なぜ今“移動映画館”なのか? 東京・中目黒に誕生した「中目黒シネマズ」をのぞいてきた

2013年1月より本格始動予定。「アニー・ホール」を上映したプレイベントは満員御礼という結果に。

» 2012年11月26日 18時52分 公開
[池谷勇人,ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 映画館のない街・中目黒に初の“移動映画館”がオープンする。中目黒の街全体を映画館とし、月に1度、無料で映画を上映するプロジェクト「中目黒シネマズ」のプレイベントが11月24日行われた。

 中目黒シネマズについてはこちらの記事でも書いたが、なんとなく面白そうだったので遊びに行ってみた。上映作品はウディ・アレン監督の代表作「アニー・ホール」。前後には映画文筆家・松崎健夫さんと映画解説者・中井圭さんによるトークショー「初めてでもわかるウディ・アレン論」も開催。そういえば「アニー・ホール」は好きだけど、他のウディ・アレン作品って見たことなかった気がする。

画像 区民ホールの一室にプロジェクターが設置され、即席の映画館に

 会場に使われたのは、目黒区青少年プラザ内のレクリエーションホール。定員65人と聞いていたが、開場15分前くらいに行ってみると、すでに40人くらいが入場列に並んでいた。後で聞いたら、最終的には100人以上が集まり、定員オーバーで入れなかった人もいたとのこと。中はホールというより小さな公民館のようで、正面の壁に大きなスクリーンが据え付けられていた。床にはラグが敷いてあり、観客はイスではなく床にぺたりと座って映画を見る。昔の映画上映会とかもきっとこんな感じだったんだろう。

画像 松崎健夫さん(左)と中井圭(右)さん。中井さんはイベント企画者の1人でもある

 主催者の挨拶に続いて、まずは松崎さん、中井さんによるトークショウがスタート。ご存じのとおり、アニー・ホールは1977年のアカデミー賞作品。「でも、この年はほかにすごい作品があったんです。何だかわかりますか?」と松崎さん。首をひねっていると、後ろの方から「スター・ウォーズ!」という声があがった。ええっ、そうなのか!

「そうなんです。この年は『スター・ウォーズ』があったのに、『アニー・ホール』が作品賞を受賞してるんです」(松崎さん)

 おおお、そう聞くとあらためてすごい作品なんだと思えてくる。その後も松崎さんを中心に、ウディ・アレンのユニークな経歴や、なぜこれほど多くの人に評価され、愛されてきたかを解説。もともとはギャグライター出身で、コメディアンとして活動していた時期もあった、ヒロインを演じるダイアン・キートンはウディ・アレンの元恋人だが、「アニー・ホール」の撮影時点ではもう別れていた――などなど。無料なのにプロの解説まで聞けるなんて、なんともぜいたくなイベントだ。

画像 トークショウでは聞き役に徹していた中井さん。「実生活で別れた2人、という結果を知ってから観るのも面白いですよね」

画像 さまざまな視点からウディ・アレンの魅力を語った松崎さん。「監督・脚本・主演を継続して40年もやり続けている人というのは、世界中でもウディ・アレンだけなんです」

 30分ほどのトークののち、いよいよ「アニー・ホール」上映。作品の内容についてはいまさら説明するまでもないだろう。今回はBlu-ray上映だが画質は十分で、スクリーンが近いので映画館並みの迫力が楽しめた。スクリーン位置の関係上、後ろの方に座った人からは「字幕が見えにくい」という指摘もあったが、このあたりは次回以降の課題となりそうだ。

 とは言え、やっぱり大勢で1カ所に集まって映画を見るという体験は貴重。「アニー・ホール」のような古い作品となればなおさらだ。もともとはトークショウにも参加していた中井さんの発案で、「映画産業全体が右肩下がりにある中、みんなで暗がりでひとつの映画を見る楽しさを、もっと多くの人に知ってほしかった」という。本イベントは中目黒の町おこし企画「中目黒村マルシェ」の一環として行われているが、町おこしだけでなく「映画おこし」の側面もある。「若い人の中には、映画は家で見るものだと思ってる人も多い。でもやっぱり、みんなで映画を見るのって楽しいじゃないですか」(中井さん)

 今後の予定としては、12月下旬に2回目のプレイベントを開催し、2013年1月には本格スタートを目指す。以降は月に1〜2回のペースで、さまざまな名作を無料上映していきたいとのこと。

画像 「中目黒シネマズ」公式サイト

撮影/堀場俊孝

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/01/news016.jpg 消波ブロックの隙間にカニカゴを仕掛けたら…… 「うそでしょ!」“想像を絶する結果”に大興奮「見てて声出た」
  2. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  3. /nl/articles/2502/02/news005.jpg 「正直破格です」 成城石井の元店長が辞めてからも買い続ける“名品”がリピ必至 「ヨダレが出そう」
  4. /nl/articles/2501/31/news013.jpg これは“1秒”で解きたい! 「8×2×0÷4」の答えは? 【算数クイズ】
  5. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  6. /nl/articles/2502/02/news069.jpg 「レベル間違えてる」 イオンの“1944円恵方巻”、衝撃ビジュアルにネット大騒然 「なにこれ」「本気かよ」
  7. /nl/articles/2502/02/news038.jpg 100均ビーズをどんどんテグスに通していくと…… うっとり見入る完成品に世界が注目「これは傑作」「どれも可愛いいい!」
  8. /nl/articles/2502/02/news003.jpg 「こんなお母さんになりたい」 北海道で暮らす67歳女性の“手作り料理”がすてき 「参考にしたい」「ぱぱっと作ってみな美味しそう」
  9. /nl/articles/2502/02/news027.jpg 「この子はきっと豆柴サイズ」と言われた子柴犬、4年後の姿が大きな話題に…… それから約1年たった“現在の様子”を聞いた
  10. /nl/articles/2501/30/news003.jpg 親の反対を押し切り、17歳で同棲を開始→それから13年後…… 若くしてママとなった女性の“現在”が話題
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議