であることを踏まえ、「今一度プレイステーションというブランドがどんなものなのか再確認し、定義しなおしていきたい」とハウス氏。またハウス氏と言えば、2005年にはソニーのCMO(Chief Marketing Officer)にも就任しており、ソニーグループのブランド展開を一手に引き受けてきた実績も持つ。その実績も活かし、今後は親会社であるソニーとの連携を、SCE側からより積極的に提案していきたいとも語った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/16/news007.jpg まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  2. /nl/articles/2411/16/news013.jpg 自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
  3. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/17/news066.jpg 「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
  5. /nl/articles/2411/16/news014.jpg 330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
  6. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  7. /nl/articles/2411/11/news056.jpg 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
  8. /nl/articles/2411/17/news038.jpg 58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
  9. /nl/articles/2411/17/news039.jpg 母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
  10. /nl/articles/2411/17/news004.jpg 「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた